最新版の純EVと、最も売れた純EV
text:Matt Prior(マット・プライヤー)
photoOlgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
新参者が、古株と出会う。少し前まで、電気自動車は孤独な存在だった。だが、いよいよ時代は変わってきた。
2020年に欧州では発売が始まった、フォルクスワーゲンID.3。純EVハッチバックを検討する場合、同等の価格とバッテリー容量を備えた選択肢を何台か並べられるようになっている。今回はそこから、1台を選んでみた。
フォルクスワーゲンはこの新しい電気自動車を、自社にとって3番目の時代の幕開けだと表現している。ビートルとゴルフに次ぐ、主力モデルとして。
フォルクスワーゲン・ゴルフは、フロントに横置きされたガソリンエンジンで、前輪を駆動。フロントがマクファーソンストラット式、リアがトーションビーム式のサスペンションを備えて誕生した。
今となっては、取るに足らない構成だ。だが同じ成り立ちで、シトロエンCXは1975年の欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞している。同じように、ID.3も純EVとして一般的な構成で仕上がっている。成功を掴むのに、必ずしも革新が必要というわけではない。
ID.3がフォルクスワーゲンの歴史を受け継ぎ、代表するモデルといえるかどうかは、今後20年ほどの経過観察が必要だろう。
一方、初代日産リーフが発売されたのは、2010年。英国ではサンダーランド工場で生産されており、現行型は2代目。世界で最も多く売れた純EVへと成長した。革新が、成功を掴むこともある。
スペックで近似する2台のハッチバック
ID.3が主なベンチマークとしたのも、日産リーフだった。今回の比較相手としても妥当だと思う。英国ではe+ 3.ゼロと呼ばれる仕様となる。
2台のスペックを比べてみると、これまでのファミリー・ハッチバックを比較するように、内容が近い。最高出力は200psちょっと。前後にシートがあり、荷室の付いた定員5名のハッチバックで、装備も似ている。
英国での価格は、フォルクスワーゲンID.3が3万5215ポンド(493万円)なのに対し、日産リーフは3万6970ポンド(517万円)。EVという枠を超えて、クルマとして良い比較内容でもある。
少なくとも、ID.3の見た目は新しい。フェルナンド・ポルシェがビートルをデザインし、ジョルジェット・ジウジアーロが初代ゴルフをデザインしたように、クラウス・チツィオラがID.3を描き出した。
目を引くカタチだし、少し見慣れた感じもある。一方で、ゴルフを真似た別のモデルのようにも見える。空力的には、かなり優れているらしい。
ボディの内側には、柔軟性の高いEVプラットフォームが隠れている。こちらも、機能上の理由から見慣れた内容になりつつある。
サイズとしてはゴルフ程度のハッチバックだが、ホイールベースは長め。バッテリーは前後のタイヤの間、フロアの低い位置に搭載されている。
今回試乗したID.3は1stエディションということで、リア側に1基のモーターを搭載し、後輪を駆動。プラットフォームとしては、別にフロントへモーターを積んだり、バッテリーの搭載量を増やすことも可能だ。
実際の航続距離はほぼ同じ
もしリチウムイオン・バッテリーが開発の進むソリッドステート・バッテリーに置き換われば、必要な冷却性能も変わり、搭載位置の自由度も増すかもしれない。しかし当面は、このレイアウトが主流になるはず。
重たいバッテリーセルを、可能な限り低い位置へ配置する。動的性能を高めるうえで、ベストの方法だといえる。
ID.3でもリーフでも、バッテリー容量は複数から選べる。今回のID.3の場合は58kWhで、WLTP値での航続距離は418km。リーフはe+という仕様でバッテリーは62kWhあるが、実際に利用できる容量はID.3とほぼ同じ。航続距離は384kmとなる。
カタログ上はそれなりの違いがあるが、比較試乗では1度の充電でほぼ同じ距離を走れた。天候にも依存するが、今回はどちらも約320kmをこなしている。
純EVは、気温が低くなると航続距離も短くなる。一晩充電させたバッテリーも、寒い早朝より温かい昼間の方が、航続距離は少し伸びる。
2台ともに、充電器はタイプ2と呼ばれるものに対応。ID.3ではさらにCCSと呼ばれる急速充電器にも対応し、最大100kWの容量まで受け入れられる。
日産リーフも、構成としては100kWの容量まで許容できそうだが、チャデモ規格のソケットだから、英国にある共用充電器は50kWがほとんど。仮に100kWの充電器があっても、バッテリーが加熱しすぎない範囲で充電時間は自動的に調整される。
エンジンモデルに近いリーフのシルエット
欧州で普及が進む充電器の規格は、CCSとチャデモとが混在している。かつてのビデオ、ベータとVHSのように。英国ではCCSの方が優勢のようだ。日産も欧州で売るEVには、将来的にCCS規格を採用するらしい。
筆者は純EVが好きではある。だが、エンジンモデルのように800km走れるエネルギーを3分で補給できないのか、という議論は避けられない。しばらく解決はできないと思う。
日産リーフは、まだ純EVが珍しい存在だったときに発売された。2代目のリーフも、アーキテクチャは初代と同じものを利用しているため、シルエットは従来のエンジンモデルに近い。親近感を得てもらうためだろう。
リーフのボンネットを開いても、新しい純EVとは違って収納スペースはない。ID.3も同様だが。バッテリーはフロア下でも、モーターや制御機器はすべてボンネット内に収まっている。キャビンとボンネットのシルエットには、折り目がある。
リーフの充電ソケットは、フロントの中央。DC急速充電器の多くは、クルマの反対側まで伸ばすのに充分なケーブル長がないから、賢明な位置だといえる。一方で路肩に充電器がある場合、クルマの駐車枠をはみ出てしまうこともある。
ID.3の場合は、充電ソケットはボディサイドだが、かなり後ろ寄りに付いている。充電器とは逆の向きでクルマを停めても、充電ケーブルはボディの反対側まで届く。
ちなみにロータス・エヴァイヤは、リアの中央にある。これが正解の位置かもしれない。200万ポンド(2億8000万円)もして、最高出力は2000ps以上あるが。
この続きは後編にて。
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
みんなのコメント
帰宅してプラグにつないでおけば朝には満タン(満充電)で、通勤には支障なく使える。
家内のリーフは2000円で入れ放題が使えるが、元は取れていない。ディーラーを喫茶店代わりにしている程度。
当方のPHEVは通勤60㎞だが、一度満タンにすると、通勤と市中の中距離だけに使っていると、ODメーターは2000㎞を超えたが、まだほぼ満タン。数ヶ月に一回のGS通い。
60㎞以上の出張使用でしかガソリンを使用しない。
GSに立ち寄る時間もバカにならない。3分の補給に10-20分の立ち寄りロスが発生するガソリン車。
それより、V2Hとの相性の方が問題で、自宅は太陽光発電+V2Hを装備してEV PHEVを自家用バッテリーとしても使っている。 VWは残念ながらその意味では車単体としてしか使えない。
自家用バッテリーは高価だから。
本来の目的である排気ガスが出ないのを、記事にしないのは何故? 走行中に、排気ガス出さないので、道路沿いを通学する子供達の口の中に、排気ガスを吸わせない事や、排気ガス出ないから、トンネル内の壁真っ黒に汚れたり(壁汚れると言う事は、税金使って清掃費、必要) 大人達は目先の利便性ばかり考えている。
また、火力発電だけでなく、ソーラーパネルから充電したら、石油に頼らずに走行出来るのも記事にしないのは、何故だろう^_^