グランドツアラーでありスポーツカー
このクルマが持つ意味は大きい。エミーラは、ロータスが生産する最後の内燃エンジン・スポーツカーだ。5年前に中国のコングロマリット、ジーリー・ホールディングス社がブランドを買収して以来、初の新モデルとなる。
【画像】最新ロータス・エミーラ 次期エヴァイヤと廃盤のエヴォーラ 競合スポーツモデルも 全115枚
エミーラの前身に当たるのは、2+2クーペだったエヴォーラ。極上のドライビング体験を与えてくれたグランドツアラーだったが、それ以外のモデルほど、多くの人からは愛されなかった。
だが、2シーター・スポーツのエリーゼとエキシージも、既に生産を終えている。エミーラは、それらを愛した層からも多くの関心を集めているはず。
実際のところ、2シーターのエミーラは当初、ルーフの付いたエリーゼのようなスポーツカーが目指されていたようだ。最終的には、パワフルなV6エンジンを搭載したハイパフォーマンス・モデルへ変わっていった。
グランドツアラーとスポーツカー、両方をカバーするモデルといえる。いい換えるなら、ポルシェ718ケイマンに並ぶクルマが目指されたともいえる。
エミーラが採用したエンジンは、エヴォーラも積んでいたトヨタ由来の3.5L V6ガソリン。ロータスが独自に手を加え、スーパーチャージャーを搭載し、最高出力405ps/6800rpm、最大トルク42.78kg-m/2700rpmを発揮する。
トランスミッションは、6速マニュアルか6速オートマティックが選べる。試乗車は前者だった。
アルミの押出成形材を接着したシャシー
現在注文できるエミーラは、ファーストエディションという初回限定仕様のみ。英国価格は、7万5995ポンド(約1238万円)からとなっている。
内燃エンジンとしては、メルセデスAMGが提供する2.0L 4気筒ターボガソリンも、2022年末から選べるようになる。こちらは最高出力365psを発揮し、8速デュアルクラッチATのみが組み合される。
シャシーは、これまでのロータスにも通じる、押出成形材を接着したアルミニウム製。設計自体は新しく、寸法もこれまでと共通する部分はないという。英国東部、ノリッジに用意された新工場で製造されている。
エヴォーラの場合、ドライビングポジションがややオフセットしていたが、新設計ということで改善されている。エミーラの車内空間は想像以上に広く、サイドシルも低い。乗り降りしやすくなった。
今回ロータスが用意したエミーラは、かなり最終形に近いプロトタイプ。インテリアの品質には目をつぶって欲しいと、担当者に念押しされた。確かに少し波打ったレザーの仕立てや、薄暗いモニターなど、幾つか気になる点が残っていた。
しかし、心配はいらないだろう。たとえ量産前の状態でも、パネル類の組付け品質や各部の仕上げなど、知覚品質は直近の同社の量産モデルより既に優れている。エヴォーラにも施されていれば歓迎されたであろう、豪華さも感じる。
実用性に配慮された上質なインテリア
実用性にも気が配られている。ドアパネルにはクッション材が仕込まれ、ドアポケットも付いている。ダッシュボードには、グローブボックスが設けられた。
エヴォーラより高い位置に据えられたシフトレバーの後方、センターコンソールにはカップホルダーが2つある。助手席の人と奪い合いにならなくて済む。
メーターパネルはモニター式。インフォテインメント・システム用に、スマートフォンとのミラーリング機能に対応したタッチモニターも付く。エアコンの操作系は独立して残され、実際に押せるハードスイッチで扱いやすい。
送風モードを選ぶボタンには、ヘルメットを被った姿のアイコンがあしらってある。可愛いディティールだ。
ドライビングポジションは良好。シートは若干サイドサポートが不足気味に感じたが、同僚はそんなことはないと話していた。ペダルのオフセット量は、エヴォーラよりだいぶ小さい。
ステアリングホイールのリムは上下がフラットで、あまり筆者の好みではないものの、角度の調整域は広い。回している途中で、スポーク部分のスイッチに触れてしまうことがあった。
ステアリングコラムは、ジーリー・ホールディングス傘下のボルボやポールスターと共有する部品のようだ。質感は高いから、残念に思う部分ではない。
この続きは後編にて。
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