SUVブームの波は来ず……不遇の「スカイライン」
text:Kouichi Kobuna(小鮒康一)
editor:Taro Ueno(上野太朗)
クルマには技術の進化とは別に、時代の流れにも左右されやすいものだ。
現在であればあれほど隆盛を誇ったセダンがすっかり不人気のジャンルとなっていることからもお分かりになるだろう。
そこで今回は、クルマとしての完成度は悪くなかったものの、時代を先取りし過ぎて流行に乗ることができなかった不運なモデルをご紹介したい。
まずは、日産スカイライン・クロスオーバー。
日産を代表する車種の1つとして、その名を知らぬ人はいないと言っても過言ではないほどの知名度を持つスカイライン。そんなスカイラインにクロスオーバーモデルが追加されたのは2009年のことだった。
当時の12代目スカイラインと共通のデザインを持っていた同車だが、実はほとんどが専用部品で構成された贅沢なつくりで、クーペ風なスタイリッシュなクロスオーバーSUVに仕上がっていた。
搭載されるエンジンは330psを誇るV6 3.7Lエンジンで、7速ATと組み合わされたパワートレインは、スポーティ。それでいてラグジュアリーな雰囲気で非常に贅沢なモデルとなっている。
元々は日本国外で日産の高級車ブランド「インフィニティ」から「EX」としてリリースされていたモデルであり、当時は日本にもインフィニティ・ブランドを導入予定だったことから日本仕様が作られたが、インフィニティ・ブランドの立ち上げが頓挫したためスカイライン・ブランドで販売されたとも言われる不遇の名車。
せめてもう少し登場が後ろにずれてSUVブームに乗っていれば……と思ってしまう1台である。
セダン主流の中でのピラーレス・ミニバン
続いてご紹介する車種も奇しくも日産が生み出した、プレーリーだ。
1982年に登場したプレーリーは、当時のミドルクラスセダンのスタンザをベースに作られた3列シートを備える多人数モデルだった。
当時はまだミニバンという言葉がなく、カタログなどでは「びっくりBOXY SEDAN」というコピーを使用して、新たなジャンルのセダンであることをアピールしていた。
そんなプレーリーの最大の特徴はBピラーを持たない両側スライドドアである。
現在でも軽自動車のタントやNバン、少し前ではトヨタのアイシスやラウムが採用しており、Bピラーがないことでより乗り降りがしやすく、荷物の載せ下ろしも容易ということをアピールしていた。
しかし、前述したモデルはどれも左側(助手席側)のBピラーのみレスとしていたところ、プレーリーはなんと両側のBピラーをレスとしてしまっていたのである。
当然乗降性は圧倒的に高く、両側ドアを開け放ったときの解放感も段違いであり、レジャーユースなどでは高い評価を集めていた。
ただし、当然ながらその分ボディ剛性は低く、前期型に関してはリアゲートもバンパー下まで一体となって開閉する大開口部を持っていたことで、より剛性が低下していたことで、操縦安定性に難があり、手放しで歓迎されるまでには至らなかったのである。
「SUV風軽自動車」今ではよく見るけど……
ワゴンRで大ヒットを記録したスズキが、更なる新ジャンルの開拓を目指して生み出した、セダンとSUVの中間となるモデルとして1998年にリリースしたのがKeiである。
当時のコンセプトは日常の足としての軽から脱却し、ロングツーリングをもこなすスペシャリティ軽というもので、高めのアイポイントでありながら、立体駐車場にも対応できる全高となっていた。
また、同社のジムニーほどではないものの、ある程度のオフロード走行も許容できる高い最低地上高を備え、当時RAV4やCR-Vが切り開いたライトクロカンというジャンルに属するモデルに仕上がっていたのだ。
デビュー当初はスペシャリティカーらしく3ドアボディのみのラインナップとなっていたが、デビュー翌年には使い勝手に優れた5ドアモデルも追加。結果的にジムニーとキャラクターが被る3ドアモデルは2000年に廃止となり、その後は5ドアボディのみが販売されることとなっている。
今でいうところのクロスオーバーSUV軽であるKeiだったが、2000年にはエアロパーツやローダウンサスペンションを備えた「スポーツ」グレードが追加され、2001年からはワンメイクレースとなる「Keiスポーツカップ」がスタート。
2002年には「Keiワークス」と名前を変え、アルトワークスの後継を担うなど、やや迷走ともいえる変遷をみせていた。
結局1998年から2009年まで販売という長寿モデルになったKeiだったが、ハスラーはタフトが人気を集めているところを見ると、もう少し時代の波に乗れていたらという想いが頭をよぎってしまう。
他が追従せず……スーパーハイト軽
今では街で見ない日はないと言っても過言ではないほど大人気となっているのが、軽のスーパーハイトワゴンと呼ばれるモデル。
ボディサイズが決められている軽自動車はこれ以上ボディサイズを拡大することができないが、縦方向であればまだ伸ばすことができるということで、全高を高めたモデルをそう呼んでいる。
全高を高めることで乗員をアップライトに座らせることができ、見晴らしがよくなるうえに室内スペースを広く採ることができるということで、子育て世代のファミリーを中心に爆発的なヒットとなっているというワケだ。
そんな全高を高めた軽自動車の元祖ともいえるのが、1990年に登場したミニカ・トッポである。
トールワゴンの元祖であるワゴンRよりも先に登場したミニカ・トッポは、一般的な軽セダンであるミニカをベースに圧倒的に背の高いキャビンを組み合わせたもの。
過去にはフルゴネットタイプのアルト・ハッスルやミラ・ウォークスルーバンなども存在していたが、乗用も想定しているという点がミニカ・トッポの違いといえるだろう。
ただ、着座位置などは高められていたものの、頭上スペースを有効活用できていたかというとやや疑問の残る仕上がりだったことが、ヒット車種にならなかった要因だった。
今のように他メーカーも追従していれば、切磋琢磨されて完成度が上がっていたかもしれないと思うと残念である。
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みんなのコメント
その時代に3700ccの大排気量で10.5モードで10km/Lを大きく下回る燃費だったことはかなりのマイナスポイントだったように思う。更に価格も500万オーバーで庶民がおいそれと買える価格でもなし。
翌年発売されたジュークはコンパクトSUVのパイオニアとして売れたわけだし、出るのが早すぎたというよりはスペックが前代的だったのがスカイラインクロスオーバーだと思う。
で、それに追従してきたのがアルト・ハッスルやと思ってのは間違いだったのか??
まぁ〜専用ボディのワゴンRには歯が立たなかったけど…。