もくじ
ー 「ジャガー精神」たしかめる道で
ー E-PACEとイヴォークたちの共通点
ー 試作車とは思えないクオリティ
ー E-PACEは「スポーツカー」か
ー どこで作られても「正真正銘」
ー (番外編)できること、に挑む
ジャガー 2020年めど 全車種にEV/PHEV/MHEV取り揃え
「ジャガー精神」たしかめる道で
少し走っただけでこのジャガーの新しい小型SUVがいかにコンパクトでスピード感があるかがわかる。
これまでコンパクトさとは縁遠かったジャガーだが、ウェールズ地方のウェルシュプールからベラまで、約1時間の曲がりくねった細道では同社が得意とする俊敏さが際立った。
その道はほとんどずっと両側が木で覆われ、急勾配や岩っぽいバンク、かつてモーリス・マイナーが走っていた頃から使われているボロい柵がある。でもだからこそ、英国でも随一の、走る楽しみを味わえる道なのだ。
実はここは「ジャガー精神」を預かるベテランエンジニアのマイク・クロスが好む道である。彼はあらゆる新モデルの運転特性、乗り心地、視認性、制御効率を磨いて、ブランドにふさわしいクルマに仕上げている。
クロスのチームは、ここで数多くの新しいモデルの最終調整を行ってきた。彼らはサスペンションとコーナリング性能を確かめるため、長年この起伏に富んだ峠道でクルマを限界まで走らせてきたのだ。
ステアリングは迅速かつ正確な方向転換ができるか、極端なサスペンションの動きに影響されないか、をチェックすることでクルマの安定性を確認してきた。
小型SUVの世界でも運転要因の競争が激化しているが、70年以上の卓越した実績を自負するジャガーはその名に恥じないポジションに食い込まねばなるまい。
同じSUVクラスにはBMW X1や、アウディQ3、メルセデス・ベンツGLA、さらに大きなサイズのモデルもあるが、E-PACEが売れればジャガーのSUV市場への侵略が成功する。
英国内における同社のSUV販売台数は2012年以降倍増し続け、その数は今や440000台だ。この数ヶ月で勢いが少し落ち着いてきてはいるが、英国で販売された新車のうち5台に1台がジャガーのSUVという記録的な成長を続けている。
新しいE-PACEは、イヴォークやディスカバリー・スポーツと深い関連がある。
E-PACEとイヴォークたちの共通点
E-PACEとイヴォーク、ディスカバリー・スポーツの共通点は、モノコック構造で、新開発のインジニウム横置き4気筒ガソリンエンジンを搭載し、2輪駆動と4輪駆動のラインナップがあり、インディペンデント・サスペンションを採用している点だ。
とは言え、クロスとE-PACEのチーフエンジニアであるグラハム・ウィルキンスは、このクルマの部品を「ジャガー仕様」に組み立て、チューニングしたと言う。E-PACEのサイズがそれを裏付ける。
同じサイズ感を持つランドローバーのイヴォークよりも全長が25mm長く、ホイールベースはイヴォークの2660mmに対して2681mmだ。
これは、フロント・サブフレームのマウント形式を改良し、リアを固定しているためだが、そのおかげでより強固なステアリング・フィールを実現できた。
さらに、スポーツ性を強調するためにストラット式フロントサスペンションは中空アルミ製の直立設計とし、より硬いフロントとリアのサスペンションブッシュが採用され、スプリングとダンパーのセッティングが調整された。
E-PACEは、これまで愛されてきたジャガーの特徴を備えているが、ジャガー・ランドローバーのエンジニア達はよりジャガーらしさを求めて変更を加えることを厭わなかったようだ。そして、彼らが軽量化と格闘したことは明白だ。
後部ドア、ボンネット、ルーフとフロントフェンダーはアルミ製にすることでスチール製よりも37kg軽くできた。だが、最軽量のE-PACEでさえ、ほとんどスチールを使わず、ほぼアルミモノコックで全長が約34cm長いF-PACEより85kgも重い。
試作車とは思えないクオリティ
「このE-PACE試作車は、いわばハーフのようなもんなんです」とクロスは楽しげに言う。
シリーズでもっともパワフルな300psのインジニウム2.0ℓガソリンターボを搭載し、タイヤは245/45 R20を履かせてスポーティさが出るようにした。購入時はでR21にインチアップすることもできる。
ただ、販売時にオプションで用意されるサスペンションのアダプティブ・ダンピングシステムは無く、スポーティモデルの「R-DYNAMIC」に付いているパドルシフトも無い。
実際に乗り込んでみると、試作車にしては驚くほどデザインが簡潔で製造クオリティが高いことに気付く。
実は、F-PACEの電子装置、12.3インチのディスプレイ、Wi-Fiホットスポット、InControlアプリといった素晴らしい装備が、スターティング・プライス451万円からのこの小型SUVに受け継がれているのだ。
マニュアルギアボックスを備えた低排出量の2WDモデルを好む客を獲得するのが狙いではない。672万円あたりのモデルに1番売れて欲しいというのが同社の本音だろう。
カタログ上の話はさておき、われわれはウェルシュプールの美しい山道を滑らかに走りながら、ベラを目指す賭けの途中だ。
走行中に助手席に座っているとあれこれじっくり評価することができるが、まずは、俊敏さだ。
F-PACEより全長が短くなり、幅も狭まったこのクルマは、人混みの中をラクラク走り抜けることができる。20cm幅広な兄貴分ではこうはいかない。
次に、低速域の性能が改良されたことに気付く。
E-PACEは「スポーツカー」か
こういうクルマの高速域性能は、郊外の岩盤を走った時でも問題ないレベルであるべきだと思うが、E-PACEにはそれが備わっている。
独立式サスペンションと20インチホイールのおかげで、試作車はフラットで快適な乗り心地ながら、マンホールの蓋やら郊外の轍やらを感じ取ることができる。ここまでは良い感じだ。
だが、ジャガーが高らかに宣伝する通り、シリーズで最も高い出力を誇るこのタイプは0-100km/h加速がたったの5.9秒で、クラストップに近いポジションをマークする。
チーフデザイナーのイアン・カラムがE-PACEのことを「普段使いにデザインされたジャガーのスポーツカー」と表現するのも納得だ。注意して走ってみるとよくわかるが、低速走行時には圧倒的な牽引力が発揮されるのだ。
E-PACEには、ツインカップリングを搭載する4WDアクティブ・ドライブラインというテクノロジーが採用されている。標準のシステムだと前輪がスリップし始めるまでは横置きエンジン前輪駆動車のような機能をするが、このアクティブ・システムは最大100%の駆動トルクを後輪に配分し、リアディファレンシャルの両サイドに配置されたふたつのクラッチによって後輪のトルク・ベクタリングが作動する。このシステムによって後輪駆動をドライブする興奮が増すし、ジャガーのダイナミックな後輪駆動フィールが広く認知されるだろう。
他のジャガーモデル同様、ZF社製のふたつのドグクラッチを使った9速ATを搭載しているので、シフトレバーを「Sモード」に入れっぱなしにしてスポーティな走りを楽しむことができる。
もちろんドライバーがギアチェンジすることもできるし、われわれも何度も試したが、最大回転数の6500rpmに達するとアイドルギアが維持され、エンジン音は多少抑制されるものの、4気筒エンジン搭載車のようなパワフルな音を奏でる。
インジニウム・エンジンの最近のテストでは、うるさいと感じたり、大衆向けだと感じる声が上がったが、ジャガーはその性能を買っているようだ。つまり、力強い推進力、ギリギリまでの回転上昇、自動シフトモードで5000rpmの9速に入れるとミサイルのような高速を出せるというのが強みだ。
われわれが1.5時間ドライブした道はその状態、幅、勾配が変化に富んだため、乗り心地の良し悪しがよくわかった。E-PACEはホイールが大きい割に路面騒音の影響を受けにくいのが最大の長所だ。中速での安定性とグリップ性については、極端な傾斜でない限りは車体を素晴らしくコントロールできてロールが抑えられ、柔軟にコブを乗り越えることができた。
ただ、高速で凸凹道を走るとガタガタと振動が伝わってきて少しタイヤ音が響いた。完璧主義者であれば、より高い車体の安定性を求めるだろう。
クロスは「だからこそアダプティブ・ダンピングシステムがオプションで用意されているのです」と説明する。「今付いているノーマルなサスペンションもいいけれど、アダプティブの方がさらに性能が高まります」ということだ。
もしも自分がE-PACEのトップモデルを設計するとしたら、そのパワーを最大限に活かすためにアダプティブ・ダンパーとアクティブ・ドライブラインが欠かせないし、パドルシフトも付けるだろう。
どこで作られても「正真正銘」
ステアリングは操安性能というより乗り心地性能だという難題にも関わらず、このクルマのハンドリングの正確さには驚かされる。
タイトで難しいコーナーでも修正が少なくて済む。クロスのチームは、クルマのスタイルに沿うよう軽めの操作性とし、一部のドライバーに好かれるスポーティ仕様は重めの操作性とした。
「情報伝達に優れ、正確であれば軽い操作性でも悪くはない」とクロスは言う。
E-PACEのコンパクトさ、ショート・オーバーハング、シートのサイド・サポート、ダンピングの良いサスペンション、全輪駆動のグリップとトラクション、そしてトルク・ベクタリングで限界まで引き出される後輪のグリップは、難しいコーナーが続くときに一体となって良さが発揮される。きちんとしている、速い、安全、頼もしい、という印象を受けるクルマだ。
どんなコンディションでも高性能を発揮できる「完璧な」モダンカーのひとつだ。これは、何かと忙しい現代人が日常的に使えるスポーツカーを、というカラムの考えに端を発する。
販売間近のE-PACEだが、イヴォークとディスカバリー・スポーツの製造でいっぱいいっぱいのヘイルウッド工場では生産することができない。
よって、メルセデス・ベンツ、ミニ、アストン マーティンの製造を引き受けてきたマグナ・シュタイヤーのグラーツ工場、および中国で生産されることになる。
クルマのエンブレムは国章のようなものだと見なされていた時代であれば、他国で生産するなんてことは問題だっただろう。だがそれは違う。どこで作られようとも、英国のクルマであり、正真正銘ジャガーなのだ。実際に試乗したわれわれが保証する。
(番外編)できること、に挑む
セダンよりSUVの方が売れるようになるとかつて考えていたかと問われ、「いいや」と答えるのはデザイン・ディレクターのイアン・カラムだ。
先に発売されたF-PACE同様、E-PACEはジャガーができることの限界に挑んでいるし、近々登場する電気自動車のI-PACEについて言えばなお一層だ。
それでもどのクルマもしっくりくるのは、「スポーツカーの特徴を取り入れたSUVへとシフトしているから」だとカラムは言う。
ジャガーはまずF-タイプのコンセプトを受け継いだSUVを投入することになる。ラインナップにスポーツカーが並んでさえいれば、どれだけSUVを増やそうともスポーツカーメーカーだと胸を張ることができる。カイエンやマカンを売り出すポルシェを代表する911という名車が、ポルシェをれっきとしたスポーツカーメーカーたらしめているのと同じだ。
カラムは、「わたしがジャガーに入ったときはポルシェの初代カイエンが出る前でしたが、SUVを作る予定があるかと聞かれたことがあります。その時はスポーツカーメーカーとして、われわれのDNAにはないからノー答えたんです」と教えてくれた。
さらに、「まずはその基盤を整備しなくちゃいけない」と言ったそうだ。つまり、SUVの前に、スポーツセダンとスポーツカーを世に送り出すべきだと考えていたのだ。
XE、XF、XJといったグレードのモデルに次いでF-タイプが登場し、「その次に着手するのが自然だと感じました」とのこと。
「誰かに説得されたわけではなく、ひとびとが何を欲しているかに耳を傾けるようになりました。例えばクリニックのひとびとはSUVを買いたいと言っていたんです。いまやF-PACEはジャガーでもっとも成功したクルマですね」と彼は続ける。
ならば、創業者のウィリアム・ライオンズ氏はE-PACEをどう評価するだろうか?
カラムは、「ウィリアム・ライオンズだったら間違いなく気に入るはずです。彼はクルマとトラックは命あるモノを作り出すのと同じことだと言っていたぐらいなんですから。われわれよりだいぶ前から、クルマは時代の流れに沿うべきだとわかっていたんです。それを理解しているひとはそう多くはないですよ」とカラムは締めくくる。
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