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ウッドボディ+ハードトップ クライスラー・タウン&カントリー 当時はクラス最長で最高額 前編

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ウッドボディ+ハードトップ クライスラー・タウン&カントリー 当時はクラス最長で最高額 前編

キャデラックとリンカーンに対峙

1940年、クライスラーはウッディと呼ばれる木製ボディのステーションワゴン市場へ参入した。タウン&カントリーで。近年は、SUVと乗用車を融合させたクロスオーバーが流行しているが、その先駆けといえるだろう。

【画像】2ドア・ハードトップのクライスラー・T&C 米英のウッディ 1960年代のフルサイズも 全129枚

高級車と実用車が融合したオシャレなウッディワゴンは、開拓地に伸びる鉄道駅での送迎や、富裕層が趣味で楽しむ狩猟の移動手段として人気を博した。特に、不動産の販売店や牧場のオーナーに好まれたようだ。

オフロードが得意というわけではなかったが、アメリカの大自然を雄大に走る、牧歌的なイメージを想起させた。仕留めたヘラジカをルーフに載せずとも、チェック柄のネルシャツにカウボーイ・ハットが良く似合った。

クライスラーは、本腰を入れてウッドボディの生産に取り組んだ。高い価格設定にも関わらず、ウッディワゴンのタウン&カントリーは、2000台ほどが生産されている。太平洋戦争が始まる直前まで。

終戦を迎えた1946年、「ロング、ロー、ラブリー」というキャッチコピーでタウン&カントリーが復活。ところが、富裕層のレジャー用が想定されたものの、ステーションワゴンは作られなかった。

エンジンは大排気量の直列6気筒と8気筒。ウッドボディを一部に用いた2ドアのコンバーチブルと、4ドアのサルーンが、少量生産されるに留まっている。

フラッグシップ・モデルに据えられ、ゼネラルモーターズのキャデラックと、フォードのリンカーンという、上級ブランドの競合モデルに対峙した。

戦前の雰囲気を漂わせるスタイリング

ウッドボディというアイデアは、既存モデルに新鮮味を与える手法として適していた。タウン&カントリーのずんぐりとしたスタイリングを、魅力的に感じさせた。

フロントグリルは格子状で横に長く、ハーモニカのようにも見える。最上級のクライスラー・インペリアル・ニューヨーカーにも似ていた。ふくよかなボンネットやフェンダーのラインは、戦前の雰囲気を漂わせた。

当時のクライスラーのルーフラインは、こんもりと高い。それは乗員がハットをかぶれる必要があると、社長のKT.ケラー氏が指示したためだった。

ゼネラルモーターズは、毎年のようにスタイリングをリフレッシュしており、クライスラーも応戦する必要があった。しかし有能なスタイリング部門は、カーデザイナーのヴァージル・エクスナー氏が加わるまで存在しなかった。

1930年代半ばに投入した流線型のサルーン、エアフローのスタイリングが急進的すぎ、経営を圧迫したことも慎重な姿勢を生む理由になっていた。クライスラーと、傘下のダッジ、プリマス、デソトは、退屈なデザインから脱却できずにいた。

戦後にタウン&カントリーが復活する時、ハードトップとロードスター、ブロアムという複数の展開が検討された。ハードトップは、試作車が7台生産されている。

それでも、実際にショールームへ並んだのは、4ドアのサルーンと2ドアのコンバーチブルのみ。ウッドボディが選ばれたことも含めて、生産能力の不足が理由だろう。

基本設計が1920年代の直列エンジン

当時、木材は鋼材より安価で入手しやすかった。加工には、開発費の嵩むプレス機が不要でもあった。職人が手作業で組み上げるため、工数は必要としたが。

ウッドボディを生産したのは、戦前と同様にアメリカ・アーカンソー州のパーキンズ・ウッド・プロダクツ社。デトロイトのクライスラー本社工場へ運ばれ、ラダーシャシーの上に搭載された。

オーバーヘッドバルブを採用したV8エンジンと、オートマティックは、まだ現実的な選択肢ではなかった。1946年から1948年までのタウン&カントリーには、スピットファイアの愛称がついた、4.0L直列6気筒と5.3 L直列8気筒エンジンが載った。

基本設計は1920年代と古かったものの、高圧縮比化され、点火系や潤滑系も改良。エンジンマウントなども一新され、滑らかに回転した。

トランスミッションは、変速時にギアの回転数を調整するシンクロメッシュ付きの3速マニュアルか、初期のトルクコンバーターといえるフルードドライブを採用した、2速か3速のセミ・オートマティックが選べた。どちらもオーバードライブが備わった。

1950年代、クライスラーはトーションバー式サスペンションを広く採用し始めるが、タウン&カントリーではフロントがコイルスプリング、リアがリーフスプリングという組み合わせ。戦前モデルからの継投だった。

15秒で開閉できるパワー・ソフトトップを備えたコンバーチブルは、1948年までに8000台以上が売れた。俳優のボブ・ホープ氏やウィリアム・ボイド氏がオーナーに名を連ね、高級車としてのイメージを牽引した。

最も高価なクローズド・ボディの量産モデル

1949年から1950年のモデルでは、クライスラー創立25周年を記念し、131.5インチ(約3340mm)のホイールベースを持つロングシャシーへ変更。エンジンは5.3L直列8気筒だけになり、ボディはピラーレスの2ドア・ハードトップのみが提供されている。

ウッドボディのフレームはホワイトアッシュ材で、1948年までは、サイドパネルにもホンジュラスマホガニー材が用いられていた。だが、1949年以降はボディカラーと同じスチールパネルがはめられている。

フロントガラスは、中央で別れた分割式。曲面ガラスの成形技術が追いついていなかった。リアガラスも3分割だが、タウン&カントリーらしい見た目を生んでいた。

派手なフロントグリルは、キャデラックを意識したもの。最終年となる1950年式タウン&カントリーの北米価格は4003ドルで、キャデラック・クーペ・ドゥビルより約500ドルも高かった。当時、アメリカでは最も高価なクローズド・ボディの量産車だった。

全長は5613mm。同じく、最長の量産2ドア・モデルでもあった。また1950年式では、フロントガラスのウオッシャーと、キーを回してのエンジン始動方法、パワーウインドウが初めて設定されている。

1951年、スチールボディのステーションワゴンへモデルチェンジ。クライスラーのウッドボディは最後を迎えた。

この続きは後編にて。

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