「2035年までに、新車販売で電動車100%を実現」を目指すとしている日本。電動車には、バッテリーEVや燃料電池車のほか、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車も含まれているが、従来の純ガソリン車は、実質的には販売が禁止されるとみられている。
2035年まで、残りあと12年。クルマのライフサイクルを考えると、純ガソリン車は次第に姿を消していくはずで、いまが純ガソリン車を買う最後のチャンスになるかもしれない。200万円台で買えるお薦めの純ガソリン車を4つピックアップし、読者諸氏に「締めのクルマ」として、ご提案したい(文中の価格はすべて、2022年12月初旬現在の価格)。
最後の純ガソリン車、決めた? 200万円台で買えるお薦め「締めのクルマ」4選
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:SUZUKI、MAZDA、TOYOTA、ベストカー編集部
この価格でこの走り!! スズキ「スイフトスポーツ」(188万円~)
軽量コンパクトなボディにパンチの効いたエンジンが特徴のスズキ「スイフトスポーツ」、通称「スイスポ」。初代は2003年に発売され、現行型は2017年に登場した4代目だ。
スイスポのウリは、何といっても軽量ボディによって実現する軽快な走りだろう。現行型の車両重量は970kg(6速MT)。空力特性を追求したフォルムと、低回転から高いトルクを発生させる1.4L直噴ガソリンターボエンジンによる走りは、過剰な演出もなく、「軽いって楽しい!」と素直に感じさせてくれる面白さだ。これが200万円程度の価格で手に入るのだからコスパは非常に高い。
5年選手となるスイスポには、次期型の噂が多く飛び交っているが、次は1.4Lエンジンに48Vのマイルドハイブリッドを組み合わせたパワートレインとなることが予想されている。もちろんスイスポの軽快感を損なわない正常進化で登場することとは思うが、現行型が「純ガソリン車」最後のスイスポになる可能性は高い。スイスポをガソリン車で楽しむなら、今しかない。
2017年登場の現行型スイフトスポーツ。軽量ボディによる軽快な走りとコストパフォーマンスの高さが魅力
2人乗りFRスポーツカーを純ガソリン車で楽しむ贅沢 マツダ「ロードスター」(268万円~)
世界のあらゆる自動車メーカーに多大な影響を与えた伝説の名車、マツダ「ロードスター」。1989年のデビュー以来、現行型の4代目(ND)ロードスターに至るまで純ガソリン車だ。
現行型は2015年に発売開始。安全基準や環境性能の厳格化により、重量増が避けられないこの時代に、初代NA型より40mm短い全長のコンパクトボディで設計し、小排気量化された新開発の1.5Lエンジン、強度は落とさずに軽量化されたシャシーなど、細部に至るまで徹底的に軽量化を追求したことで、車重は1010kg(6速MT、6ATは1050kg)に収まった。
また、2022年1月に追加となった特別仕様「S990」では、文字通り、990kgという軽量化を達成している。マツダの技術者たちが徹底的にこだわったモデルが、200万円台で買えるのは、クルマ好きにとって幸せなことだ。
次期型ロードスターの噂も出てきているが、やはりハイブリッド化は避けられないとの見方が強い。ロードスターのコンセプトを考えるとマイルドハイブリッドとなるのが自然だろうが、純ガソリン車としては現行型が最後になるのは間違いないだろう。
特別仕様車の「ロードスター 990S」。最軽量の「S」グレードをベースにバネ下重量の低減と、シャシーとエンジンの専用セッティングを施している。価格はギリギリ200万円台となる、295万9000円
コンパクト本格クロスカントリーはやはりガソリン車で楽しみたい スズキ「ジムニー」(155万円~)
数ある日本の軽自動車のなかでも、唯一、クロスカントリー性能を追求したモデルである、スズキ「ジムニー」。ボディのコンパクトさに加えて、シンプルなメカニズムと低価格という唯一無二の個性が光る、世界中にファンがいるモデルだ。
ジムニーは、高剛性のラダーフレームに副変速機付きのパートタイム式4WDと、リジッドアクスル式サスペンションを伝統的に採用している。現行型は2018年、20年ぶりのフルモデルチェンジで登場したが、現代的なアップデートはされているものの基本的なドライブトレーンに変更はない。
グローバルでは、特に欧州で人気の高いジムニーだが、ご存じのとおり、欧州でも2035年にガソリン車の販売が禁止となることが決まっている。日本と違い、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車なども禁止であるため、ジムニーを欧州で売るには、バッテリーEVとなる必要がある。もちろんバッテリーEVとなっても、ジムニーはジムニーだが、燃料さえあればどこまでも走れるガソリン車であることは、この手のクルマにとって魅力的。やはりジムニーはガソリン車で乗りたい。
2018年発売の現行型ジムニー。発売されるやいなや月販目標台数を超える受注を抱えた
クルマを走らせる楽しさを純粋に味わえる トヨタ「GR86」(279万円~)
トヨタとスバルの共同開発により、2012年に登場した、コンパクトなFRスポーツカー「86」(スバル版は「BRZ」)。ドライバーの感覚ひとつでいかようにも取り回せる「手の内感」や操る楽しさを体感できる、「直感ハンドリングFR」がコンセプトであり、これを実現するため、スバルの持つ水平対向エンジンを軸とした技術が活用されているのが特徴。ラリーやワンメイクレース、ジムカーナ、ダートトライアルなどの様々な参加型モータースポーツのベース車両として活躍し、スポーツ走行の楽しさを知るきっかけを多くの人に提供してきたモデルでもある。
現行型の「GR86」は2021年4月に登場。「軽量コンパクトかつ低重心なエンジン」という特長をそのままに、2.0Lから2.4Lに排気量をアップ。0-100km/h加速は7.4秒から6.3秒に。モータースポーツからのフィードバックを生かした空力アイテムや、軽量・高剛性ボディにより、走りの質も向上させている。
ミドルグレードだと300万円を超えてしまうが、エントリーグレードの「RC」であれば、279万9000円で手に入る。これをベースにいろいろと手を加えながら、純ガソリンモデルのピュアな走りを味わう、といった遊び方もよいのではないだろうか。できれば若い世代に、この純ガソリンモデルで味わっていただき、クルマを走らせる楽しさを知ってほしい。
GR86。今では数少ないFRの純ガソリンピュアスポーツカーモデルだ
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もちろん、電動化が進んでも走りの楽しさが損なわれないクルマは登場することだろう。とはいえ、純ガソリン車の加速感やダイレクト感、シンプルさというのはこの先味わうことのできない、もしくは貴重な体験になることは免れなくなると思われる。時代を先取りして、ハイブリッド車やバッテリーEVへと移行していくのももちろんいいと思うが、過ぎ去ろうとしている時代を名残惜しむように楽しむのも、大人のクルマの楽しみ方としてアリだと思う。「締めの一台」、あなたはどのモデルを選ぶ??
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