遂にスタートした24時間レース
皆さんこんにちは!レーシングライダーの石塚健です。
2024年9月10日から9月15日にフランスにある、ポール・リカールサーキットで開催された、2024 FIM 世界耐久選手権 最終戦、ボルドール24時間耐久レース。
今回はその参戦レポートの後編!決勝レースの模様をお伝えしていきます。
迎えた決勝日、土曜日の15時に24時間レースがスタートしました。スタートライダーはクリストファー選手。1人25から27ラップずつ走行し、ピット作業、ライダー交代を繰り返します。
自分の出走順は2番目。とにかく転倒や大きなトラブルを発生させることなく、できるだけ速く、淡々とアベレージを刻むことに集中して走行をおこないました。
スタートは順調、レース中はライト周りに少々トラブルが発生し数分ピットで修復作業をしたり、メカニックによるピット作業手順違反でストップアンドゴーペナルティーを受けたり等、小さなアクシデントはありましたが、至って大きな問題は発生せず、順調に周回を重ねる事ができました。
そうしているうちに、辺りはすっかり日も落ちてナイト走行に突入。鬼門の夜を越え、ようやく朝日が昇り一安心と言ったところ。
朝8時、レースの3分の2を消化したところで、ここまでバイクをいたわりエンジンのパワーを絞って走行してきましたが、ここからは全開走行となります。
他のほとんどのチームがトップスピードで320km/hから350km/hで走行する中、自分達のチームは300km/h前後の速度での走行を続けてきたリミッターを解除。
かなり長いロングストレートが存在するポール・リカールサーキットでラップタイムを稼ぐには、バイクのパワーとトップスピードが非常に重要となりますが、長丁場の耐久レースに至っては例外で、そのトップスピードを稼ぐためのエンジンパワーを全開にする事は、エンジンブローのリスクを伴うのです。
エンジンパワーを全開にした段階で、残り時間は8時間ほど。ここでチームベストを更新する1分56秒2をマークできました。そして、案の定エンジントラブルでのリタイアが相次ぐ中、安定した走りで順位を上げていきます。
24時間レースの戦い方はそれぞれ
そしていよいよ自分のラストスティントへ。自分の役目を終えて、やっとの思いでピットに戻ると、チームからまさかの質問が。「チェッカーを受けたいか?」
一瞬、何を言っているのか理解ができず、「えっ?ノーノー!」と回答しましたが、チームのオーダーは、このままダブルスティントで、チェッカーを受けて来いというもの。
もちろんチェッカーを受けたい気持ちはありましたが、この時点で23時間が経過しており、自身としては9スティントを走り終えた所。既に満身創痍で、物理的に無理という感じでした。
しかしチームは「GoGo!!」と送り出す雰囲気。とりあえず「残り何分?」と聞くと、「フォーティーンミニッツ!」との回答。
後14分か。それなら6周か7周だから、気合で乗り切ろう!と心に決め、ピット作業を終えるとそのままコースイン。
ホームストレート上のブリッジ下に残り時間が表示されているのですが、1周走って時間を見ると、まさかの40分との表示で、フォーティーン(14)じゃなくてフォーティ(40)か!!と、正直絶望でした(笑)
そんな中、ペースを落として何とか最後まで走りきり、自分達の戦い方を貫いてチェッカー! 最終的に18チームがリタイアする中、耐久レースらしいレース運びで、シーズンベストとなるクラス5位でチェッカーを受ける事ができました。
最終のダブルスティントを含む10スティントはとても長く、精神的にも肉体的にもかなりハードなレースでしたが、ミスすることなく、予定していた通りにレース進められたことで、上手く結果に繋げる事ができました。
序盤からエンジンを温存することなく走り、更に上位を狙うという戦い方もできますが、そこには大きなリスクを伴うことになるので、チームは温存する戦い方を選択。
ラップタイムだけを見ていたら決して速くはありませんが、パワーを絞らなければもっと速く走ることは可能で、そっちの可能性に賭けたレースがしたいと思ってしまう事も、僕自身もちろんあります。
ストレートでライバルたちに抜かされて、コーナーで追い付いて抜くタイミングを見計らうというレースは、フィジカル的にもハードです。
ですが、そこには大きなリスクがあるという事は、エンジンブローによるリタイアの多さが物語っていると思います。そのため、まずはミスなくできる限りの力を振り絞り走り切る。そして結果を待つ。それが今回のボルドールでの、僕達チームの戦い方でした。
総合順位を考えたら、当然ストックチームにも強豪チームは多く、この戦い方では上位を目指すのは容易ではありません。自分達よりも速く走れ、トラブルなども起きなければ当然負けてしまいます。
しかし僕らはEWCチーム。混走でのレースにはなりますが、当然チャンピオンシップは別なので、クラスでのリザルトにフルフォーカスして戦いました。
メーカー系チームが多数存在するEWCクラスでは、いわゆるトップチームと真っ向に戦うとなると、現状の体制では正直太刀打ちができません。ならば戦い方を変えるしかないという事なんです。
耐久レースでのアベレージタイムは、チーム内でのライダーの力量によって差は産まれるものの、それぞれのチームに戦い方があるので、速いライダーが常に速いかと言われればそうとは限らないし、強いチームが常に速いかといえばそうでもありません。
あくまで結果がリザルトとして残るかどうか。それが耐久レースの戦い方。
リザルトやタイミングモニターからの情報だけでは分からない部分や、チーム戦略などもあるので、色々な想像をしながら観戦するのも楽しいのではないかと思います。
まだまだ良くしていけると思う部分は多々あるので、そこは来年に向けての課題。
最終戦を終え、チャンピオンシップは8位を獲得。開幕戦のリタイアが響いてしまい残念ですが、最終戦で良いレースをし、シーズンベストを更新できた点は良かったです。
今シーズンはこれにて終了となりますが、来シーズンも今年以上のパフォーマンスを発揮して、更に目標に近付けるよう全力で走り続けますので、引き続き応援よろしくお願いします。
皆さん、本当にありがとうございました!それではまた!
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