昭和は遠くなりにけり…だが、昭和生まれの国産スポーティカーは、日本だけでなく世界的にもブームとなっている。そんな昭和の名車たちを時系列で紹介していこう。
市販期間わずか1年2ヵ月。キラリと光る名車だった
トヨタ1600GT:昭和42年(1967年)8月発売
市販期間はわずか1年2カ月という短命モデルで、累計生産台数も2222台にとどまったが、国産スポーツモデルの歴史の中でキラリと光る足跡を残したのが、このトヨタ1600GTだ。
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1962年(昭和37年)9月に日本最初の国際公認レーシングトラック、鈴鹿サーキットがオープン。その翌年の1963年5月にはこの鈴鹿サーキットで第1回日本グランプリ・レースが開催されて、日本のモータースポーツは本格的な幕開けを迎えていた。当然のことながらメーカー各社もレースでの勝利を目指して、しのぎをけずっている。
1966年1月、鈴鹿に続く国際公認トラックの富士スピードウェイがオープン。3月にはこの完成を記念した第4回クラブマン・レース富士大会が開かれた。
そしてそのツーリングカー部門で総合1位、2位をさらったのが、コロナXプロトタイプ「RTX」であった。RTXの名はファンにとっても耳新しいものだったが、ボディスタイルはアローラインのコロナ ハードトップ(以下、HT)そのものであったから、レース用にチューンアップされたレーシング・コロナであることは容易に想像できた。
事実、RTXはSUツインキャブで90psの4R型エンジンを搭載したコロナHT1600Sをベースにした高性能プロトタイプであった。
ただし、エンジンは1600Sの4R型をヤマハ発動機がチューニングし、DOHC化した9R型が搭載されていた。4気筒、DOHC、1587ccで、最高出力は110ps/6200rpm、最大トルクは14.0kgm/5000rpm。最高速175km/h、ゼロヨン加速17.3秒のハイスペックを誇った。
アローラインの3代目コロナの車両型式はRT40、追加設定されたコロナHTはRT50であったから、RTコロナのプロトタイプXで「RTX」。これがネーミングの由来であった。
このRTXは翌67年7月の鈴鹿12時間耐久レースにも2台が出場し、またも1位、2位を独占した。その翌月の67年8月、RTXはトヨタ1600GTの名で市販を開始する。車両型式名RT55。
外観デザインは従来のコロナHT1600Sとほとんど変わらなかったが、9R型のDOHCエンジンに加えて、内装も3カ月早く登場した兄貴分の最高級スポーツカー、トヨタ2000GT から流用した豪華装備が盛りこまれていた。
リクライニング付きビニールレザー張りのバケットシートにフルスケールの大径メーターなどの計器盤、コンソールボックスなどがそれであった。
ギアボックスも4速のほかに当時はまだ珍しい5速をそろえた。価格は4速が96万円、5速仕様(トヨタ2000GT用)が100万円ちょうどであった。
サスペンションはフロントがウイッシュボーン/コイル、リアがリーフリジッド。ブレーキはフロントがディスクでブースターが標準、リアはPCVつきのLT式ドラムである。
タイヤは6.45 14-4PRのロープロファイルとおとなしいが、もちろんレーシングタイヤの装着が前提になっている。
ブラックのラジエターグリルで精悍さをきわ立たせたトヨタ1600GTは、海外ラリーや国内レースにも出場。当時の国内ツーリングカーレースでは、GT-Bの名でおなじみのS54型スカイライン2000GTやベレット1600GTが活躍していた。
トヨタ1600GTは1968年1月の全日本鈴鹿300kmレースのツーリング部門での優勝を手はじめに、スカG、ベレGを押えての快勝が続いた。とくに5月の68年日本GPでは1位、2位、4位を占めて、スカGは3位、5位、6位の完敗。
しかし1968年9月、新シリーズのコロナ マークIIの登場で、トヨタ1600GTの生産は打ち切られ、わずか1年余での退場となった。
最後の一花は生産中止後の69年日本グランプリ。スカイラインGT-Rの初陣にひとアワ吹かせようと挑戦。ゴールではトップでチェッカーを受けたが、ペナルティをとられ、GT-Rに敗れる。2Lと対等に闘えた1.6Lのエリートであった。
トヨタ1600GT 主要諸元
●全長×全幅×全高:4125×1565×1375mm
●ホイールベース:2420mm
●重量:1035kg
●エンジン型式・種類:9R型・直4DOHC
●排気量:1587cc
●最高出力:110ps/6200rpm
●最大トルク:14.0kgm/5000rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:6.45S-14-4PR
●価格:100万円
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