ダウンフォースを発揮させる「縁の下の力持ち」
自動車後部の下面に取り付けられるエアロパーツ「ディフューザー」。ウィキペディアには、床下を通過する気流を拡散して、車両底面を負圧にしてダウンフォースを発生させるためのパーツ、とある。 90年代のF1でマクラーレンホンダが通称「バットマンディフューザー」を採用したことで話題となった。市販車だとポルシェ911は964あたりですでに床面はフラットになっていたが「ディフューザー」と呼んでいいのかはちょっと怪しい。フェラーリは360モデナチャレンジストラダーレにディフューザーが装着されていた。国産の量産車では日産のR34スカイラインGT-Rが初採用した。正確には、フロント下部もカバーで覆い、ボディ前後にディフューザーを装着していた。後継モデルのR35GT-Rはボディ下面はフルフラットとなっている。
R34より売れたのに何故「失敗作」と言われるのか? R33スカイラインGT-Rが「仲間外れ」にされる真相
教科書的な説明はさておき、筆者は「ディフューザー」が効果があるのか、実際に試したことがある。私は空力の専門家でなければ、自動車エンジニアでもない。ひとりのクルマ好きとして「体感できるか否か」をリポートしたい。著者自身の自覚としては、比較的鈍感なタイプだと思っている。
テスト車は日産のR33スカイラインGT-Rだ。先に述べたR34GT-Rのひとつ前のモデルで、ボディ下面は特に処理されていない。そのR33の前後に、日産純正のディフューザーを装着してみた。
フロント:どしっと安定したような気がする
まずフロント。R33GT-Rはレース専用グレードN1にのみ「フロントアンダーカバー」と称して、フロント下面がフラットになるカーボン製のカバーが設定されていた。日産の新型車解説書を読むと「ゼロリフトを実現」とある。実際の部品はフロントリップ部分+αのささやかなもの。R34はエンジン下面全部を覆うタイプだった。 実際に装着し、高速道路を走ってみた。スピードはもちろん法定速度、段差を乗り越えても、気持ち「フロントがどしっと安定してるかな?」レベル。多分にプラシーボ効果が高いような気がする。装着したことを知らされないで乗ったら、気が付かないかもしれない。
リヤ:直進安定性がアップした、ような気がする
続いてリヤ。R33にR34GT-Rの純正リヤディフューザーを装着してみた。一部車体側にステーの取り付けが必要になるが、ディフューザー側に加工を施すことなく、そのまま装着できてしまう。 こちらもカーボン製でとても軽いが、新品なら100万近い部品のため、おいそれと入手することは困難なアイテムではある。 こちらも高速道路でテストしてみた。もちろん法定速度なのだが、こちらも「言われてみれば、直進安定性がよくなった気がする……」というレベル。だが、こちらも「気のせい」と言われれば、そうかもしれない。という違いだ。 R34GT-Rの新型車解説書を読んでみる。グラフが書いてあり、リヤディフューザーの効果は180km/hで約60kgほどのダウンフォースを得られる、とのこと。一概には言えないが、100km/h前後だと30kgくらい? リヤのトランクに荷物を満載にした程度ということか。
まとめ:繊細なドライバーなら体感できるはず?
結論としては、「とても繊細な人なら、法定速度内でもわかる」。一概に言えないが、R33、R34GT-Rの場合、リヤディフューザーの効果は例えるなら「普段ガソリンタンクの満タン、ガス欠で乗り味の違いがわかる人にはわかる」レベル。筆者は残念ながらそこまで繊細な人間ではないので、ちょっとわからなかった。 S耐でR34GT-Rに乗っていたあるドライバーに話を聞くと、リヤディフューザーの効果は「雨の富士スピードウェイのストレートエンドで、『なんとなく安定しているかな』と感じるレベル」だったとのこと。 とはいえ、カスタマイズは性能が体感できるものだけが正義ではない。見た目のアピールは抜群だし、装着したい人も否定はしない。法定速度内では効果は少ないかもしれないが、超高速サーキットでは体感できるはずだ。
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