ディフェンダーの精神的な後継モデル
クラシカルなランドローバー・ディフェンダーは、牧羊犬のような存在だと思う。広大な大地を舞台に働く人にとって欠かせない存在といえ、英国の田園風景を構成するチャーミングな乗り物でもある。
【画像】ディフェンダーの精神を継ぐ マンローMk1 BEVのハマーとF-150 エンジンの競合車も 全140枚
しかし、活発に走り回るボーダーコリーと同様に、堅牢なディフェンダーも寿命を迎える。世代交代が不可欠なことは事実だ。
かといって、新しいディフェンダーは簡単に手を出せる金額ではなくなった。高級ゴルフクラブのコース整備を手掛ける人なら、ディフェンダー 110 75thエディションに9万ポンド(約1449万円)を支払えるかもしれないが、それはひと握りに過ぎない。
新興メーカーが手掛けるオフローダー、イネオス・グレナディアなら、約5万5000ポンド(約885万円)と少しお手頃になる。英国の場合、3万ポンド(約483万円)前後でピックアップトラックのフォード・レンジャーを選ぶこともできる。
しかし、これらのモデルは走行中にCO2を排出する。グレナディアは一番効率的な仕様でも276g/km、ディフェンダー 110は240g/km、シングルキャブのレンジャーでも226g/kmと、その量は少なくない。
この課題を解決するべく、スコットランドのマンロー社が開発を進めているのが、電動オフローダーのMk1だ。同社は、牧場などで活躍してきたディフェンダーの精神的な後継モデルを作ること目的に、現CEOのラス・ピーターソン氏によって設立された。
大きな潜在的市場の要望へ応える
働くクルマに対する現場の需要へ応えることが目的だと、ピーターソンは話す。初代ディフェンダーに似ているスタイリングも、偶然ではないといえるだろう。
「このような車両を利用する現場では、短期間で電動モデルへ切り替わることは難しいと考えられていました。早くても10年は必要だと」
「事業を始める段階で、市場調査を兼ねてわたしたちのアイデアを告知すると、大手の電力会社などから連絡をいただいたんです。ピックアップを数多く保有するような大企業です。古いディフェンダーを、今でも使っている事業者もありました」
「そこから、大きな潜在的市場があると気が付き、現在の弊社が導かれました。CO2を排出する車両を数多く保有するクライアントを持つことで、安定したビジネスにも繋がります」
「車両を置き換える場合、1度にすべてを交換するわけではありません。400台のディーゼルエンジン車を所有していたとして、年間に置き換わるのは50台前後。何年間も、需要が続く可能性を期待できます」
ピーターソンが続ける。「テスラなど、大手のバッテリーEV(BEV)メーカーを真似るつもりはありません。それでも、今後2万台ほどを世界中で販売したいと考えています」
「弊社は小さなチームです。野心は大きいですが、達成できる目標を掲げています。特殊な車両へ特化し、クライアントの要望へ真剣に耳を傾け、求められているものの理解に努めてきました」
信頼性や堅牢性を優先したデザイン
そしてカタチになったのが、このMk1だ。ラダーフレーム構造のフラットなシャシーをベースに、直線的なボディが架装されている。エントリーグレードとなるユーティリティ仕様の場合、駆動用モーターは1基で、299psと61.1kg-mを発揮する。
トランスミッションは2速オートマティック。悪路用のローレンジと、センターデフロック機能も備わる。前後のアクスルはロッキングデフ付きのリジッドで、もちろん四輪を駆動する。
サスペンションは一般的なコイルスプリングにショックアブソーバーという組み合わせ。最低地上高は480mmもある。
ボディが路面と接する角度は、フロント側のアプローチ・アングルが84度。ホイールベース間のブレークオーバーが32度、リアのディパーチャーが51度と、驚くほど深い。
ちなみにオフローダーの雄、ジープ・ラングラー・ルビコンは、順に43.9度と22.5度、37.0度となっている。最低地上高は274mmある。
チーフデザイナーのロス・コンプトン氏は、簡単に交換可能な4灯のLEDヘッドライトが示すように、信頼性や堅牢性を優先したと主張する。シンプルで大胆なボディパネルは、アルミやスチールの板を折り曲げて成形され、コストも大幅に抑えたという。
ラダーフレームに積まれる駆動用バッテリーの容量は、ユーティリティ仕様で56kWh。航続距離は、2500kgのトレーラーを牽引した場合で最長102km、過酷なオフロードを走った場合で226kmが主張される。
この続きは後編にて。
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