流れが良くなったぶん交通量が増加した
最近の首都高は、上り線よりむしろ、夕方の下り線の渋滞が激しい。渋滞の先頭は、多くが緩い上り坂。いわゆる「サグ(くぼ地の意味)」で、サグを先頭に速度が落ちたところに、入口やJCTからの合流が重なって速度が極端に落ちる、というパターンになっている。
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これは、渋滞発生のメカニズムとしては、東名・大和トンネルや中央・小仏トンネルなどとなんら変わりない。
バブル期など、首都高の渋滞がもっとも激しかった頃は、今のようではなかった。渋滞は大部分が上り線で発生していたし、時間帯も午前11時くらいがピークだった。当時は都心環状線(C1)が、箱崎JCT付近を先頭に内回り・外回りともつねに渋滞していたから、その「渋滞の輪」に合流する放射線の上りはすべて渋滞。逆に、下り線に入ってしまえば渋滞はまずなかった。
なぜこんなに変わったのか?
首都高の渋滞に大きな変化が起きたのは、2010年に中央環状新宿線(C2の熊野町ー大橋間)が開通してからと見ていいだろう。その後2015年に中央環状品川線も開通して、C2が全線開通。現在のような渋滞パターンが決定的になった。C1に加えてC2が完成したことで、環状線の交通量がオーバーフローすることは少なくなり、そこに合流する上り線の渋滞は激減したのである。
ところが、全体の流れが良くなった分、夕方の下り線の交通量が増加。ちょっとした上り坂を先頭に渋滞が発生するようになり、それに合流による速度低下が拍車をかけるという形に変化した。
典型的なのは、(1)3号渋谷線下り三軒茶屋付近を先頭にする渋滞や、(2)4号新宿線下り永福入口の先を先頭にする渋滞だ。(1)は、三軒茶屋手前の上り坂での速度低下をきっかけに、池尻入口と大橋JCTからの合流で速度が極端に下がってしまう。(2)は、永福入口の先の上り坂での速度低下をきっかけに、永福入口からの合流で速度が落ち、その渋滞の列が延々伸びて、西新宿JCTからの合流でさらに速度が落ちるというパターンだ。
東名や中央のような都市間高速なら、路肩や中央分離帯を削るなどして1車線拡幅するといった対策も打てるが、首都高にはそんな余裕はないから、対策は極めて限られている。
首都高側は、現在(1)と(2)にエスコートライトと呼ばれる「動く光」を設置し、渋滞緩和策を打っているが、大きな効果は現れていない。しかし、ほかに打てる対策はほとんどない。考えられるのは、夕方ピーク時の通行料金を高くして交通量を分散させるといった料金対策くらいだ。
ただ、現在のような渋滞パターンになったのは、首都高の流れが全体にスムースになったからで、渋滞量はバブル期に比べると3分の1程度に減っている。かつて首都高はとんでもなく特殊な高速道路で、日本の全高速道路で発生する渋滞の6割が首都高で発生していたほどの「地獄」だったが、現在はかなり普通でマトモな高速道路になったのだ。
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