2021年8月、ホンダのプレミアムブランドであるアキュラの米国法人が2022年にインテグラが復活することを発表した。現在のところ、日本市場に新型インテグラが導入されるかどうかは不明だが、約16年ぶりにインテグラが復活する。
インテグラと言えば、当時、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に出演して大ブレイクしていた、ハリウッド俳優マイケル・J・フォックスをCMキャラクターに使い、彼の口から発せられた「かっこインテグラ!」というシーンを覚えているおじさん世代も多いと思う。
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そして、当時史上最強のFFスポーツといわれたインテグラタイプRである。1995年10月~2001年7月まで生産されたDC2型初代インテグラタイプR、そして2001年7月~2006年4月まで生産された2代目DC5型インテグラタイプR。
その心臓部には、初代が200psのB18C型1.8L、直4VTEC、2代目が220psのK20A型2L、直4i-VTECが搭載され、いずれも超高回転型で伝説的な殊玉のエンジンだった。
名声を誇ったそのインテグラが復活するかと思うと、興奮してしまった人も多いのではないだろうか。
そこで今回はインテグラの復活を記念して、現在インテグラの歴代モデルはいくらで手に入るのか、調べてみた。
文/萩原文博
写真/ホンダ
【画像ギャラリー】DOHC-VTEC搭載世代のインテグラを一挙振り返り!
■インテグラの歴史を振り返る
1985年に登場したクイントインテグラ(写真は3ドアGSi)。1985年2月に3ドアクーペが発売され、同年11月に5ドアハッチバック、1986年10月にセダンが登場した
ホンダインテグラのルーツは1980年に登場した5ドアハッチバックのクイントだ。モノコックボディに4輪独立懸架のストラット式サスペンションを採用したスポーティなモデルだ。
そして“インテグラ”のネーミングが採用されたのは、1985年に登場したクイントインテグラから。リトラクタブルヘッドライトを採用した低いボンネットをはじめ、サイドウインドウは当時国産車トップクラスの段差5mmを実現。全身にくまなくフラッシュサーフェス化を施し高い空力性能を発揮した。
搭載するエンジンは、ワンダーシビックSiに搭載されているZC型1.6L直列4気筒DOHCで、電子燃料噴射システム(PGM-FI)仕様は最高出力135ps、シングルキャブレター仕様は115psを発生した。
足回りは定評のスポルテックサスペンションチューニングを施し、従来モデルよりスポーティかつ安定感の高い乗り心地を実現した。当初は3ドアハッチバックのみだったが、同年10月に5ドアハッチバック。そして1986年10月には4ドアセダンを追加するなどバリエーションを強化している。
■上皇陛下もお乗りになられていた2代目の「かっこインテグラ」
TV CFの画面にはDOHC VTECという文字とともに、マイケル・J・フォックスがギターを持ち、息を吹きかけた後、日本語で「かっこインテグラ!」。エンジンはB16A型(MTは160ps、ATは150ps)とZC型(120ps、105ps)の2種類だったが後にB18B型(140ps)を4ドアESiに追加。マイナーチェンジ後B16型は170ps(MT)へ向上
そして、国産車のヴィンテージイヤーである1989年4月に映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で主役を演じたマイケル・J・フォックスがTV-CMで話す「かっこインテグラ」がキャッチフレーズの2代目インテグラが登場。
このモデルは上皇陛下が免許証を返納されるまでお乗りになられた最後の愛車(ガンメタの1991年式RXi、MT)としても知られている。
ベストカーweb掲載の過去記事、宮内庁から回答「天皇陛下の愛車は「キャブ車」だった!? いまなお愛用される陛下の愛車に迫る
1991年式インテグラESi。上皇陛下はこの年式の4ドアのRXiのMTにお乗りになられていた。宮内庁の動画を見るとMTながらとてもスムーズに発進している様子を見ることができた
1989年式インテグラのコクピット。NAVIなどディスプレイのないシンプルなデザイン
3ドアクーペと4ドアハードトップの2つのボディタイプを用意したインテグラは、外観には、サッシュレスドアや大型三次曲面ガラス、スリムピラーなどを採用。徹底したフルフラッシュサーフェス化によりスポーティで洗練されたフォルムを主張している。
またスポーティな走りと快適な乗り心地を生む4輪ダブルウイッシュボーンサスペンション(リア はマルチリンク式)を全車に採用した。
注目はエンジンで、上級グレードのXSiとRSiには最高出力160psを発生する1.6L直列4気筒DOHC VTECを搭載。リッター当たり100馬力というハイパワーを達成し、自然吸気エンジンならではのシャープなレスポンスを発揮させながら、低・中速域でのトルク特性も妥協することなくレッドゾーンの8000回転まで一気に吹け上がっていく高速性能との両立をきわめて高いレベルで実現している。
当時1.5L直4SOHCエンジンを搭載したワンダーシビックに乗っていたが、友人のVTECエンジンを搭載したインテグラのどこまでも加速していくフィーリングには腰が抜けるほどのインパクトを受けたのを覚えている。DOHC VTECに加えて、1.6L直列4気筒DOHC16バルブエンジンを採用し、電子燃料噴射システム仕様とデュアルキャブ仕様を用意していた。
当時のホンダの資料にはDOHC VTECについてこう書かれている。
"エンジン性能に大きく影響を与える、バルブタイミング(開閉時期)とバルブリフト量(開く高さ)に着目。実用エンジンのバルブタイミング・リフトと、レース用エンジンにも迫るバルブタイミング・リフトを併せ持ち、運転条件に応じて自動的に切り換え、低・中速性能を犠牲にすることなく、高回転・高出力が引き出せる世界初の可変バルブタイミング・リフト機構を開発。DOHC VTECとしてこのインテグラに初搭載した。
このDOHC VTECは、通常のDOHCエンジンに対し、吸・排気側それぞれにもう1つのカムとロッカーアームを備えていることが大きな特徴であり、吸気側3個、排気側3個のカム駒にそれぞれ異なるプロフィールを持たせ、中央を高速用カム、両脇を低速用カムとして設定。 この2種類のカムは、エンジン回転速度・エンジン負荷・車速などをECU(エレクトロニック ・コントロール・ユニット)でセンシングし刻々の運転状況に応じて油圧ピストンを作動。瞬時 に高速時と低速時、それぞれに最適なバルブタイミングとリフト量を切り換えるものである。
これにより、ターボチャージャーなどの過給機付にはない自然吸気ならではのシャープなレスポンスを発揮させながら、リッターあたり100馬力、排気量1.6Lで最高出力160馬力の驚異的なハイパワーを達成。しかも、低・中速域でのトルク特性も妥協することなくレッドゾーン8000回転まで一気に吹け上がっていく高速性能との両立をきわめて高いレベルで実現。"
なお、このエンジンを成立させるため、レーシングエンジンにも匹敵する超精密鏡面仕上げクランクシャフト、新高強度・細軸バルブ、ピストン冷却オイルジェットなど、超精度の加工技術や数々の新素材を投入し高い信頼性を達成した。
■丸型4灯式ヘッドランプを持つ3代目インテグラが登場
デビュー当初は丸目4灯のプロジェクターヘッドランプを採用
3代目のインテグラは1993年に登場。5月にクーペと呼ばれる3ドアハッチバックそして、7月に4ドアハードトップが販売開始された。
特徴的な外観デザインは、フロントバンパーに内蔵した独立丸型4灯ヘッドライトを採用したこと。骨格には、フレーム断面の大型化とストレート化およびフレーム間の結合効率の向上により、高剛性ボディを採用している。
足回りには「安定性」と「応答性」の高次元両立をめざし、4輪ダブルウイッシュボーンサスペンションに磨きをかけ、最上級グレードのSi-VTECにはキャンバー剛性を高める大径パフォーマンスロッド&タワーバーを採用していた。
搭載するエンジンは、最上級グレードのSi-VTECには、1リッター当たり100ps、許容回転数8000回転を達成し、最高出力180psを発生する1.8L直列4気筒DOHC VTECを搭載。加えて、先代と同じ、1.6L直列4気筒ハイパー16バルブエンジンを採用し、電子燃料噴射システム仕様とデュアルキャブ仕様を用意していた。
■初代DC2型インテグラタイプRは万を持して登場し人気を博す
1995年8月にインテグラはマイナーチェンジを行い、個性的な丸型4灯のヘッドライトからフォグライト内蔵のプロジェクター採用一体薄型ヘッドライトを採用するなど内外装の変更を行った。同時にレーシングカーのテイストと圧倒的なドライビングプレジャーを獲得、究極のFFスポーツモデルを目指したインテグラタイプRを設定した。
FF最強のハンドリングマシンと称された初代インテグラタイプR。車体はボディ剛性を強化しながら、メルシート(フロアカーペット下に付く防音材)の廃止などにより約40kg軽量化。サスペンションもSiRに対し車高を15mmダウンするなど強化。FFながらコーナーではグイグイとノーズが入り、アクセル操作による挙動変化も起こしやすいという鋭い切れ味と楽しさを持つ、駆動方式を超越したレーシングカーのようなハンドリングに仕上がった
DB8型インテグラ4ドアタイプR
タイプRはボディの高剛性化をはじめ、徹底した軽量化、パーツの高精度化。そして、ロール剛性を強化したハードセッティングサスペンション+専用開発のハイグリップタイヤを装着するなど運動性能の徹底追及を図ったモデル。
タイプR専用に開発された1.8L直列4気筒DOHC VTECエンジンは、最高出力200psを発生し、当時自然吸気エンジンとして世界最高のリッター当たり111psを達成した。
タイプRは3ドアハッチバックだけでなく。4ドアハードトップにも設定。さらに1998 年1月にインテグラタイプRはマイナーチェンジ(通称98spec)を行い、ファインチューンを施した新エンジンの搭載やファイナルギアレシオの見直し。
フロントブレーキのインチアップ、タイヤを215/45R16へサイズアップするとともに新設計の5穴16インチアルミホイールを採用するなど戦闘力をさらにアップさせている。
1998年1月に発売された後期型は98specRと呼ばれる。ワイドタイヤ(195から215に変更)、ホイールのインチアップ(15から16インチに変更)、ホイールナットも4穴から5穴に変更したほか、ブレーキローターの大径化やステンレス製の4in1等長エキゾーストマニホールドが装着された
なんの飾り気のないスパルタンなコクピット。モノコックの高剛性化、足回り、ECUの見直し、ファイナルギアレシオのローレシオ化などの変更が行われた。1999年12月には99スペック、00スペックといわれる最終型が発売された
■DC5型インテグラタイプRは2L、直4i-VTECのK20型搭載
2001年7月に登場した2代目インテグラタイプR。i-VTECを採用した2L、直4のK20A型エンジンは最高出力220ps/21.0kgmを発揮
2001年7月にインテグラは7年ぶりにフルモデルチェンジを行い、4代目となる最終モデルへと世代交代を行った。従来モデルにラインアップされていた4ドアハードトップは廃止され、3ドアハッチバックのみとなった。
グレード構成は最高出力160psを発生する2L直列4気筒DOHC i-VTECエンジンを搭載し、トランスミッションは5速MTと5速ATを用意するiS。そして、最高出力220ps、最大トルク206Nmを発生する2L直列4気筒DOHC i-VTECエンジン+6速MTを搭載するタイプRの2種類。
タイプRはスポーツ走行での応答性と限界性能の向上を目指し、徹底したボディの高剛性化を実施し、先代タイプR日で曲げ剛性35%、ねじり剛性116%向上。さらに、フロントのバンパービームなどをアルミ材に置換し、徹底的な軽量化を実施している。
足回りはフロントがストラット式、リアはダブルウィッシュボーン式サスペンションを採用。各部の剛性や強度アップさらにフロントロアアーム、リアブレーキキャリパーのアルミ化など徹底的な軽量化が行われている。
2004年9月のマイナーチェンジモデルでは、ヘッドライト(通称涙目型)がシャープな形状に変更された
2004年9月にマイナーチェンジを行い、iSはよりスポーツ性を高め、毎日の運転で「操る楽しさ」を味わえる「Everyday Sports」をコンセプトとしたグレード「タイプS」に進化し、リアルスポーツとしての圧倒的な走行性能を実現する「Racing Sports」をコンセプトとした「タイプ R」の2グレードとなった。
マイナーチェンジでは、内外装の変更に加えて、ボディ剛性を大幅に高めると同時に、それぞれのモデルに合わせて専用のサスペンションセッティングを実施。タイプSは2インチアップした17インチタイヤの採用やブレーキ容量のアップなどと相まって、日常のあらゆるシーンで爽快な走りを快適に楽しめる走行性能を実現。
またタイプRはサスペンションのフリクション低減など細部にわたるセッティングの変更により、サーキットでも限界域まで安定してリニアな走行性能を実現している。
こうして、4代22年というインテグラの歴史を振り返ると最高出力160psを発生する1.6L直列4気筒DOHC VTECの搭載や多くの人に手が届くタイプRの設定など、シビックより先に採用した意欲的なスポーツモデルだったことがおわかりいただけただろうか。
専門店に聞いたFF最強のインテグラタイプRの購入ガイド&メンテナンス情報
■初代DC2型インテグラの中古車相場は約169万~500万円以上と高騰中
初期のB18C spec.Rエンジンは「職人が手作業でポート研磨を行っていた」という点でも伝説となったわけだが、実際の回転フィールにおいてもほぼレーシングエンジンだった
それでは、最新のインテグラの中古車事情を見てみよう。まずは最も注目度の高いタイプRからだ。1995年~2001年まで販売された初代DC2型インテグラタイプRは3ドアハッチバックが約32台、4ドアハードトップは6台流通している。
3ドアハッチバックの1年前の流通台数は約18台だったので、倍増した。平均価格は1年前の約150万円から現在は約264万円と値上がり。価格帯も1年前には約95万~約400万円と100万円以下の中古車も見つかったが、現在は約169万~890万円と500万円以上のクルマが約5台と高騰している。
一方の4ドア車は中古車の平均価格は約274.5万円で、価格帯は約130万~約374万円とハッチバックに比べるとまだ割安感がある。
DC2型初代インテグラタイプRの中古車情報はこちら!
■DC5型インテグラタイプRは先代より人気薄ながら値上がり傾向
続いては、2001年~2006年まで販売された2代目DC5型インテグラタイプR。現在中古車の流通台数は約57台で、平均価格は約179万円。
中古車の価格帯は約100万~約360万円と先代モデルと価格帯が逆転している。1年前の中古車の流通台数は約47台で平均価格は約140万円。価格帯は約60万~約190万円と先代モデルほどではないが、値上がり傾向となっている。
2001年7月に登場した2代目インテグラタイプR。i-VTECを採用した2L、直4のK20A型エンジンは最高出力220ps/21.0kgmを発揮
DC5型2代目インテグラタイプRの中古車情報はこちら!
■タイプRを除くインテグラの中古車事情
2代目インテグラ3ドアクーペXSi。160psのB16A型1.6L、直4DOHC VTECを搭載
タイプRを除いたインテグラの中古車事情は、1985年に登場したリトラクタブルヘッドライトを採用したクイントインテグラは4ドアセダンが1台流通していて価格は約40万円。
1989年に登場した2代目インテグラは、3ドアハッチバックが2台流通していて、約89~約200万円。また4ドアハードトップは1台中古車が流通していて約100万円となっている。
2代目インテグラ(1989年4月~1993年7月)の中古車情報はこちら!
1995年インテグラSiR-Gクーペ。1995年のマイナーチェンジでヘッドランプは丸型4灯から変更を受けた
3代目インテグラ(1993年5月~2001年7月)の中古車情報はこちら!
1993年に登場した3代目インテグラの3ドアハッチバックは約12台中古車が流通していて、価格帯は約60万~約280万円。4ドアハードトップは5台流通していて、約35万~約135万円となっている。
2004年のマイナーチェンジで涙目のヘッドランプが変更され、isに変わりタイプSが設定
そして2001年に登場した最終モデルは約33台の中古車が流通していて、価格帯は約23万~約200万円となっている。XSiやSi-VTEC、タイプSといったハイパワーエンジン+MT車という中古車はプレミアム価格となっている。
4代目インテグラ(2001年7月~2007年2月)の中古車情報はこちら!
ホンダが内燃機関からの転換を発表して以降、赤いヘッドカバーのタイプRの人気はうなぎ登りとなっている。流通台数が増えているのは歓迎だが、うかうかしているとすぐに手の届かない価格となってしまうので、購入を検討しているのであれば急いだほうが良いだろう。
【画像ギャラリー】DOHC-VTEC搭載世代のインテグラを一挙振り返り!
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