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ランエボとパジェロを融合!? 三菱エクリプロス クロスを担当したデザイナーのこだわりとは

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ランエボとパジェロを融合!? 三菱エクリプロス クロスを担当したデザイナーのこだわりとは

 まさに三菱自動車の新時代の幕開けを告げるデザイン

 三菱らしさを守りながら、三菱にしかできない新たな挑戦を──。そんな気概で臨んだ新型エクリプス クロスのデザイン開発。そこに待ち受けていたのは、予想を超えるいくつもの大きな壁だった。デザインチームのみなさんに開発プロジェクトを振り返っていただいた。

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 2014年にデザイン本部長に就任した國本恒博さんが先頭に立つ形で、新デザイン戦略の構築に着手。その成果となる量産第1号が、新型エクリプス クロスだ。開発プロジェクトでデザインのまとめ役を務めた岡本俊彦さんは、開発当初のことを次のように振り返ってくれた。

「エクリプス クロスのデザイン開発がスタートしたのは、國本本部長が来る前のことです。当時から、三菱自動車として新たなデザインにチャレンジしようという機運はありましたし、SUVの機能をしっかり満たしたレイアウトと、スポーティでダイナミックなクーペスタイルを融合させるというコンセプトも、開発当初から変わらないものです。ですが國本本部長が来てからは方向性が明確にされ、デザイン戦略を見据えたうえでの軌道修正が行われた印象です」

 初期に描かれた4案のスケッチや、そこから選ばれた2案をもとに作られた4分の1スケールのモデルは、國本本部長就任以前のもの。ここには最終的な量産型に通じるデザイン要素がいくつも見出せるが、表情の豊かさに欠けた印象が否めない。

 その後、この2案をもとに『』というショーカーが製作されるが、それは國本本部長が来てからのこと。デザインは見違えるような変化を遂げている。エクステリア担当の吉峰典彦さんが解説してくれた。

「少し色気が出たと言いますか、力強さのなかにエモーショナルな魅力が感じられるデザインになっています。じつはデザインのキーとなるものはそれほど変わってないんです。大きく違うのは、ネガ面を使ってシャープラインを強調させたり、鉄の板が自然と曲げられたような『本物感』が感じられるRを付けたり、あるいはコントラストの付け方を工夫したりといった、面や線の細かな処理なんです」

 リヤのフェンダーまわりの抑揚も見た目には非常に豊かだが、室内空間を最大限に確保するため、先述したネガ面を使った表現などで、実際の寸法以上に視覚的に豊かに見えるように造形されている。こうした表現は、従来の三菱デザインではあまり見られなかったものだ。また、この段階になるとフロントマスクの「ダイナミックシールド」もかなり明確に表現されている。

「グリルについては、それ以前からランサーエボリューションのジェットファイターをもう少しエコロジカルな方向に振った優しい表情にしようとか、SUVとしての三菱らしいデザインとはなんだろうといったことを考えながら模索していました。ですが、自分たちが求めているものがなんなのかを掴みきれずにいたんです。ところが國本本部長が、このグリルはランエボとパジェロの融合だと言い切ったんです。ハッとさせられました。なんとなく自分たちでもわかっていたけれど、言葉で明確に伝えられるようなレベルにはなっていなかったんです」(吉峰さん)

「國本本部長は従来の三菱のデザインを否定することは一切なく、むしろわれわれが長年やっていて当たり前になって気付けなくなっていたことを、『三菱にはこんないいデザインがあるじゃないか』と客観的な目で教えてくれたんです」(岡本さん)

 新型エクリプス クロスは、新デザイン戦略の第1弾モデルであると先述したが、こうして話をうかがうと、エクリプス クロスのデザイン開発によって、新デザイン戦略が明確に打ち立てられていったということがわかる。

「できないかも」ではなく「どうやればできるのか」

 明確化が進むにつれて、デザインチームのなかでもデザインの熟成や新しい表現へのトライが加速。また、ほかの部署との自発的な共創体制も生まれていった。その成果はデザインにしっかりと表れている。

 たとえば、サイドビューのドアハンドルを貫いて前後に描かれたキャラクターライン。エッジが尖っていることでラインは非常にシャープな印象となり、上質感を醸し出している。このプレスラインのシャープなラインは、コンパクトクラスではほとんど見られない小さなもの。これほどシャープなラインがなかなか実現できないのは、部品を型から抜くときに「線ズレ」という品質不良が起こりやすいことが理由のひとつにある。

「生産サイドから実現不可能と言われてもおかしくないレベルのエッジです。ですが今回は生産サイドがシャープなラインの重要性を理解して、フェンダーやドア、フードなど、各部の試作型を率先して何度も作ってくれたんです。こんなに何度も作るのは異例のことです。できないかも、ではなく、どうやればできるか。そんな意志が開発の現場全体に満ちていた気がします」(岡本さん)

 シャープなラインやきわめて滑らかに仕上げられた面質は、クレイモデラーの力がなければ成立しなかっただろう。とりわけボディサイドからホイールのフレアにかけた抑揚はとくに美しい仕上がりだが、それはクレイモデラーである中尾成良さんの努力なしには成し得なかった部分といえる。

「何十回、何百回と削り直しました。最後は1mm以下の調整量で面の張りを作っていったんです」(中尾さん)

 異例なことはほかにいくつもあった。エクステリアを担当した後藤 淳さんがそのひとつを語る。

「新型エクリプス クロスでは、ボディサイドのシャープなラインに合わせて新しいドアハンドルをデザインしたんです。ふつうはキャラクターラインをどんなにシャープにしても、ドアハンドルがその勢いを削いでしまうんですが、今回はドアハンドルの基本面をラインのエッジと同じように下に向けたデザインとすることで、ラインのシャープな勢いを損なうことなく、さらにフロントからリヤまでスパーッと通るシャドー面も実現しています」

「しかも下に向けたことで、極寒地などで分厚い手袋をしたままでも手が入りやすいなど操作性も向上しています。もともとドアハンドルは他車種と共用することが多い部品で、新規車種立ち上げと同時にデザインするというのはレアケースです。そのうえ、かなりたくさんの試作もしました」(後藤さん)

「インドネシアで生産されているエクスパンダーも新デザイン戦略に基づいて作られたクルマですが、エクリプス クロスでデザインしたドアハンドルはあちらでも採用されています。デザインアイデンティティに一貫性があれば、デザイン的に流用もしやすく、コストメリットもあり、しかも個性も引き出せる。これも新デザイン戦略のひとつなんです」(吉峰さん)

 垣根を越えた連携と、揉めてでもいいモノを作るという強い意志

 インテリアのデザインでも、エクステリアに負けない表現の可能性への追求が行われている。たとえば、前席を包み込んでくれるシルバーの加飾。表面を単純な平板形状とせずに抑揚変化を付けることで、シルバーの端正な輝きだけでなく、光と影の美しいグラデーションももたらされている。この見え方のトライ&エラーでは、デジタルモデルによる検証が多用された。担当した加古尚希さんは次のように語る。

「ハイライトのチューニングでは、ほんの1mmの違いでも見え方が大きく変わってきます。リアルなCGを製作して、それを回転させることで光の当たり方の変化を検証するんです。CGも実物大で検証できるよう、大きなモニターに映します。このほか、金属を削り出したようなソリッドな表現にもこだわりました」

 また助手席ダッシュボードのアッパー部とロア部を分割しているシルバーの長い加飾部品は、途中で分割されていない大きな一本モノとなっている。インテリア担当の中屋裕史さんにお話を伺った。

「これだけ大きく、複雑な形状の部品をインパネとコンソールのふたつにわたって組み付けるのは至難の技です。じつは最初のデザインモデルのときも作りづらいから分割していたほどなんです。目立つ位置にありますから、部品の精度が悪かったりすると、質感を上げるどころか、かえって大きく損ねてしまう原因にもなりかねません。ですが内装設計の担当者が、『ここを分割したら美しさが台無しでしょう』と、向こうから提案してくれたんです。自主的に光造形で試作モデルを作って、組み付けのトライまでやってくれた。そういう目に見えない努力が、このクルマには至るところにあるんです」

 見た目の美しさだけでなく、触り心地も徹底的な追求が行なわれている。インテリアデザインを担当した宮崎真一さんは次のように振り返る。

「人が直接触れる部分についてはとくにこだわりました。ドアハンドルのような握る部品は、何度も何度もクレイモデルを削り直すことで握りやすい形状に追い込みました。ダイヤルのようなスイッチも回転のトルクにこだわりましたね。こうした試行錯誤が新しいデザイン戦略のデザインアイデンティティのひとつである『三菱タッチ』に繋がったんです」

 小さな部品のひとつひとつに至るまで真摯に質感を追求する。磨き上げられた部品たちは、お互いの相乗効果によって全体のクオリティを引き上げる。新型エクリプス クロスのデザインは、まさにその積み重ねで生み出されたものと言えるだろう。デザインのまとめ役である岡本さんはインタビューの最後にこんなことを話してくれた。

「あらゆる部署が垣根を越えて連携して、ときには揉めてでもいいものを作っていくという楽しさ。それが今回の開発で自分の一番思い出深いことです。いろいろな人たちの組み合わせによって、自分のレベルやスキル以上の高みに上がっていく。そんなプロジェクトだったような気がします」

 その言葉は、ひとつひとつの部品の相乗効果で全体のクオリティをさらに上げている新型エクリプス クロスにも通じる姿だ。真摯に作り上げられたこのクルマのデザインは、まさに今の三菱自動車そのものの姿なのかもしれない。

 新採用したRED DIAMONDというカラーへの徹底追求

 新しいボディカラー「レッドダイヤモンド」は、新型エクリプス クロスの見どころのひとつだ。コンセプトカーなどの「一品物」に使われていたこのカラーは、透過性のある赤を重ねて塗るため、少しでも塗膜の厚みにムラが出ると、そのまま黒ずんだ色ムラになってしまうという、極めて量産化の難しい色であった。

 開発を担当したカラーデザイナーの安井智草さんは、当初から量産不可能と言われていたこのカラーを実現させるために、この色の必要性を関係部署に1年以上もかけて説得してまわったという。

 その熱意に動かされたのが、定年を迎えて現役を退いていた塗装技術のスペシャリスト。三菱自動車内では伝説のように謳われる匠だ。透過層が1000分の2mm違うとムラになってしまうというこの色を実現できたのは、均一に塗るための測定ポイント約千カ所を探し出し、その部分の塗膜厚が一定に保たれるよう、試行錯誤で塗装ロボットのプログラムを作り上げたことによる。機械ではどうしても実現できなかったものを最後の最後に可能にしたのは、人間の匠の技だったのである。

 ちなみにこのレッドダイヤモンド、補修性についてもしっかり考慮されており、修理塗装のためのディーラー教育や、補修用の専用塗料の開発なども行なわれているので、運転に自信がなくクルマをこすってしまいそうな人も、これなら安心かもしれない(?)。

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