■通好みな高性能モデルを振り返る
1車種につきエンジンや装備の違いで複数のグレードが設定されるのが一般的です。そうしたグレードのなかには、高性能なエンジンを搭載するスポーティなモデルも含まれます。
代表的な高性能グレードとしては日産「スカイラインGT-R」や、ホンダの「タイプR」シリーズなどが挙げられますが、一方で、あまりメジャーな存在ではなかったり、意外性がある高性能モデルも存在。
そこで、知名度は高くないものの、ホットなモデルを5車種ピックアップして紹介します。
●マツダ「マツダスピード ファミリア」
かつて、マツダのラインナップで中核を担っていたモデルとして「ファミリア」がありました。
初代はマツダの乗用車製造の黎明期であった1963年に登場し、2004年に9代目をもって生産を終了。後継車は「アクセラ」で、現在の「マツダ3」です。
この最終モデルの9代目において、2001年にわずか100台限定でホットモデルの「マツダスピード ファミリア」が販売されました。なお、同時に「マツダスピード ロードスター」も200台限定で販売されています。
マツダスピードはマツダのモータースポーツ活動をサポートする関連会社で、市販車向けのハイパフォーマンスパーツの開発、コンプリートカーの製造もおこなっていましたが、現在は消滅してしまいました。
そして、マツダスピード ファミリアは1.5リッターセダンをベースとし、ワゴン用の2リッター直列4気筒エンジンに換装。エンジン内部に手が加えられ、ハイコンプピストン、専用のカムシャフト、軽量フライホイール、吸排気ポート加工、ステンレス製エキゾーストマニホールドの採用などにより、最高出力は175馬力を発揮。トランスミッションは5速MTのみです。
また、スポーツサスペンション、専用の前後スタビライザー、大径ディスクブレーキなど、足まわりも強化されていました。
外装色は専用の「スターリーブルーマイカ」のみで、ゴールドのホイール、リアウイングを含めた専用のエアロパーツが装着されるなど、見た目もスポーティに演出。
マツダスピード ファミリアは希少なクルマですが、現在もわずかな台数が中古車市場に流通しており、入手は可能です。
●スバル「インプレッサ スポーツワゴンSTi」
1992年に誕生したスバル「インプレッサ」は、パワフルなエンジンにフルタイム4WDシステムを組み合わせた、高性能セダン/ステーションワゴンとして人気となりました。
なかでも「インプレッサ WRX」が世界ラリー選手権で勝利を重ねたことで、インプレッサのブランドイメージ向上にも貢献します。
このインプレッサ WRXをベースに、スバルテクニカインターナショナルがさらにチューニングしたモデルが「インプレッサ WRX STi」で、高性能グレードの頂点に君臨しました。
インプレッサ WRX STiは2代目ではセダンというイメージがありますが、わずかな期間のみステーションワゴンにも設定されました。それが「インプレッサ スポーツワゴンSTi」です。
2000年に登場したスポーツワゴンSTiには、基本的にセダンのWRX STiと同等な装備が与えられ、エンジンはインタークーラーウォータースプレーを備えた2リッター水平対向4気筒ターボを搭載し、280馬力を発揮。トランスミッションは6速MTのみとなっています。
駆動系ではセンターデフにビスカスLSDを用いたフルタイム4WDで、前後トルク配分は50:50を基本的として、前後輪に回転差が生じた場合にはビスカスLSDが瞬時に差動を制限。前後輪へのトルク配分を自動的に変化させる仕組みです。
その後、2代目インプッサは、2002年にフロントフェイスを一新するビッグマイナーチェンジがおこなわれましたが、それと同時にスポーツワゴンSTiはラインナップから外され、販売期間はわずか2年だけでした。
なお、初代インプレッサ スポーツワゴンには、限定モデルでSTiバージョンが設定され、後にカタログモデルになりました。
●日産「ブルーバード SSS-Z」
1959年に発売された日産初代「ブルーバード」は、それまで旧態依然としたモデルから一気に進化を果たしたセダンとしてデビュー。
1963年には2代目が登場し、高性能グレードの「SS」、続いて「SSS」をラインナップに加え、ブルーバードはスポーティなモデルというイメージが定着しました。
その後1979年に発売された6代目の「910型」では、初のターボエンジンを搭載。SSSシリーズのトップグレードはターボエンジンとなり、代を重ねます。
しかし、1996年に登場した10代目の「U14型」では、ターボエンジンが廃止され、ガソリン車はすべて自然吸気エンジンを搭載。トップグレードの「2.0SSSアテーサ」は145馬力の2リッター直列4気筒エンジンと、それまでのハイパフォーマンス路線ではなくなってしまいました。
ところが、1997年のマイナーチェンジで追加された「2.0SSS-Z」では、190馬力を誇る「SR20VE型」エンジンを搭載。
トランスミッションはCVTのみで、駆動方式はFFの2WDとされ、価格的には2.0SSSアテーサシリーズよりも安価ながら高性能という逆転現象が起きました。
そして、ブルーバードは2000年に生産を終了。後継車は「ブルーバード シルフィ」ですが、「サニー」とシャシを共有して高性能なグレードも無く、実質的に10代目が最後のブルーバードです。
■かわいい顔してハイオク仕様!?
●ダイハツ「ストーリア 1300CZ/ツーリング」
ダイハツのコンパクトカーとして一世を風靡したのが1977年に初代が発売された「シャレード」です。当時、世界最小の1リッターディーゼルエンジンを搭載し、2代目にはターボエンジンを搭載した「シャレード・デトマソ・ターボ」を加えるなど、ベーシックなコンパクトカーとしてだけでなく、スポーティなモデルとしても人気となりました。
その後、1999年にシャレードは生産を終え、後継車の「ストーリア」へとバトンタッチします。
ストーリアは1リッターエンジン車がメインのコンパクトカーですが、120馬力を発揮する713ccターボエンジンを搭載したモータースポーツベース車の「X4」を設定していたのは、よく知られています。
一方でマイナーな存在ながら注目に値するのが1.3リッターモデルの「1300CZ」と「ツーリング」です。
搭載されたエンジンは1.3リッター直列4気筒DOHCでハイオク仕様となっており、最高出力110馬力を7000rpmで発揮しました。
さらにFFの5速MT車では車重が850kgと軽量で、まさにホットハッチと呼べる仕様でした。
その後、ストーリアは2004年に生産を終了し、後継車はトヨタと共同開発した「ブーン」です。
●三菱「ギャランフォルティス ラリーアート」
三菱の高性能モデルというと「ランサーエボリューション」シリーズが真っ先に思い浮かびますが、2007年に発売された「ランサーエボリューション X」をもって、消滅してしまいました。
このランサーエボリューション Xのベースとなったのが、2007年に発売された「ギャランフォルティス」で、2008年には高性能モデルの「ギャランフォルティス ラリーアート」が登場。
搭載されたエンジンはランサーエボリューション Xのものをベースにデチューンされた2リッター直列4気筒ターボで、最高出力240馬力を発揮。トランスミッションは「ツインクラッチSST」(DCT)のみです。
駆動方式はフロントヘリカルLSD+「ACD」(アクティブセンターディファレンシャル)+リア機械式LSDで構成される、3つの走行モードを選択可能としたフルタイム4WDのみです。
外観は空気抵抗の低減を図った専用フロントバンパー、アルミ製ボンネットフード、デュアルマフラーなどが装着されるなど、ランサーエボリューション Xを彷彿とさせます。
ランサーエボリューションXの存在があったため、ギャランフォルティス ラリーアートは目立ちませんでしたが、スポーツセダンとして高く評価されました。
しかし、2015年にギャランフォルティスシリーズは生産を終了。ギャランの歴史は幕を閉じました。
※ ※ ※
近年はさりげなく高性能なモデルというのが、あまり見られなくなりました。
今回紹介したストーリア 1300CZ/ツーリングのように、ハイオク仕様で見た目はベーシックなコンパクトカーなど、まずありえません。
高性能なグレードはより過激になり、見た目にも速そうなモデルばかりです。
見た目は普通、じつは高性能というのが、意外とカッコイイのではないでしょうか。
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昭和の常識、令和の非常識。
エンジンだけでなく安全性でも高性能な車でした