ゴーン氏が語る自動車業界の未来
かつて日産の再建を成功に導いたカルロス・ゴーン氏は、2024年12月23日に日本外国特派員協会(FCCJ)主催のオンライン会見をレバノンからリモートで行った。同日、ホンダ、日産、三菱自動車による共同会見も開かれ、自動車業界に大きな議論を巻き起こしている。
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長年にわたり日本の自動車業界を内外から見てきたゴーン氏の視点は、業界の未来を考える上で非常に重要であり、その発言は無視できない。果たして、彼の発言に込められた真意は何なのだろうか。会見での様々な発言から、その真意に迫っていく。
注目すべき五つの発言
ホンダ、日産、三菱自動車による共同会見の約2時間前、カルロス・ゴーン氏はレバノンから1時間ほどの会見を行った。この会見の前、ゴーン氏はホンダと日産の経営統合について
「日産はパニック状態にある」
と語り、彼が会見でどんな発言をするのか、注目を集めていた。会見は、記者やジャーナリストの質問に答える形で進行した。ゴーン氏はさまざまな意見を述べ、そのなかで特に注目すべき五つの発言があった。
●発言1「両社の経営統合は相互補完性がなく、統合が成功するとは思えない」
多くのメディアがこの発言を取り上げている。ゴーン氏はその根拠を明確に示さなかったが、両社が強みを持つ市場が中国と北米に集中している点が理由のひとつとして挙げられる。
これらの地域では販売比率がそれぞれ6割から7割程度で、ホンダが苦手とする欧州を除けば、日本を含む他の地域では両社の市場状況が似ており、各地域での強みと弱みが重複している。ゴーン氏はこのような状況から、両社の統合が新たな価値を生む可能性は低く、スケールメリットが実現しにくいことを指摘した。
●発言2「北米日産役員の退任が、日産が北米で苦戦する一因」
北米日産のチーフ・パフォーマンス・オフィサー(CPO)だったホセ・ムニョス氏は、2019年1月にゴーン氏がルノー会長職を辞職した直後に北米日産を退任し、北米現代に入社した。その後の5年間で、現代グループは北米での販売を急速に拡大し、市場シェアは10%以上に成長した。一方、日産は競争力を大きく失い、シェアは約5%まで低下し、現代とは対照的に市場での地位を失っていった。ムニョス氏は、2025年1月1日付で現代自動車グループの最高経営責任者(CEO)に就任予定だが、彼の強いリーダーシップがあれば、日産が北米でここまで厳しい状況に陥ることはなかったかもしれない。
しかし一方で、日産が北米で競争力を失ったのは、ゴーン氏の“負の遺産”が大きいという見方もある。ゴーン氏は、北米で需要が見込まれるハイブリッド車の開発よりも電気自動車の開発を優先し、インセンティブによる価格乱売でブランド力を低下させ、結果的に日産が困難な状況に追い込まれたとされている。
経営統合に挑むホンダの試練
残る発言は三つだ。
●発言3「ホンダは他社と経営統合した経験がない」
ホンダはこれまで、他の自動車メーカーとの提携を避け、独自の道を歩んできた。そのため、統合はホンダにとって未経験の挑戦だとゴーン氏は述べていた。ルノーからコスト削減のために日産に乗り込んだ経験をもとに、経営統合の過程で数々の困難を乗り越えたゴーン氏ならではの発言で、現実味と説得力があった。また、この経験を根拠に統合はうまくいかないと断言する意見もあったが、ホンダ主導で進められる統合が円滑に進むかどうかは疑問が残る。
●発言4「両社が持つ技術力への誇りと調整の困難さ」
両社はともに技術力に誇りを持っており、お互いのプライドが経営統合後の調整を難しくする可能性があると指摘された。技術力への誇りや企業文化の違いは、単なる経営統合の課題にとどまらず、グローバル企業としてのあり方そのものに関わる問題だともいえる。確かに、
・技術の日産
・挑戦のホンダ
がうまく融合するには、かなりの時間がかかるかもしれない。これまでにも、三菱自が得意とする四輪駆動やプラグインハイブリッド車などの技術を日産が積極的に活用しようとする動きは見られなかった。統合の過程では、意見の対立や技術的な優位性を巡る議論が絶えない事態が想定される。
●発言5「強いリーダーシップの必要性」
経営統合を成功させるためには、明確なビジョンと強力なリーダーシップが必要だとし、リーダーの選定が統合成功の鍵であることを強調した。この発言は、日本企業に対する期待や課題を再認識させるものだ。リーダーシップの重要性についての指摘は、日産の再建を指揮した自身の経験に基づいており、その言葉には説得力があった。
ホンダ、日産、三菱自による共同会見でも、各社の社長から強いリーダーシップは感じられず、会見は淡々と進んでいた印象を受けた。統合を成功に導くためには、強いリーダーシップを発揮し、統合を率先して指揮する経営者としてのカリスマ性が求められる。
業界変革の必須課題
ゴーン氏の発言は、日産やホンダが抱える個別の課題を超えて、
「日本の自動車業界全体に対する警鐘」
とも受け取れる。グローバル化が進むなかで、日本企業の経営手法や企業文化がどのように変わるべきかを問うものと感じられる。
会見でゴーン氏が繰り返し強調した「強いリーダーシップの必要性」は、自動車業界の競争激化にともなう喫緊の課題を示唆している。日産が抱える経営課題に対する指摘からは、自身が築いた基盤が失われた悔しさが感じられるとともに、長年の日産での経験に基づく警鐘が込められている。
ゴーン氏の発言を受けて、業界関係者や市場からはさまざまな反応が寄せられている。ホンダの立場では、他社との統合経験がないため統合プロセスに不安を抱く一方、
「技術力の相乗効果」
には期待を寄せる声もある。
日産の立場では、ゴーン氏の指摘に賛否が分かれるが、リーダーシップの欠如については現経営陣にとって厳しい批判となるだろう。市場からは、統合によるスケールメリットや技術開発の加速への期待がある一方、企業文化の違いや統合時の調整の難しさについて懸念する声も少なくない。
日本車愛を語るゴーン氏
今回の会見を通じて、ゴーン氏が
「日本への親しみや愛情」
を依然として抱いていることが伝わった。会見後半、司会を務めた日本外国特派員協会のアズハリ氏から「お勧めのクルマは何か」と尋ねられたゴーン氏は、
「四輪駆動車であれば、車両開発に携わり、現在も所有している日産パトロール。街乗りなら、実用的で安全性が高いのはトヨタ車」
と答えた。日本車を推奨するこの発言は、ゴーン氏が日本に対する愛情を今も持ち続けていることを示している。また、会見の最後には日本にいる友人へのメッセージもあり、親しみが感じられた。
ゴーン氏は、ホンダと日産の経営統合に関する可能性と課題にも言及した。もし統合が成功すれば、日本の自動車産業が世界市場で新たな地位を築く大きな転機となるだろう。しかし、その実現には強力なリーダーシップと柔軟な企業文化の調整が不可欠であり、難しい舵取りが求められると警告している。
筆者(成家千春、自動車経済ライター)は会見をYouTubeでフル動画を視聴したが、ネットニュースでは「両社に補完性なし」など、切り取り報道が目立ち、違和感を覚えた。実際にはゴーン氏は多くのテーマに触れており、会見中に日本の司法制度に対する不満や批判も多く語られたが、そのなかでも日本への親しみを抱き続けていることが感じられた。
読者の皆さんは、ゴーン氏の発言をどのように受け止めているだろうか。ホンダと日産による経営統合がもたらす可能性や課題について、ゴーン氏の視点を踏まえた意見を聞かせてもらいたい。
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