SF90にハイブリッドを採用した理由
フェラーリは、2023年までに15台の新型車を発表すると2018年9月に約束した。現在その1台目を発売する準備に取り掛かっている。それらすべての開発を指揮する立場にある人物こそ、2015年にフェラーリに加わったCTO(最高技術責任者)のマイケル・ライターズだ。われわれはマラネロを訪れた際、彼とテーブルを囲んで話を聞いた。
ーーフェラーリは間もなくSF90ストラダーレを発売します。なぜ、このクルマをハイブリッドにしたのですか?
「次のステップに進むためにはハイブリッド・テクノロジーが重要であると、われわれは確信しています。ハイブリッドは内燃エンジンの代替と考えられていますが、われわれが本当に求めたのは四輪駆動に使えるということです(SF90は2基の電気モーターが前輪を駆動する)」
「四輪駆動にする利点はたくさんあります。単に0-100km/h加速が速くなるだけではなく、非常にスポーティなクルマに仕上げることができます。四輪駆動のスポーツカーを作るために、ハイブリッドの採用を決めたのです」
ーーなぜ、単なるハイブリッドではなく、プラグインにしたのですか?
「ある瞬間には大パワーを求めても、別の状況では静かに走行したいと思うこともあるはずです。例えば早朝に家を出るとき、壮大な排気音を撒き散らしたいとは思いませんよね」
重量増を補って余りあるメリットとは
ーーSF90ストラダーレの位置づけは?
「フェラーリには488と812がありますが、これらとは重ならない新しいセグメントを作りだす余地があることをに気付きました。そこで812を超えるパフォーマンスと、488にはない新しい特徴を持ったクルマ作りだそうと考えたのです。488や812はハイブリッドでも四輪駆動でもありません」
「そこでわたしたちは、新たなセグメントを定義しました。スポーツカーの最上位となるセグメントです。それが可能だと考えていますし、最初から肯定的な反応を得られています」
「われわれにとって、30万ユーロ(約3600万円)を超えるトップ・セグメントの顧客を掴まえることは困難でした。この価格帯のクルマを購入される方は大抵ミドシップのクルマをお求めになります」
ーーハイブリッド化による重量増についてはどのようにお考えですか?
「痛いですよ! ハイブリッド・システム全体で250kgの重量増になります。250kgも相殺することは明らかに不可能です。ボディやシャシーにカーボンファイバーを多用したり、あるいはリバース・ギアを省略してモーターを後退時に使用するとか、小さなことを積み重ねて、少しずつ重量を抑えるしかありません」
「軽量化によって得られる利点はそれほど多くありません。まず、アクセレーション(加速性能)ですが、それも1000馬力もあれば問題になりません。次にアジリティ、つまり車両がどれだけ素早く反応するかという点に関しては、重量と慣性によって決まります。より重要なのがホイールベースです。ホイールベースを伸ばさず、慣性を抑えることが何より重要です。だからSF90のホイールベースはF8と変わっていません。次に大事なことは、重心の低さです。エンジンは非常に低い位置に搭載されています」
「そしてフロント・アクスル。2基の電気モーターと配線を合わせると65~70kgほどです。しかし、トルクベンタリングが可能になりますから、これは200~210km/hでコーナリングする際に、約200kgの軽量化と同等の効果が認められます」
フェラーリの秘密は「エモーション」
ーーF8トリブートは既存の488をアップデートしたモデルです。完全な後継モデルの計画はありますか?
「アーキテクチャの観点から見れば、われわれの哲学は変わりません。重量、ホイールベース、重心です。技術的な観点から見れば、ふたつの軸があります。ひとつはパフォーマンス。そしてもうひとつは、ドライビング・エモーションです。パフォーマンスは雑誌に記載されているような、0-100km/h加速、最高出力、最大トルクなど、すべての数字です」
「エモーションこそ、フェラーリの事実上の秘密です。ブガッティは1000ps以上のパワーを発揮し、真っ直ぐに走る分には非常に速いクルマです。しかし、山道を走り回った時に楽しいと感じるクルマを作るにはどうすれば良いか。それがフェラーリの秘密だとわれわれは考えています。単にコーナリング性能の限界を上げれば良いというものではありません。われわれのクルマは常に楽しいと感じるはずです」
「しかし、楽しさって何なのでしょうか? サウンドや、感覚的な加速感。単なる0-100km/hや0-200km/hまでのタイムではありません。アクセルを踏み込んだ際に、トルクと速度の高まりを感じる。ディーゼルの運転とはまったく違います。ターボならパワーとトルクの増加が、自然吸気エンジンのように感じられることが重要です」
「そしてゴーカートのようなフィーリング。すべての動作がクルマをコントロールできるように感じること。すべてのお客様は、フェラーリを運転して楽しむことができるのです」
「われわれは開発において、エンジニアリングのデータと感覚的なエモーションを組み合わせるという非常に特別なアプローチを採っています。フェラーリには、顧客から得た感覚と車両の特性を結びつけて分類した膨大な知見があります。われわれは顧客とたくさん会話します。われわれのテストドライバーは顧客の感覚を翻訳し、それをクルマの開発評価に役立てる能力に長けています」
「F8とその後継車の話に戻しましょう。SF90が非常にパフォーマンスを重視した運転して楽しいクルマであるとすれば、F8の後継モデルはそれ(1000ps)よりパフォーマンスは低いものの、運転するとさらに楽しいクルマになるでしょう。さらにドライビング・エモーションに優れ、性能が高く、そして軽量な…そんなスペシャル・モデルもいくつか考えています」
V12は最新の排ガス規制にも適応
ーーV12エンジンの開発は継続しますか?
「できるだけ長く続けようとしています。市場にはまだV12の需要があると確信していますし、技術的に排ガス規制に適応させることも可能です。われわれは次のユーロ6c規制に適合するための開発を行っています。それにはガソリン微粒子フィルターを加えることになるでしょう」
SF90ストラダーレと2022年に登場するSUVを含めると、フェラーリのラインアップは6車種になります。将来的にも6車種に限定していくのでしょうか。
「いいえ。フェラーリは成長しなければなりません。ラインアップの再配置や、あるいは新たなモデルを追加することで成長していきます。販売台数を増やすことに興味はありません。大事なのは収益を伸ばすことです」
ーー完全な電気自動車のフェラーリが登場する可能性もありますか?
「現時点では、電気自動車の技術は十分に成熟していません。顧客の要望に耳を傾けると、最も重要なのはサウンドです。また、現在のところ航続距離の問題もあります。スポーツカーではこれが実に大きな問題となります。電気自動車の後続距離は、急加速や高速走行を繰り返すと非常に短くなるからです。存分に速く走らせることができず、最高速度も200km/hで制限されてしまってはスポーツカーの意味がありません。それらの技術的制約を取り除こうとすれば、バッテリーをたくさん搭載する必要がある、つまりクルマが非常に重くなります。それはもはやスポーツカーではありません」
「しかし、おそらく数年以内には可能性が広がるでしょう。電気自動車が普及するには、大きな段階を超える必要があります」
新しいハイパーカーには新しい技術を
ーーフェラーリは約10年ごとに新しいハイパーカーを発表しています。ラ フェラーリが登場してから7年が経ちました。後継モデルの開発は進んでいるのでしょうか?
「フェラーリが約10年ごとに新しいハイパーカーを発表してきたことは事実です。また、フェラーリはその度に新しいテクノロジーを投入してきたことも事実です。つまり、新しいハイパーカーに投入したいと思えるテクノロジーは何なのかということを考えなければなりません」
ーーモンツァのようなスペシャル・モデルは今後も製作されますか?
「わたしたちが提供するモデルは、4本の大きな柱に分類できます。GT、スポーツカー、イーコナ(アイコン)、そしてスペシャル・シリーズです。イーコナ(モデナはここに位置する)は今後もラインアップが続きます。モンツァだけではありません。モンツァは大きな成功を収めました。この種のモデルでは技術的な制約が少なくなります。モンツァはモーターサイクルのような運転が楽しめるクルマです」
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
「とりあえず増税ね」で50年!? 「世界一高い」自動車諸税&ガソリン税“見直し”正念場 “年収の壁”の向こうの璧
「黄信号だ。止まろう」ドカーーーン!!! 追突されて「運転ヘタクソが!」と怒鳴られた…投稿に大反響!?「黄信号は止まるの当たり前だろ」の声も…実際の「黄信号の意味」ってどうなの?
「緊急車両が来て道を譲らないとどうなりますか」 理由に「『聞こえんかった』は通用するのですか」 譲るのはマナー?義務? 具体的にどう譲ればいいのですか。
“生産版”「“R36”GT-R」公開に反響絶大! 日産の「旧車デザイン」採用&4.1リッター「V6」搭載で「借金しても欲しい」の声! 1000馬力超えもあるArtisan「“和製”なスーパーカー」が話題に
走行中、後ろから緊急自動車が! 譲らないと「違反」に!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?