■なぜLEDに? LED化はデザインにも影響か
クルマのヘッドライトは、かつては暖色のハロゲンライトが多く採用されていました。
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しかし、現在では白っぽく光るLEDライトの採用が増えていますが、なぜヘッドライトはLEDに変化したのでしょうか。
ヘッドライトはクルマに欠かすことのできない重要なパーツで、見晴らしの悪い中で周囲を照らしたり、逆に自車の存在を周知したりする役割を担っています。
そんなヘッドライトですが、かつてと現在とで使われているライトの種類に変化が見られます。
かつてのクルマは、ヘッドライトの光が暖色系でしたが、最近は白色が一般的です。
自動車のライト製造にかかわる企業の担当者は、「最近ではヘッドライトのLED化が進み、かつて活用されていたハロゲンライトはほとんど見られません」といいます。
日本で初めてLEDヘッドライトを採用したのは、2007年に発売されたレクサス「LS600h」とされており、それまではヘッドライトの主流はハロゲンライトやHIDライトでした。
なかでもハロゲンライトは、フィラメントという繊維状の物体が発光するタイプのライトです。
内部にはガスが封入されており、それまで家庭用の電球として多く用いられた白熱電球よりも周囲を明るく照らすことができますが、その分熱を持ちやすいという特性があります。
HIDライトは、非常に明るく、寿命もハロゲンライトに比べて長いのが特長です。
一方でLEDライトは1962年頃に誕生したライトです。発光色の開発に難航しましたが、1996年には白色のLEDライトが誕生し、2007年に家庭用として本格的に普及しはじめています。
LEDライトは、これまでのほかのライトに比べて寿命が長く、省電力で強い光を発します。
そんなLEDライトは現在多くのクルマに活用されていますが、その理由について前出の担当者は「第一として、LEDの大きな特長である長寿命・省電力が大きな理由です」と説明します。
最近のクルマは各機構の電動化が進んでおり、以前と比べて走行時に大量の電力を消費しています。
さまざまな部分で電力を消費するということは、発電するエンジンにも負荷がかかるということです。
そのため省電力であることは不可欠で、クルマの灯火類をLEDに替えることは大きな節電になるといえます。
さらに、担当者はLED化が進む理由について「ヘッドライトのデザイン形状の自由度が増すという点もかなり大きなメリットといえます」としつつ、以下のように説明します。
「従来のライト類は電球自体のサイズも大きく、ヘッドライトに活用すると、どうしてもその形状が丸型やスクエア型になりがちでした。
しかし、LEDはライトひとつひとつのサイズも小型で、例えば細長いデザインにも対応できます」
最近のクルマのヘッドライトを見てみるとシャープなデザインのヘッドライトが多く、例えば2022年1月13日に発売されたトヨタのミニバン新型「ノア」「ヴォクシー」も、ヘッドライトがかなり切れ長にデザインされ話題となりました。
■明るすぎるLEDには注意 ヘッドライトには使用できないことも
このように、最近のクルマのデザインにまで影響をおよぼしているヘッドライトのLED化ですが、実は使用するLEDライトによっては法令違反となる可能性もあるようです。
ヘッドライトの色については規定があり、「道路運送車両の保安基準第2章及び第3章の規定の適用関係の整理のため必要な事項を定める告示」の第24条「前照灯等」では、ハイビーム、ロービームともに「灯光の色が白色又は淡黄色」と定められています。
光の色、いわゆる「色温度」はケルビンという単位で表され、数値が高いほど青みが増します。
つまり、法令に示された「白」のライトを備えるためには、ケルビンの数値が高すぎてはいけないということです。
しかし、ケルビンの具体的な上限値までは法令で定められておらず、色の判断は各保安検査場の検査員の目視によっておこなわれ、明確な数値というよりは、目で見たときの実際の色味が重要となります。
例えば、ひとつの目安となりそうなのが、JIS(日本産業規格)が示すLEDライトの色温度です。
JISでは、3250ケルビンから3800ケルビンを「温白色」、3800ケルビンから4500ケルビンを「白色」、4600ケルビンから5500ケルビンを「昼白色」と分類しており、それぞれ色味は異なるものの、一般的にはこの範囲が「白」として認識されています。
前述したように色の判断は目視でおこなわれているため、厳密に数値の上限を示すことは実質不可能ですが、JISの規格を目安とすると3250ケルビンから5500ケルビンのものは比較的車検に通りやすいと考えられます。
一方で、明確に数値化して規定が定められているのが、「光度」(カンデラ)です。光度については、前出の第24条において以下のように記されています。
「走行用前照灯(ハイビーム)は、そのすべてを同時に照射したときは、夜間にその前方100メートルの距離にある交通上の障害物を確認できる性能を有し、かつ、その最高光度の合計は22万5000カンデラを超えないこと」
なお、ロービームは「すれ違い用前照灯」とされており、最高光度は規定されていないものの「その照射光線が他の交通を妨げないものであり、かつ、そのすべてを同時に照射したときに、夜間にその前方40メートルの距離にある交通上の障害物を確認できる性能を有すること」とされています。
この規定に則って考えると、ハイビームが2灯のクルマでは、ひとつあたり11万2500カンデラの光度が上限となり、ロービームはそれ以下の光度である必要があります。
そんなカンデラの語源は、獣の脂を活用したろうそくである「獣脂蝋燭(じゅうしろうそく)」を意味する「candela(カンデラ)」というラテン語にあります。
そのため、1カンデラはろうそく1本分の明るさと同程度とされており、単純に計算すると22万5000カンデラは、ろうそく22万5000本分となります。
※ ※ ※
市販品のバルブに交換する際は、明るすぎないものを選ぶのが重要といえます。車検に適合しない可能性も考えられため、専門店などで交換作業をしてもらうことが無難といえるでしょう。
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