四半世紀以上前に登場した最初のRSモデルのコンセプトを忠実に受け継ぐ、2台の最新アウディ「RS」アバントが日本に上陸した。ここでは最高の実用性と速さを兼ね備えた稀有な2台の実力を測る。(Motor Magazine2021年3月号より)
アウディのスポーツイメージを担うRSモデル
アウディにとっては、もっとも特別なモデルコードであろうRS、その発祥は1994年に発売されたRS2アバントに遡る。時の80アバントをベースに、ポルシェが設計と生産を担当したフルコンプリートのチューニングモデルは、世界中のエンスージアストの垂涎の的となり、2800台あまりの生産枠は争奪戦となった。
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1980年代に醸成された、アウディの独創性を象徴する技術であるクワトロ、そして商品ラインアップ上の特徴となるアバント、このふたつの個性を徹底的に際立たせるべく企画されたRS2アバントは、関わったポルシェの痕跡が足まわりやミラーなどに見てとれる点もかえってカスタマーの所有欲を煽るとともに、当時のポルシェ911に比肩するパフォーマンスで、アウディのスポーツイメージ向上に大きな役割を果たした。
では果たして、なぜこのようなモデルが企画されることになったのか。時系列的にみれば、直列5気筒エンジンやクワトロシステムの開発を指揮してきたフェルディナント・ピエヒがフォルクスワーゲンの会長に上り詰めるや企てた、アウディへの思い入れから生まれた再生計画の一環、と見るのが筋だろう。
RS2アバントの発売翌年にはTTの素となるコンセプトカーの発表、その後は驚異的なエアロダイナミクスを実現したC5系A6の投入など、目に見えるプロダクトのダイナミックな変革を伴いつつ、アウディがリブランディングを大成功させることになったのはご存知のとおりだ。その新生アウディを支えるひとつの柱として、クワトロを軸としたスポーティイメージの確立という願望があったとすれば、その究極像としてRSが設定されたという成り行きは至極明快だ。
その後、RSシリーズは2000年以降、B5系A4をベースとしたRS4、そしてC5系A6をベースとしたRS6の登場により既定路線化し、現在へと続くわけだが、ラインアップの主軸となるのがアバント、つまりステーションワゴンだ。アウディがクワトロの優位性を示すに好適な、速さと気持ちよさを両立した長距離移動というシチュエーションを想定すれば、確かにユーティリティの高いワゴンボディは相性がいい。ユーザーニーズも一致してか、近年はRS4、RS6についてはアバントのみが用意されている。
両車ともに性能に不足はないRS6アバントは劇的に進化
日本では2020年秋、ベースモデルのB9系A4にビッグマイナーチェンジが施されたが、それにあわせてRS4アバントも時間差なく刷新されたモデルが上陸した。エクステリアは灯火類の形状やグラフィック、エアインテークデザインなどが変更され、インテリアでは10.1インチタッチパネルモニターを採用した最新のMMIが搭載される。
基準車であるA4に対して寸法上の拡幅25mmはとなるが、実物を見るにその存在感は別物だ。こだわり続けるフェンダーのブリスターフィニッシュはもちろんクワトロの源流との関連性を映し出したものだろう。
前型となるRS4アバントの市場投入から約2年と日が浅い日本市場ではその必要を感じないわけだが、この新型ではメカニズム面での更新について、特別なアナウンスはない。搭載されるエンジンはポルシェもパナメーラなどに採用する、アウディが設計主導したEA839系2.9L V6ツインターボだ。
バンク間にふたつのターボユニットを収めるそれは450ps/600Nmを発生。最高出力発生回転域は5700~6700rpmとトップエンドまでしっかりパワーを乗せる一方で、最大トルクは1900rpmから得られるなど、使い勝手にも考慮された特性になっている。組み合わせられるトランスミッションは8速ATだ。
クワトロシステムは通常時に前40、後60の駆動伝達となり、駆動状況やドライブモード設定に応じて最大で前に70%、後に85%の駆動力を配分する。これとは別に後軸側にはスポーツデフが配され、後ろ左右輪を増減速制御することが可能だ。また、対角線上にあるダンパーの油圧制御によりダンピングレートの可変だけでなくピッチやロールの姿勢制御も行うダイナミックライドコントロール付きのスポーツサスペンションも、日本仕様では標準装備となる。
一方、C8系A6アバントをベースとする四代目RS6アバントの、ベースモデルと全幅を75mm違えるその佇まいは、代々のRS6と同じくアウディならではの冷徹さが余って激情と化したかのような只ならなさが感じられる。パンパンに膨らんだホイールハウス内に収められるタイヤは標準でも275/35R21、試乗車はオプションの285/30R22と強烈なサイズで、この拡幅がコケおどしではないことは明らかだ。
エンジンは先代と同じく、ふたつのタービンをバンク間に置くホットVマウントの4L V8ツインターボだが、その中身はEA824系から完全に改められ、ポルシェが設計を主導し同社のツッフェンハウゼン工場で生産されるEA825系となった。パワースペックは600ps/800Nmと、同系エンジンのファミリーにおいてはランボルギーニ ウルスに次ぐハイチューンとなっている。一方で低負荷時の気筒休止システムに加えて48Vのマイルドハイブリッドシステムが採用されており、WLTCモード燃費は9.9km/Lと、S6アバントに対して0.7km/Lの悪化に留められた。
足まわりは専用チューニングを施したRSアダプティブエアサスペンションが標準装、オプションでRS4アバントと同じくダイナミックライドコントロール付きの油圧ダンパーを用いたRSスポーツサスペンションプラスが用意される。加えて、同相1.5度、逆相5度の最大角となる後輪操舵システムも標準装備され、取り回しだけでなく運動性能の向上を果たしている。駆動システムはRS4アバントと同じセルフロッキングデファレンシャルの制御ロジックを持つクワトロで、リアのスポーツデフも標準装備となる。
乗り味はかつてのRSのようなハードさは減り快適性が増した
威圧感たっぷりの見た目の印象をそのままに走り始めると、いずれも拍子抜けするほど扱いやすいことに驚かされた。RS4アバントはベースモデルとの車格差がさほど大きくないことも一因だが、RS6アバントはやはり4WSの効果があらたかで、狭所での小回り能力的なところはRS4アバントにも勝るほど。幅方向では気遣いは要するも、取り回しは思いのほかストレスを感じない。
その4WSは快適性の面でも利として働いているようで、RS6アバントの乗り心地は600ps、そして22インチタイヤというきな臭いスペックを鮮やかに裏切るしなやかさだ。ドライブモードをコンフォート、あるいはオートにセットして走る限り、些細なオウトツを鷹揚にいなしながら至極滑らかに走っていく。大きな入力の受け止めでも跳ね返すような「痛さ」が伝わらないのはエアサスペンションの包容力も奏功しているのだろう。
一方で、コイルサスペンションのRS4アバントの側も持てる力を受け止める設定であることを思えば、望外なほどに乗り心地は整えられている。低~中速域でも外乱による細かなピッチやロールはしっかり丸められていて、高速域では上屋の据わりの良さがしっかりと感じられる。目地や路肩の段差を跨ぐ際にも、ダイナミックライドコントロールが悪さをすることもない。
もちろん両車ともに、バネ下重量を大幅に低減するオプションのセラミックブレーキ(RS4アバントはフロントのみ)を装着していたことは考慮すべきだろう。とはいえ、従来のRS銘柄のイメージからすればこの両モデルの日常域でのライドフィールは驚くほど洗練されている。このところA4、A6、A8と、アウディの非SUV系の乗り心地に感心させられることは多かったが、その好印象がRS4アバントやRS6アバントにも反映されたかのようだ。
ワインディングでの振る舞いはさすがに体躯の利もあってRS4アバントの軽快さや一体感がひときわ際立つかたちとなる。が、ここでも驚かされるのはむしろその巨体をまるで意に介さないRS6アバントの敏捷ぶりだ。
4WSと駆動コントロールの連携に意図的な曲げ感は感じられないものの、確実にコーナーのインをたぐり寄せていく、そして0→100km/hを3.6秒というスーパースポーツ級の瞬発力を持て余させないあたりはまさに、クワトロのなせるところだろう。この点はRS4アバントも然りで、むしろリアデフの差動からくる回頭性の高さなどはこちらの方がより明快に現れる感がある。
ともあれ強烈なのはトラクション能力の高さだ。試乗時の気温は2~3度で路面状況も悪かったため、念入りにペースを調整していったが、危うい挙動をみせることは一切なく、安心してそのパワーを扱うことができた。
かつてのRSシリーズは、その盤石のメカニカルグリップと引き換えに、操舵のフィードバックやアシの動きにもガツガツとそれなりに粗野な感触が伴うクルマだった。あるいは、そのドライさをもって得た、路面をゴリゴリと削り取るようなトラクション能力こそがRSの個性と思えてもいた。
が、新しいRS4アバントとRS6アバントにはそういったトレードオフがおよそ見当たらない。路面から得た情報の中から雑味が綺麗に取り除かれたぶんだけ、その解像度は生々しいものとなっている。
操作系の応答感がソフトタッチになったことは間違いなく、腕っぷしで抑え込むようなドライブフィールが好きなユーザーは物足りなさを感じるかもしれない。だが、上質という項目にフォーカスすれば、大幅に進化を遂げている。ポルシェ911を仮想敵にし続けるかのような猛烈な動力性能をクワトロで安定的に御せるものとし、基準車と変わらぬ居住性や積載力を兼ね備える。
RSシリーズに感じていた、技術で他を圧倒するというアウディの信条は新型にも健在だ。だが、狂気めいた佇まいとは裏腹にその速さの洗練度は格段に高まり、したたかに振る舞えるものになったと言えるだろう。(文:渡辺敏史/写真:永元秀和・井上雅行)
アウディ RS4 アバント 主要諸元
●全長×全幅×全高:4780×1865×1435mm
●ホイールベース:2825mm
●車両重量:1820kg
●エンジン:V6 DOHCツインターボ
●総排気量:2893cc
●最高出力:331kW(450ps)/5700-6700rpm
●最大トルク:600Nm/1900-5000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD(クワトロ)
●燃料・タンク容量:プレミアム・58L
●WLTCモード燃費:9.9km/L
●タイヤサイズ:275/30R20
●車両価格(税込):1250万円
アウディ RS6 アバント(エアサスペンション装着車) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4995×1960×1485mm
●ホイールベース:2925mm
●車両重量:2200kg
●エンジン:V8 DOHC ツインターボ
●総排気量:3996cc
●最高出力:441kW(600ps)/6000-6250rpm
●最大トルク:800Nm/2020-4500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD(クワトロ)
●燃料・タンク容量:プレミアム・73L
●WLTCモード燃費:7.6km/L
●タイヤサイズ:275/35R21*
●車両価格(税込):1764万円
*試乗車にはオプションの22インチアルミホイールを装着。サイズは285/30R22
[ アルバム : アウディRS4アバント/RS6アバント はオリジナルサイトでご覧ください ]
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あまり魅力を感じないな。
和田さんの頃のアウディが一番良かったね。