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フォルクスワーゲン「ID.4 Pro」とテスラ「モデルY RWD」ファミリーユースで選ぶならどっち?

掲載 29
フォルクスワーゲン「ID.4 Pro」とテスラ「モデルY RWD」ファミリーユースで選ぶならどっち?

日本のマーケットでも、電気自動車(EV)の存在感が少しずつ高まってきた。充電設備も増えつつあり、一充電当たりの航続距離も拡大し、選択肢も広がっている。そこで今回は、欧米を代表する最新のファミリーEVをピックアップ。その実用性を検証した。

 日本の自動車メーカーが足踏みをしている間に、海外メーカーは電気自動車(EV)のニューモデルを次々投入し、日本市場を攻略しようとしている。EVが市場に出回り始めた時代は、一充電当たりの航続距離が300km以下のファミリーカーか、500km以上走行可能な大型のラグジュアリーカーに二分されていた。

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 しかしバッテリー技術の進化やユーザーの増加とともに、自動車メーカーも様々な形のEVを商品化するようになった。今回は、ファミリーカーとして人気の最新EV2台を紹介する。

 EV専門メーカーとして、テスラが創業したのは2009年。第1号はロータスベースの2シーターオープンスポーツだった。その後、5ドアセダンや大型SUVを生産し、今回紹介する「モデルY」は5番目の製品となる。テスラは「クルマ造りで」というより「販売したEVが自動車業界の主役になる」ことで、二酸化炭素排出を減らすことができると考えている。だからクルマ造りに対する考え方も既存のメーカーとは大きく異なる。

 例えば、マイナーチェンジの大半が、すでに販売したクルマに対してもPCから実施できるようにしている。また、以前購入したクルマも常にアップデートできるようになっており、ディーラーの収益性などは考えられていない。クルマそのものも趣味性などは考えず、実用性だけを追求している。要はPCやスマホに近い感覚で製品化を進めているのだ。

 それは装備を見てもよくわかる。最新のテスラ車はインパネ中央の画面が大きくなっており、例えば「タイプS」は17インチの大きな画面で、ほとんどすべての操作を行なう。前進も後退も画面をタッチして操作する。「モデルY」も近い将来、モニターが大画面化するだろう。

 一方、フォルクスワーゲン(以下、VW)はドイツの老舗ブランド。国民車を造ることを命題に1936年に創業し「ビートル」「ゴルフ」といったベストセラーカーを企画、開発してきた。VWがEVを製造するに当たって考えたのは、コミューターでもなく高級SUVでもなく、やはり大衆車だった。つまり、このクルマ1台で、日常の足からロングツーリングまでをこなせるファミリーのためのEVが求められるようになると。これがVWにおけるEV開発の大命題なのだ。思想も性格も異なるEV、あなたならどっちを選ぶ?

VWが本気で造った、人にもやさしい電気自動車

フォルクスワーゲン『ID.4 Pro』

Specification
■全長×全幅×全高:4585×1850×1640mm
■ホイールベース:2770mm
■車両重量:2140kg
■総電力量:77.0kWh
■モーター形式:EBJ
■最高出力:204PS/4621~8000rpm
■最大トルク:310Nm/0~4621rpm
■変速機:1段固定式
■一充電走行可能距離:618km
■車両本体価格:648万8000円

EVになっても「ゴルフ」ファミリーに似たフロントデザインを受け継いでいる。ライトユニットは全グレードでLEDを採用。撮影車はマトリックスLEDを装備したIQ Lightを標準装備した。

ボディー側面は「ID」ファミリーに共通するクリーンで力強いデザインをSUVに当てはめている。リアに向かってシャープなラインを描くボディーの形状に加え、大型ルーフスポイラーも効果的。

リアウインドウは大型ルーフスポイラー付き。高い位置にデザインされたテールライトクラスター、リアエンド下部に設けられたディフューザーなどの効果でcd値は0.28を記録。

室内もトランクも広々としたファミリーEV

テスラ『モデルY RWD』

Specification
■全長×全幅×全高:4750×1920×1623mm
■ホイールベース:2891mm
■車両重量:1980kg
■総電力量:75.0kWh
■モーター形式:AC永久磁石同期モーター
■最高出力:前220PS/後300PS
■最大トルク:前240Nm/後300Nm
■変速機:単速
■一充電走行可能距離:605km
■車両本体価格:619万円

フロントエンドからフロントウインドウ、ルーフ、さらにテールにかけてのスムーズな曲線と若干、反りかえったテールエンドのデザインはすべて空力低減のため。高剛性の構造は五つ星評価。

全長はID-4より165mm、ホイールベースは約120mm長く、全高は約20mm低く、全幅は70mm広いというテスラのプロポーション。ボディーは大きいのだが、重量はテスラのほうが160kgも軽い。

テスラのリアウインドウも天地の高さが薄いのでルームミラーを通しての後方視界は限られるが、車外カメラによる360度ビューがあるので、ルームミラーの不便さは相殺されているのだろう。

デザインや質感にまでこだわった『ID.4』、あくまで実用性重視の『モデルY』

フォルクスワーゲン『ID.4 Pro』

エンジンルーム

フロントのボンネット下には、モーター以外に補機類や変速機などが収まっており、EVでもエンジン車と同じような設計となっている。

運転席と各種装備

シフトレバーもなくなり運転席周りはすっきりしている。インパネ中央には15インチのコントロールパネルを配置。やや使いづらい。

シートスペース

前席の着座位置は低め。後席もやや低め。足元はフラットで、前席の下にツマ先も入るので、大人が3人座れるぐらい広い。

ラゲージスペース

奥行き、幅ともにたっぷりある荷室スペース。充電ケーブルなどは深さ15cmのサブトランクに収納できる。エントリーグレードの床は低い。

【 ココがポイント!】
シフトレバーも独自のスタイルを採用


シフトレバーは運転席のメーターパネル右側にありダイヤル式を採用。シフトはD/B/N/Rでダイヤルを回すとシフトする。Pは側面にあるスイッチを押し込んで操作する。

【 ココがポイント!】
細部までこだわり抜いたデザインと質感

VWに限らず、欧州車の内外装は色もデザインも凝っているものが多い。室内もシートには背もたれにIDのロゴが入っていたり、ハンドルもスポークにメッキを施してある。

テスラ『モデルY RWD』

エンジンルーム

後輪駆動車のフロントボンネット下には、幅35cm、奥行き70cm、高さ30~40cmのラゲージスペースがある。これもEV専用設計の特徴。

運転席と各種装備

実用性を追求したインパネは目の前にわずかな木目プリントはあるが、色分け、装飾系パーツ、意匠デザインは一切見られない。

シートスペース

運転席周りはシンプル。変速シフトはコラムの右に備わっているレバーで行なう。R/N/Dの3ポジションとレバー頂部のPのみ。

ラゲージスペース

後部の荷室はオプションで2名分のシートが備えられるほど広い。さらにその下には深さ約3.6cmのサブトランクが全面に設けられている。

【 ココがポイント!】
すべての操作を大画面液晶で行なうという潔さ

インパネは15インチ液晶パネルのみ。ここで装備を調整したり、メカニカルな設定を変えたりすべての操作を行なう。最新モデルの「モデルS」ではシフトもこの画面で行なうようになった。

【 ココがポイント!】
カードキーでドアの施錠、解錠、運転のすべてを管理

「モデルY」はカードキーをBピラーにかざしてドアのロックを解除し乗り込む。このカードをセンターコンソールに置くと運転の準備が完了。あとはシフトレバーをDにしてアクセルペダルを踏むだけ。

どちらもファミリーユースで十分使える内容

フォルクスワーゲン『ID.4 Pro』

[運転性能]スタートから100km/hまでの加速は7秒台で、それほど速いわけではない。エントリーモデルの「Lite」のほうが軽快な印象。17点

[居住性]前席の着座位置はやや低めで頭上のスペースは十分。後席も着座位置は低めで広い。足元はフラットで荷室も広い。18点

[装備の充実度]VWの最新、最先端の運転支援システムを標準装備。充電に関してはポルシェ、アウディと共通の施設を利用できる。19点

[デザイン]レザーやデコラティブパネルを採用し、ペダル類も遊び心あるデザイン。テールランプにも細かい模様を施している。19点

[爽快感]「Pro」はトルクが太く、高速走行ではやや気を使う。その点「Lite」は車重も軽く、軽快なハンドリングを楽しめる。18点

[評価点数]91点

テスラ『モデルY RWD』

[運転性能]0→100km/h加速は5秒台。これでもグレードは中位。最速モデルは0→100km/hが3秒。ハンドリングよりスピード制御を重視。18点

[居住性]実用性を重視した設計なのでシートはソファ感覚で座れる。床もフラット。後席のドアウインドウは全開しても1/3程度残る。18点

[装備の充実度]オートパイロットを標準で装備。オーディオ類も充実している。プレミアムインテリアは有料オプションで用意。18点

[デザイン]車両全体のデザインコンセプトは第2弾の「モデルS」から同じ。最近では純白の内装などおしゃれでエコ素材の内装も。18点

[爽快感]軽快感は少ないがハイウエーをクルージングする時の安定感はアメリカ車的。楽しさよりも堅実にクルマを運転する感じ。18点

[評価点数]90点

取材・文/石川真禧照

※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2023年11月30日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。

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みんなのコメント

29件
  • yk1********
    >マイナーチェンジの大半が、すでに販売したクルマに対してもPCから実施できる
    意味不明。アップデートのことならPC(パソコン?)とか関係ない。車両にOTAで降ってくる。

    >ディーラーの収益性
    ディーラーは存在しない

    >タイプS
    モデルS

    書いてる諸元は、RWDじゃなくロングレンジのもの
  • yam********
    日本で考えるのであれば、NACS規格のスーパーチャージャーが使える時点でテスラの勝ち。
    BEVの基本性能でもテスラモデルYの圧勝。
    SDVとしての性能でもテスラモデルYの圧勝。

    それ以外は、この記事を参考にお好みでという感じだと思います。

    VWのID.4は地元のドイツでもテスラモデルYに相当押されていて、減産を余儀なくされています。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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