ブランド初の純EVは2026年の予定
ベントレー・ベンテイガ・ハイブリッドで約800kmを走る、今回の旅。筆者がクルーまでの道で特に気に入ったのが、ナビゲーションのルートに合わせて、ベンテイガがちょっとした気使いをしてくれることだった。
【画像】ブランド初PHEV ベントレー・ベンテイガ HV 最新のコンチネンタルGT スピードも 全72枚
制限速度を超えそうだったり、ブレーキングが遅れそうな時に、アクセルペダルへトントンと振動を与えてくれる。ドライバーをアシストしていると理解して以降、この小さな仕掛けに好感を抱いた。気に入らなければ、オフにもできる。
パワートレインのモードには複数の選択肢があり、ハイブリッドがベストの効率を得られる。ベントレー・モードは、最も乗り慣れた質感が得られる。どちらも印象は良い。
クルーまでのドライブと技術者の話を聞いて、ベントレーは2つの目標達成に向けた準備が整っていることを実感した。2026年までにブランド初の純EVをリリースすることと、2030年までに完全に純EVへシフトすることだ。
フォトグラファーのマックス・エドレストンと筆者は、10時半に次の目的地へ出発。ここからは約300kmの運転になる。心地良い太陽と、柔らかそうな雲。ベンテイガと、気の知れた仕事仲間と一緒だから、まったく問題ではない。
駆動用バッテリーを満充電にし、グレートブリテン島を西から東へ走る。至って順調に、英国東部のエセックス州へ到達した。
もちろん、その安楽さを生んでいた中心的存在は、ベンテイガ・ハイブリッド。有料のM6号線を逸れ、途中で一般道のA14号線に入る。さらにM11号線を南下し、P&Aウッド社を目指す。
息を呑む加速力で動力性能に不足なし
交通量の少ないM6号線では、全開でのダッシュ力とエンジンサウンドを確かめるため、1度フルスロットルを与えてみた。残りのエネルギーには余裕があると判断したためだ。
巨大なSUVが、息を呑む勢いで加速する。8速ATは、ピタリと6200rpmでシフトアップする。パワートレインは、常に静かで滑らか。余力の大きさをうかがわせる。
アクセルペダルの反応は迅速というほどではないものの、V6エンジンをアシストするように、駆動用モーターが豊かなトルクを発揮する。動力性能に不足はまったくない。
市街地を30km/hから50km/h程度で流している時も一興。駆動用バッテリーの残量がないとメーターパネルに表示されていても、限定的に電力を展開してくれる。
P&Aウッド社のジョルジーナ・ウッド氏とは、14時半の約束だった。ベンテイガ・ハイブリッドは、予定の10分前に到着した。オドメーターが出発から513kmを走ったことを教えてくれる。
ここまでの燃費は12.0km/L。出発直後は、106.2km/Lという驚くような数字が表示されていた。駆動用バッテリーは空で、EVモードで走れる距離は残っていない。
到着と同時に、温かいお茶が出てきた。P&Aウッド社は落ち着ける場所だ。スタッフはとても優しい。グッドウッド・サーキットでのイベントへ、14台のクルマを準備しているという。そのうちの7台は、オークションで販売されるそうだ。
「イベントで、わたし達のクルマがサーキットを走る様子を眺めるのが、大好きなんです」。とジョルジーナが話す。
美しく希少なRタイプ・コンチネンタル
P&Aウッド社には、広いワークショップが備わっている。真新しいベンテイガ・ハイブリッドを移動させ、1950年代のベントレーRタイプ・コンチネンタルと並ぶように駐車した。
ワークショップには複数のクラシックが止まっていた。1台は地金が露出し、徹底的なレストア最中の状態。もう1台は、別のショップでレストアされた内容を、再評価している途中らしい。もうじき届けられる予定のクルマもある。
Rタイプのコンチネンタルは、美しく希少な、ベントレーを代表するクーペの1つだ。その頃の英国車といえば、スタンダード10やヒルマン・ミンクスなど。さぞかし、素晴らしく感じられたことだろう。時間を忘れたように見入ってしまった。
ちなみにクラシックをお探しなら、Rタイプ・コンチネンタルは案外お買い得だったりする。ジョルジーナも、現在の価格を現実的な水準にあると評価している。といっても、お手頃ではないけれど。
状態が良いものでも、60万ポンド(約1億80万円)から70万ポンド(約1億1680万円)で探せるという。数年前なら、100万ポンド(約1億6800万円)ほどしていた。
筆者もRタイプ・コンチネンタルは好きな1台だ。もし買うなら、モデルに精通したP&Aウッド社から購入するだろう。手の届くところにはないとしても。
もっとゆっくりしていたかったが、午後4時に再びクルーに向けて出発。彼女たちとは、グッドウッド・サーキットのイベントで再会するはずだ。
ベンテイガ HVでの800kmは喜びの連続
今回の旅をフォルクスワーゲンやトヨタ、ルノーで走っていれば、もっと我慢を強いられたかもしれない。しかし、ベンテイガ・ハイブリッドでの800kmは喜びの連続だった。
クルーまでの距離が200km、100kmと短くなる毎に、旅の終わりを惜しみ始めた。長距離を快適に過ごせる能力は、従来どおり。PHEVのパワートレインは穏やかで、クリーミーなささやきを放つ程度に過ぎなかった。
トリップメーターの走行距離は788km。クルーまで34kmというところで、駅に立ち寄りフォトグラファーのエドレストンを降ろす。彼は翌日、別の場所で早朝から仕事があるらしい。
時刻はもうすぐ20時。洗練されたクルマでの長距離旅行という体験に、感謝したい気持ちになった。
5時半に出発し、822kmを走り、2か所の目的地で合計3時間の会話を楽しんだ今回の旅。最終的な平均燃費として、11.2km/Lという数字が示された。クルーのホテルで、心地良い眠りにつこうとも考えた。
だが、まだ新鮮な気持ちが残っていた。75kmほど走れるガソリンも残っていた。ラジオからは、活気良くサッカー試合の中継が流れている。ベンテイガ・ハイブリッドは、もう少し走りたいと静かに訴えているように思えた。
筆者はホテルを諦め、210km南の自宅を目指した。ベッドに横になれたのは、午後11時過ぎ。長い1日になったが、最高の1日だった。
ベントレー・ベンテイガ・ハイブリッド(英国仕様)のスペック
英国価格:15万5000ポンド(約2588万円)
全長:5125mm
全幅:1998mm
全高:1728mm
最高速度:254km/h
0-97km/h加速:5.2秒
燃費:28.7km/L
CO2排出量:79g/km
車両重量:2620kg
パワートレイン:V型6気筒2995ccターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:13.3kWh(実容量)
最高出力:449ps/5300-6400rpm(システム総合)
最大トルク:71.2kg-m/1340-5300rpm(システム総合)
ギアボックス:8速オートマティック
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