2019年7月9日に発売されたダイハツ新型「タント」には、前後ドアの間に柱がない「センターピラーレスドア」が採用されています。乗降性を高めるのに有利なものの、ほかのクルマにおいて採用例はごく稀な状況です。
ボディに柱がない部分があるということは、衝突安全への影響が懸念されます。クルマに求められる安全性能が年々厳しくなっていくなか、問題ないのでしょうか。
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前後ドアの間に柱がないダイハツ新型タント ダイハツ新型「タント」に採用されているセンターピラーレスドア(ダイハツはミラクルオープンドアと呼称)は、助手席側に装備されており、これによって歩道側からの乗降性が向上しています。
2007年に発売された2代目タントから採用されており、タントのアイデンティティともいえる装備です。
しかし、ボディに柱が無いことで安全面で懸念を持つ人もいることでしょう。とくに、メインターゲットにファミリー層が含まれているタントの場合は、側面衝突を受けた場合の後席の安全性が気になります。
センターピラーレスドアについて、ダイハツは次のように説明します。
「『ミラクルオープンドア』では、助手席側のドア間にある柱をフロントドア後部とスライドドア前部に内蔵することで、乗り降りしやすい構造を実現しています。
ドアに内蔵された柱やその周辺の部位には、ハイテン材(高張力鋼板)を最適に配置しました」
センターピラーレスドアの場合、柱は存在していないのではなく、前後のドアに内蔵されていているから問題ないという訳です。
ドア周辺に配置されたハイテン材とは、一般的に用いられる鋼板より強度を向上させた鋼板のことで、用いることによって同じ厚さの鋼板でもより高い強度を確保することができます。
ダイハツによると、ミラクルオープンドアを採用した助手席側においても、運転席側と同等の衝突安全性が確保されているとのことです。
センターピラーレスドアが採用される背景にはさまざまな理由が クルマにおいてセンターピラーレスドアは珍しい存在であるものの、過去にはいくつか採用例があるほか、現在新車で購入できるクルマのなかにも、タント以外でセンターピラーレスドアが採用された例があります。
ホンダN-VANのドアを開けた様子 タント以外に存在する、国産現行モデルでセンターピラーレスドアが採用されたクルマは、ホンダの軽商用車「N-VAN」です。タントと同様に、助手席側のセンターピラーがドアに内蔵されています。
このクルマがセンターピラーレス構造を採用した主な理由は、商用車において重要な荷物の積載性を向上させるためです。
従来はバックドアを開けることでしか載せられなかった大型の荷物を、助手席側ドアから載せることが可能となります。歩道側から載せることが可能となり、実際の道路環境における積載時の安全性も高まったといえるでしょう。
一方、乗降性や積載性以外の理由でセンターピラーレスドアを採用したクルマもあります。
2019年時点でロータリーエンジンを搭載した最後の量産車となっているマツダ「RX-8」は、運転席側および助手席側に観音開きのドア「フリースタイルドア」が採用されていて、タントやN-VANと同様にドアへ柱が内蔵された仕様となっていました。
RX-8でセンターピラーレスドアが採用された理由は、本格スポーツカーであることと大人4人が快適に移動できることを両立させるためです。
多くの2ドアスポーツカーは定員が4人の車種であっても、後席の居住性が悪いクルマが多く存在します。
一方、後席のスペースを拡大して、後部ドアも付けて、と対策すると、そのクルマはスポーツカーではなくスポーツセダンに変化してしまいます。ホイールベースも長くなり、ハンドリングにも影響が生じるのです。
そこで、スポーツカーの俊敏さとセダンの快適性を解決する手段として、RX-8では観音開きドアが採用されました。
フロントドアが開いている時だけ開けることができるリアドアは、セダンタイプのクルマと比べると圧倒的に小さく、動力性能への影響も最小限となっています。
※ ※ ※
採用例がごく稀となっているセンターピラーレスドアですが、用いられているクルマを見ると、明確な目的を持って採用されていることがわかります。
自動車メーカーは、それぞれのクルマに明確なターゲット層やコンセプトを持たせて、ユーザーにより喜んでもられるクルマを作るべく、日々開発をおこなっているのです。
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