ビッグマイナーチェンジを受けたアウディのミドルクラスSUVの「Q5」に、小川フミオが試乗した。アウディらしい1台、と評する。
マイルド・ハイブリッド・システムを搭載
アッパーミドルクラスのSUV、アウディ「Q5」は、ファントゥドライブなSUVを探しているひとなら、いちど試してみてもらいたい1台だ。2021年2月8日に、日本でも第3世代が発売されたばかりで、今回乗ったのはディーゼルの「Q5 40 TDI quattro」。よく出来たモデルだった。
4.68mの全長に1.6m超の全高のボディは、たとえば東京の市街地でもサイズをもてあますことはあまりなさそう。外寸に比しての室内空間の効率も秀逸。扱いやすいサイズと余裕ある居住性が両立している。
エンジンは1968cc直列4気筒DOHCディーゼルターボ。インタークーラーつきで、150kW(204ps)の最高出力と400Nmの最大トルクを発揮する。さらに、今回は小型電気モーターを備えるマイルドハイブリッドであるのが注目点だ。
マイルドハイブリッドは、いまの欧州プレミアムクラスの”常識”になりつつある。なぜかというと、欧州委員会よる排ガス規制のせいなのだ。CO2排出量規制が強まるなか、発進時などアクセルペダルを強く踏みがちな場面で電気モーターによってトルクを積み増しするのがマイルドハイブリッド。これで燃費がかせげる。
アウディのセダンのような走り
じっさい、Q5 40 TDI quattroは、じつにスムーズに発進する。最大トルクは1750rpmから発生。なので、アクセルペダルを踏み続けて、エンジン回転がそこに達すると、こんどはエンジンの太いトルクバンドがさらなる加速を引き受ける。いってみれば2段階の加速。このときのパワフル感が快感だ。
いわゆるディーゼルノックもほとんど聞こえない遮音対策の高さも手伝って、さっと5000rpmまでまわるときのフィールもよく、ディーゼルエンジンとは思えないほどだ。振動もほとんど感じられず、まるでガソリンエンジンのようななめらかさ。プレミアム感をしっかり出している。
4WDのドライブトレインは、「AWDクラッチ」を備えたクワトロシステムだ。低負荷時は前輪駆動となり、効率を高めるシステム。アウディは“ウルトラクワトロ”などと名づけて、いまの「A7スポーツバック」あたりから、ラインナップへの採用を拡大してきた。4WD化に伴う重量増は避けられないものの、Q5 TDIの燃費は、WLTCモードでリッター14.5km/Lだから、長距離移動もぴったりである。
太めの握りをもったステアリング・ホイールはやや重めの設定。操舵に対して車体の反応はすなおで、ロールは抑えられている。SUVのすがたをした「A4」や「A6」といったアウディのセダンを運転しているような気がするほどだ。
乗ったのはややスポーティな設定のダンパーを組み込んだ「S line」の金属バネ仕様(エアサスペンション仕様もある)。
硬すぎず、また、ゆっさゆっさと揺られるようなこともなく、ヨンクというよりSUVを求めているひとには、ぴったりなはずだ。
ドイツ車ならではの“実用主義”
室内は、おなじみのアウディの世界観でデザインされている。合成樹脂のパーツもクオリティが高い。ぱっと見には、ややおもしろみに欠けると思われるかもしれないものの、日常的に使っていると機能主義的であつかいやすい。
S lineには専用の、サイドサポートが張り出したスポーツシートがそなわる。これもアウディに多少なりともくわしいひとには、おなじみといえるパーツだ。中央部は人工スウェード張りで、座り心地もよく、コーナリング時のサポートにもすぐれる。アウディがずっとセリングポイントにしてきた、ドイツ車ならではの“実用主義”がいいかたちで出ている。
フランス車の場合、色使いも造型もあたらしさを演出しようとして奇をてらったりするかもしれない。
それに対しQ5は、あくまでも使い勝手を優先。私はこのQ5には、操作性がよく、きちんと組み付けられたパーツで構成された室内がよく合っているとかんじられるのだ。
後席も充分なスペースが確保されているし、スライド&リクライニング機構まで備わる。ラゲッジルームも広い。
SUVとして、どこにでも安心して乗っていけるという性能が、十全ともいえるほどのかたちで実現しているクルマ。それがQ5であると思った。
Q5 40 TDI quattro S lineの価格は739万円。標準サスペンションの「アドバンス」は681万円だ。また、同時発売された2.0リッターガソリンエンジンの「45 TFSI quattro」は730万円からになる。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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