4代目のノア・ヴォクシーが2022年1月に登場した。先行受注から大人気で、既に納期は半年待ち、長いものでは1年近くになると言われている。
このノア・ヴォクシーの勢いを止める存在として期待されているのが、ステップワゴンだ。5月26日に発表を控え、販売店では既に先行受注がスタートした。
下剋上なるか! ほぼ同価格!! 皇帝アルファード廉価仕様vs新型ヴォクシー最上級仕様 買うならどっち?
2022年上半期にフルモデルチェンジを迎えるノア・ヴォクシーとステップワゴン。その差はどこにあり、ユーザーはどちらを選ぶのか。販売現場の動向から分析していく。
文/佐々木 亘、写真/TOYOTA、HONDA
■価格や仕様はほぼ互角
2022年1月登場のトヨタ新型ノア/ヴォクシー(写真はノア〈Zグレード〉)
ノア・ヴォクシーは、あらゆるユーザーのニーズに対応できる布陣だ。ノアには、ノーマルタイプを3グレード、エアロタイプを2グレード準備。さらにアクの強いヴォクシーに2グレードを用意する。合計7タイプで、車両本体価格は267万円~389万円だ。
先行注文を受け付けているステップワゴンは、シンプルに体系をまとめてきた。グレードは大きく分けて2つ、ベースとなるAirと、上級モデルのスパーダとなる。スパーダには、プレミアムラインという最上級グレードを用意する。車両本体価格は299万8600円~384万6700円だ。
■クルマの魅せ方が大きく違う? 販売現場の空気感
トヨタとホンダの販売現場を、先行受注期間で比べてみよう。
ノア・ヴォクシーのエクステリアと同様に、押しが強いのがトヨタ販売店だった。先行受注の段階では、エクステリアデザインが伏せられた状態であったが、ノア・ヴォクシーに設定されるS-G・S-Zを中心に、前のめりの販売が目立つ。(発表後の現在もその姿勢は変わらない。)
営業マンは自信に満ち溢れており、クルマの姿は見えずとも、「任せておけば安心だな」と不思議な感覚になれたのが印象的だった。
対するステップワゴンのホンダ販売店は、丁寧に売りの活動をしている。メーカーが「新型ステップワゴンは、(ミニバン市場全体に対して)30%のシンプルで自然な価値観に基づいてデザインされた」と話す通り、販売にも押しの強さは見えない。
先行予約受注中のホンダ ステップワゴンはAIR(左)とスパーダ(右)を用意。さらにスパーダには最上級グレードのプレミアムラインもある
カタログや展示車こそないものの、エクステリア・インテリアの写真は揃い、情報のほとんどは端末内に入っている。ノア・ヴォクシーのような「開けてびっくり」という感じは全くなく、十分な検討をして先行注文が出来る状態だ。
それにしても販売に迫力や勢いがないのがホンダサイド。押され弱いユーザーは、トヨタ側へ引きずり込まれそうである。
新型ステップワゴンは良い仕上がりだ。それだけに、もう少し販売の積極性が欲しいところ。大きな買い物をするユーザー目線で考えると、ある程度の派手な魅せ方も必要なのではないか。
■ノアを選ぶべき理由がボディカラーに見えた
ミニバンには珍しい赤(レッドマイカメタリック)を用意するノア
筆者が感じた選択ポイントの1つに、ボディカラーがある。
ミニバンの車体色はダークトーンが主流で、黒や青系が複数色あり、白が加わる程度だ。ヴォクシーとステップワゴンは、王道のボディカラーが並んでいる。その中でノアには、赤(レッドマイカメタリック)が設定されているのだ。
寒色ばかりのミニバンで、赤を選べるのは嬉しいところ。筆者が赤好きというひいき目はさておき、どのクルマを選ぶかの決め手が、ボディカラーにあるかもしれない。ここには、ノアを選ぶべき理由が、しっかりと見える。
■ノア・ヴォクシーにかけられた数字の魔法
写真のノア(S-Z・HEV)は残価率の高さが魅力。同程度の金額・グレードで比較する場合、残価率の違いも見逃せない
ユーザーが購入車両を選択する際の大きな理由に「価格」が挙げられるだろう。最近では、車両本体価格よりも、ローンの月々支払額を重視する傾向が高くなっている。
こうしたケースでは、残価率の高さが有利に働くことが多い。
ノア・ヴォクシーの残価率は、販売店によって前後するが、概ね3年残価率が60%、5年でも50%程度。例えば、ノアS-ZのHEV(367万円)では、5年後に183万円が据え置かれる。
一方のステップワゴンは、3年50%、5年で35%程度となる。スパーダ(364万1000円)で、5年後の据え置き金額は127万円。ノアとの差は50万円を超える。
ほぼ同金額で同仕様になるノア・ヴォクシーとステップワゴンを選ぶ際に、この据え置き金額の差は大きい。月々の支払い額は、ノア・ヴォクシーが圧倒的に低く(残価設定ローンの場合)、車種選択における十分な決定打となりそうだ。
商品力は甲乙つけがたく、デザインなどもそれぞれの好みになるだろう。ただ、ノア・ヴォクシーは広い選択肢や、買う気にさせる数字の力がある。
納期は、ノア・ヴォクシーが1年程度を見込むが、ステップワゴンは人気のスパーダでも8月には届く(2022年3月1日現在)。現状では早く来るからとステップワゴンを選ぶこともあるとは思うが、こうした状況がいつまで続けられるだろうか。
両車の比較では、まだ決定を下していないユーザーが多く、本格的な勝負が繰り広げられるのは6月以降となりそうだ。ホンダミニバン背水の陣として挑むステップワゴン。スペックではなく魅せ方に工夫を凝らし、ノア・ヴォクシーに強烈なパンチを入れたいところだ。
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