愛車を見せてもらえば、その人の人生が見えてくる。気になる人のクルマに隠されたエピソードをたずねるシリーズ第44回。前編は、俳優の鶴田真由さんが、初めて購入した愛車と久しぶりに対面した!
赤いカブリオレに乗りたい!
撮影用のBMW3シリーズカブリオレの屋根を開ける方法がわからずに撮影スタッフが四苦八苦していると、俳優の鶴田真由さんが「あれ、そんなに複雑でした?」と、首をかしげながらクルマに近づいた。
そして、「確か、フロントガラスのところのフックを外して、後ろのフタを開けて幌をしまう構造だったはずです」と、にこやかにアドバイスを送った。
1989年型のBMW320iカブリオレが、鶴田さんが所有したはじめてのクルマだったのだ。
「通っていた高校は大学進学に受験がなかったので、高校3年生になると誕生日が近づいたら教習所に通う学生が多かったです。いま思うとすごく生意気なんですけれど、期末テストが終わる日に学校の近くまでクルマで来る人がいて、テストが終わるとそのまま遊びに行って季節ごとの休みを過ごす、みたいなことをやっていましたね」
ただし、高校生の時点ではまだ自分のクルマは持っておらず、もっぱら実家のクルマに乗っていたという。
「高校生のときにはすでに事務所には入って仕事をしていましたが、クルマを買えるほどではなかったです。実家が鎌倉だったので、免許を取った当時は実家のクルマで、葉山とかの海岸線をドライブしました。まだ19歳だったのか、それとも20歳になっていたのか、仕事も増えた頃に、赤いカブリオレに乗りたいと思ったんです。それで知り合いのディーラーの人に探してもらって、中古のBMWに乗るようになりました」
かつてご自身が乗っていたのとおなじ型の3シリーズカブリオレを懐かしそうに見つめる鶴田さんに、このクルマで気に入っていたのはどこなのかを尋ねた。
「あまり媚びたようなデザインが好きじゃないんですよ。シンプルで、余計なものが付いてないデザインが好きです。いま、あらためてBMWのデザインを見て思ったんですけれど、外観もインテリアも機能的で飾り立てていないですよね。屋根が開くところはもちろんですが、潔い形もすごく好きでした。さすがに昼間に屋根を開けると日に焼けるので、夜、こっそり幌を開けて乗っていましたね」
鶴田さんが乗っていた3シリーズは、1982年から1990年まで生産された第2世代。クルマ好きの間では、“E30”というコードネームで呼ばれるモデルだ。1990年にフルモデルチェンジを受けたけれど、カブリオレとツーリング(ステーションワゴン)については後継モデルが登場するまで、しばらく生産が続けられた。
最近はモデル名と排気量の相関がわかりにくいけれど、当時はわかりやすく、320iは排気量2.0リッターのエンジンを搭載していた。しかもライト・シックスと呼ばれた直列6気筒エンジンで、「2.0リッター直6」という言葉の響きは、エンジンのダウンサイジング化が進む現代においては贅沢に聞こえる。
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こうして鶴田さんのもとにやって来たのは、シルバーのメルセデス・ベンツSL320。R129というコードネームで呼ばれる第4世代だ。
BMW320iカブリオレから乗り換えて、BMWとメルセデス・ベンツの違いを鶴田さんはどのように感じたのだろうか?
「BMWは相棒という感じだったのに対して、メルセデス・ベンツはすごく優秀な感じがしました。BMWが中古でベンツが新車だったから年式の違いもあったかもしれませんが、SLは、自分の感覚と車の動きに時間差がなかったです。思い描いている運転に車がピタッと寄り添ってくれる感じがしました」
こうしてSL320を気に入った鶴田さんは、約10年にわたってこのクルマに乗り続け、2006年に第5世代のメルセデス・ベンツSL350に乗り換える。外装はブラック、インテリアカラーはホワイトを選んだ。
「実はこのクルマ、うちでよく預かっていたワンちゃんに顔がそっくりだったんです(笑)。トッズという名前の犬で、目がくりっとしていて品の良い雰囲気が似ていたので、いつもに増して擬人化(擬犬化)して愛でていました。」
ただし、このクルマには2年ほどしか乗らなかったのだという。
「引っ越しをすることになって、新しいマンションには駐車場が1台分しかないとわかったときに、夫のクルマを残すのか、私のクルマを残すのかの選択を迫られたんですね。そのときにラフでかっこいい夫の車を残すことにしたんです」
少し大げさにいうと、当時の鶴田さんはライフスタイルの転換点を迎えていたのかもしれない。後編では、次のライフステージへ向けて鶴田さんが選んだクルマを紹介したい。
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【愛車の履歴書 バックナンバー】
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Vol2.野村周平さん 前編/後編
Vol3.宇徳敬子さん 前編/後編
Vol4.坂本九さん&柏木由紀子さん 前編/後編
Vol5.チョコレートプラネット・長田庄平さん 前編/後編
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Vol43.勝地涼さん 前編/後編
文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) ヘア&メイク・冨沢ノボル スタイリング・間山雄紀(M0) 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
やはり良い車には乗って置くべきなんだな。