■テンロクFFスポーツコンパクトを振り返る
現在販売中の国産コンパクトカーは、1.5リッター以下のエンジンを搭載しているモデルがほとんどです。なかには1リッター未満のモデルも存在します。
これは日本の税制に沿ったものでで、1.5リッター以下、1リッター以下というのが、自動車税の区分だからです。
一方で、かつては1.6リッターエンジンを搭載したFFコンパクトカーが多数存在し、激しいパワー競争が繰り広げられていました。
そこで、1.6リッターエンジンを搭載した往年の高性能FFコンパクトカーを5車種ピックアップして紹介します。
●トヨタ「カローラFX」
1984年にトヨタ「カローラ」の派生車として発売された「カローラFX」は、トップグレードの「GT」は1.6リッター直列4気筒DOHCの「4A-GELU型」エンジンを搭載し、欧州のハッチバック車のような洗練されたスタイルでFF派から人気となりました。
搭載された4A-GELU型エンジンは、「AE86型 カローラレビン/スプリンタートレノ」と同スペックで、最高出力130馬力を6600rpmで発揮する高回転型ユニットです。
同時期のライバルといえばホンダ「シビック」で、1.6リッター直列4気筒DOHCエンジンを搭載する「Si」グレードは、ロングストロークにより中低回転域のトルクが高いのが特徴で、カローラFX GTはもちろんレビン/トレノをも脅かす存在となります。
そして、カローラFXやレビンが参戦した1980年代後半の全日本ツーリングカー選手権にシビックSiが投入されたことで、1993年に同レースが終焉するまで1.6リッタークラスにおけるトヨタ対ホンダの熾烈な争いが繰り広げられました。
●ホンダ「シビックSiR」
1989年にホンダは可変バルブタイミングリフトシステム「VTEC」を開発し、自然吸気ながら1.6リッターで160馬力を発揮するエンジン「B16A型」を「インテグラ XSi」に搭載します。
そして、この1.6リッター最強のエンジンを、インテグラよりも軽量な4代目「シビック」に搭載した「SiR」が発売され、スポーツドライビングを好むユーザーに幅広く受け入れられました。
B16A型は、当時の市販車では驚異的ともいえる8000rpmという回転数を許容したことで、スピードに魅せられた若者たちを虜にします。
ハイパワーかつ高回転型のエンジンを搭載したシビックSiRは、当時常勝を誇っていたホンダF1や、全日本ツーリングカー選手権に出場したことで、シビック=スポーツモデルという図式が、世間一般により浸透していきました。
●日産「パルサーセリエ/ルキノ VZ-R・N1」
1978年に日産「チェリーF-II」の後継車として登場した「パルサー」に、1990年には世界ラリー選手権へ出場するためのベース車として「パルサーGTI-R」が追加されるなど、高性能モデルを展開します。
そのなかでも、1997年に発売された「パルサーセリエ/ルキノ VZ-R・N1」は、車名にある通り「N1」カテゴリーのレースで勝つことを目的に開発されました。
N1マシンはレギュレーションで改造範囲が最小限に抑えられており、ベース車のポテンシャルがそのままレースの成績を左右することになります。
そこで、打倒ホンダ「シビックタイプR」を目標に、日産とオーテックジャパンがタッグを組み、パルサーセリエ/ルキノ VZ-R・N1を開発。
搭載されたエンジンは1.6リッター直列4気筒DOHCの「SR16VE型」で、最高出力はクラストップの200馬力を達成しました。
さらに、1998年には「パルサーセリエ/ルキノ VZ-R・N1 VersionII」を発売し、シャシ性能を向上するとともに車体の軽量化を図り、さらに戦闘力を上げます。
しかし、実際のレースではシャシ性能で勝るシビックタイプRにコーナリングスピードで分があり、打倒とはならなかったようです。
なお、パルサーセリエ/ルキノ VZ-R・N1、同VersionIIともに限定車で、合計500台しか販売されず、いまではかなりの希少車となっています。
■意外と知られていないダイハツの1.6リッターホットハッチとは!?
●三菱「ミラージュ サイボーグR」
現行型の三菱「ミラージュ」は初代から数えて6代目にあたり、新興国向けエントリーカーとして開発されたため、スポーティなグレードは存在していません。
しかし、歴代のミラージュのなかには、高性能エンジンを搭載したモデルが存在しました。
1991年に発売された4代目ミラージュに、翌1992年、ホンダのVTECに対抗すべく、「4G92型」1.6リッター直列4気筒の「MIVEC」エンジンを搭載した「ミラージュ サイボーグR」が追加されます。
三菱が開発したMIVECはVTECと同じく可変バルブタイミングリフトシステムで、4G92型の最高出力は175馬力を誇り、モータースポーツの世界でシビックSiRの対抗馬になりえました。
そして、実際のレースでもシビックを相手に善戦し、とくにアマチュアや学生が参戦していたジムカーナでは、好成績を残しています。
●ダイハツ「シャレード デ・トマソ」
1977年に発売されたダイハツ「シャレード」は、1リッター直列3気筒SOHCエンジンを搭載した新世代のコンパクトカーです。
オイルショックという時代背景もあり、軽自動車に近い車両価格や、低燃費なエンジンを搭載したことで大ヒット。
そして、1981年の第24回東京モーターショーに、ダイハツと提携契約を結んだイタリアのチューナーであるデ・トマソが監修した「シャレード デ・トマソターボ」が参考出品されると好評を博し、1984年に2代目シャレードをベースにしたシャレード デ・トマソターボを発売。
3代目では一旦シャレード デ・トマソが途絶えますが、1993年に発売された4代目で復活し、これまで1リッターターボだったエンジンは、新開発の1.6リッター直列4気筒自然吸気にアップデートされました。
最高出力は125馬力とハイパワーなユニットではありませんでしたが、小型かつ900kg(5速MT)という軽量な車体に、ハードなスプリングとダンパーが組み込まれたストラット式4輪独立懸架や4輪ディスクブレーキ、車体剛性のアップなどのチューニングにより、高い運動性能を発揮。
さらに、専用のエアロパーツや、ピレリタイヤ、ナルディ製ステアリング、レカロ製スポーツシートなどの装備によって、スポーツマインドあふれるコンパクトカーに仕立てられています。
※ ※ ※
今回、紹介した5車種のなかでシャレード デ・トマソ以外のモデルは、すべてモータースポーツに深い関わりがあります。
そもそも、1.6リッターという排気量は自動車税の区分からすると中途半端な存在ですが、モータースポーツの世界ではクラス分けの基準のひとつです。
モータースポーツに参戦することで1.6リッターエンジンの高性能化が飛躍的に進みましたが、現在はメーカーのレース活動縮小や、レースそのものが消滅してしまったことで、1.6リッターエンジンは激減してしまいました。
なお現在、国産メーカーで自然吸気の1.6リッターエンジンを展開しているのは、スバル、日産、スズキで、トヨタが2020年夏に発売する「GRヤリス」に、272馬力を誇る1.6リッター直列3気筒ターボエンジンが搭載されますが、もはや国内では少数派です。
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みんなのコメント
sirもいいけどちょっと驚いたのは下級モデルの1300ccのやつ
パワーはそんなにないが軽量、コンパクトでキビキビ気持ちよく走れるのでこれも悪くはないなあとか思った