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ドライバー不足、路線廃止、自動運転! 崖っぷち「バス業界」は本当に変われるのか? 2024年を総括する

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ドライバー不足、路線廃止、自動運転! 崖っぷち「バス業界」は本当に変われるのか? 2024年を総括する

「2024年問題」が招いた路線廃止

 2024年の路線バス業界は大きな変化の年だった――。

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 いわゆる「2024年問題」の影響で、ドライバーの働き方改革が進む一方で、退勤から次の出勤までの間隔が長くなった。その結果、

「従来の運行本数」

を確保するのが難しくなり、やむを得ず路線の廃止や休止が全国で相次いだ。

 さらに、ドライバー不足の深刻さを受けて、自動運転バスの実証実験(ある技術やシステムが実際に機能するかどうかを確かめるための試験的な実験)が各地で進められ、

・連節バス(2台以上のバスが中央で連結され、1台のバスのように運行するタイプのバス)
・電動バス(電気モーターを使用して走行するバス)

の導入も加速した。新しい技術を取り入れて、バス業界を活性化させようという動きも続いている。今回は、2024年のバス業界を振り返ってみたい。

ネガティブなトピック

 2024年、バス業界はさまざまな課題に直面した。注目すべきネガティブなトピックとして、次の四つが挙げられる。それぞれについて詳しく解説しよう。

・2024年問題とその影響
・財政的な困難の悪化
・サービスの地域間格差の拡大
・環境規制や福祉ニーズへの対応とその影響

●2024年問題とその影響
 バス業界は2024年問題に大きな影響を受けた。働き方改革により、退勤から次の出勤までの時間が最低9時間、推奨で11時間と定められ、ほとんどのバス事業者はこの11時間を基準に運行計画を立てることとなった。

 この結果、従来の運行本数を維持できるだけのドライバー数を確保できない事業者が全国で増加した。日本バス協会は、2030年までに約3万6000人のドライバー不足が生じると予測している。さらに、

・地域の重要な交通手段である「路線バス」
・利益率の高い「高速バス」
・地域の期待が大きい「貸切バス」

のいずれに注力すべきかを選ばなければならない事態が発生した。つまり、どの形態のバス事業に注力するかという厳しい選択を迫られる事業者が増えている。また、人件費を捻出するため、新車の導入を諦める事例も見られ、この影響がバスメーカーにも及んでいる。

● 財政的な困難の悪化
 1980年代後半から進んだモータリゼーション(自動車の普及と利用が進む現象)は、次第に深刻な問題となった。さらに、Covid-19による3年間の社会経済の停滞やテレワークの普及が影響し、定期券収入が全国的に減少した。

 路線バス業界にとって、毎年4月と10月に得られていた安定的な定期券収入が失われると、通常の支払いに加えて先行投資も難しくなり、事業運営は厳しくなる。結果的に、車両の更新が滞り、路線の廃止や休止が相次ぎ、サービスの低下と利用者減少を招くという悪循環に陥ってしまった。

 特にショックだったのは、大阪府の金剛自動車のように路線バス事業自体を廃止した事業者が出てきたことだ。こうしたバス事業の経営環境の厳しさやドライバー不足が原因となっている。2020年度には、一般路線バス事業者の

「99.6%」

が赤字となり、事業継続が困難な事業者が全国的に増えている。2025年以降、この悪化を止めるための対策が急務となっている。

地域格差拡大とデジタル化の影響

 次に、サービスの地域間格差の拡大と、環境規制や福祉ニーズへの対応と影響について説明する。

●サービスの地域間格差の拡大
 最近では、デジタルトランスフォーメーション(DX。企業や組織がデジタル技術を活用して、より効率的かつ柔軟に対応すること)の普及により、スマートフォンやパソコン、電話などを使ってバスを呼び出すシステムが広がっている。さらに、AIが呼び出しや予約の状況に応じてバスの最適経路とダイヤを自動で生成し、運行するシステムも定着しつつある。

 例えば、みちのりホールディングス(東京都千代田区)では、朝と夕方のラッシュ時間帯に定時・定路線の路線バスを運行し、日中は予約制にして柔軟な運行を行う方式を採用している。このように、DXを効果的に活用するためには、コストがかかる上、事業者や支える側に強い改革意欲と決意が求められる。また、地方自治体の首長が公共交通の改革にどれだけ前向きかによって地域間で大きな差が生まれ、格差が拡大している。

●環境規制や福祉ニーズへの対応とその影響
 路線バス事業では、引き続き環境対策の強化と、ユニバーサルデザイン(すべての人が使いやすいようにデザインされた製品や環境)を推進する福祉ニーズへの対応が求められている。2024年問題の影響もあり、大都市部で活躍したものの、環境性能が低下した

・ノンステップバス(車両の床が低く段差がないバス)
・ワンステップバス(乗降口が車内の床と一段の段差を持つバス)

の経年車が増加している。新車の発注は伸びず、バス事業者とバスメーカーの両方が厳しい状況が続いている。

ポジティブなトピック

 問題が起きれば、その解決策が生まれ、ポジティブなトピックも出てくる。以下の三つが挙げられる。

・労働環境の改善と工夫
・公共交通の利用促進と輸送効率の向上
・新しい技術の普及

同じく解説しよう。

●労働環境の改善と工夫
 2024年問題はバス事業者にとって大きな課題となっているが、それに対して何もしないわけにはいかない。新しい労働環境を作り出すための工夫も進んでいる。バス事業者は、ドライバー確保のために、

・大型2種免許取得に対する財政的支援や給与資金の確保
・女性ドライバーの採用強化(女性用の更衣室やトイレなどのインフラ整備)
・外国人ドライバーの採用検討
・嘱託雇用年齢の上限延長

などを継続的に進めている。また、行政もバス事業者を支援するために、路線バスドライバーの給与向上のための税金の投入や、自衛隊員や自治体職員の路線バスドライバーへの転用を検討している。こうした動きは、バスの問題解決に向けて、官民が協力する重要な機会となっている。

●公共交通の利用促進と輸送効率の向上
 バス事業を継続するためには、ドライバーの確保が重要であり、利用者を増やして収益性を高めることが大切だ。例えば、小田原市では、自家用車から公共交通への利用転換を目指し、道路の混雑緩和と二酸化炭素排出量の削減を同時に進めるために、

・行政
・バス事業者
・ショッピング施設

が連携して事業を行っている。具体的には、一定額以上の買い物をした人に、先着で路線バスの無料乗車券を配布している(買い物が3000円以上(税込み、合算可)の場合、1日2枚まで配布)。このように、公民連携で路線バスの利用を促進する取り組みも進んでいる。

連節バスの全国拡大と業界の進化

 効率的な運行を目指して、バン型の車両を使った運行が進んでおり、狭い道路を走行するバスも増えている。

 従来の大きな箱型バスだけで事業を継続することが難しくなっているという状況も強まっている。そのため、路線バス停と住宅地を結ぶラストワンマイル支援事業として、東急バスのシェアサイクルや小型モビリティシェアといった新しいサービスが登場している。バス事業の厳しい状況から、新たなサービスが生まれている。

 最後に、新しい技術の普及である。

●新しい技術の普及
 2024年には、ひとりで多くの乗客を運べる連節バスが各地で増加した。これまでは神奈川中央交通の湘南台地区や京成バスの幕張地区などに限られていたが、現在では全国的に導入されるようになっている。また、車両選択肢も外車だけでなく、国産連節バスの量産車が登場し、整備面でもハードルが下がったことで、業界全体の後押しとなっている。

 さらに、純粋な給電式の電動バスも増加しており、特に中国製のものが多く導入されているが、国産の電動バスも販売が進んでおり、今後の広がりが期待されている。そしてAIの進展により、自動運転バスの実証実験が進んでいる。バス事業は、40代で年収400万円台の人でも支出が厳しい状況にあり、コスト削減のため自動運転への期待が高まっている。オンデマンド運行を含むAI技術の進化が、バス事業の支えとなり始めている。

柔軟運行と新ビジネスの可能性

 路線バス事業は、2024年問題によって人手不足や給与資金の不足が顕在化している。しかし、バス事業者と地方自治体などが連携し、事業継続に向けた新たな取り組みが進んでいる。特に、DXやAIの活用が進み、オンデマンドバスや自動運転車両といった新しい技術の導入が加速している。また、高速バスや貸切バスの復活があれば、業界の未来に明るい兆しをもたらす可能性がある。

 現在、路線バス、高速バス、貸切バスの運営が人手不足の影響を受け、優先順位を付けなければならない状況だ。この課題を解決するためには、高速バスや貸切バスへの公的支援を通じて、業界の利益増加や資金循環を促進することが有効だと考えられる。

 特に地方部ではモータリゼーションが進み、柔軟な運行が求められている。例えば、朝夕の時間帯のみ定時運行し、昼間はオンデマンド方式に切り替える、タクシー型車両を使った効率的な運行など、従来の枠にとらわれない新しいアプローチを試す必要がある。バス停でのマイクロモビリティや自転車との接続、貨客混載などの新しいビジネスモデルも、今後本格化すると予想される。

 現在の苦境のなかでも、バス業界には新たな兆しが見えてきている。2025年には業界が常識を破り、従来にはない柔軟な施策を試す姿勢が求められるだろう。これからの変革により、事業改善のヒントが得られるはずだ。

 バス業界の現状を読者はどう考えるだろうか。公民連携とともに、生活者の参画がバス業界の改善に向けて重要だ。生活者を含めた共創が、今後の路線バス作りには欠かせない。私たち生活者も積極的に参画していきたい。

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みんなのコメント

20件
  • lan********
    遅れるな、便数増やせ、安くしろ、運転手が高給なんてけしからん、なんかあったらクレーム入れてやる、ネットで晒してやる、等…

    路線バスがやってられなくなったのってほとんど利用者のせいだよね。
    自業自得だよ。

  • mpi********
    自動運転?やれるもんならやってみろ!
    としか思ってないよ。
    ペーパーレスと言われて40年。
    未だペーパーレスすら実現しないのと一緒。
    机上の空論。絵に描いた餅。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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