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AUTOCARアワード2019 生涯功労賞 マイク・クロス/ジャガー・ランドローバー

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AUTOCARアワード2019 生涯功労賞 マイク・クロス/ジャガー・ランドローバー

もくじ

ー ダイナミクス性能の伝道師 ステアリングが重要
ー 速く走るよりも大切なこと
ー 番外編1:類まれなる英国のリーダー グレイム・グリーブ/BMW UK
ー 番外編2:類まれなる英国のリーダー デビッド・リチャーズ/プロドライブ
ー 番外編3:類まれなる英国のリーダー ポール・ヴァン・デル・バーグ/英国トヨタ

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ダイナミクス性能の伝道師 ステアリングが重要

すべての真のヒーローと同じく、マイク・クロスは、自身の成功を助けてくれたひとびとの名を次々とあげるが、彼独特の車両ダイナミクス性能に対する嗅覚によって、ジャガーの各モデルに違いがもたらされるようになって30年、その間に彼の立場は、勤勉な若手技術者から、新型モデルが狙い通りの仕上がりに達したかどうかを判定する、ジャガー・ランドローバー(JLR)のチーフエンジニアへと変わっている。

「仕事を始めた時、ジム・ランデルから多くを学びました。彼は、昔気質の偉大なエンジニアと呼べる存在でした」とクロスは話す。「フォード傘下にあった時には、リチャード・パリー・ジョーンズから大きな影響を受けています。彼はJLRトップに、素晴らしいダイナミクス性能の重要性を理解させたのです」

「もちろん、ジャッキ・スチュワートを忘れる訳には行きません。F1チャンピオンとして有名な彼ですが、偉大なロードカーについても、非常に多くの知見を持っていました。スチュワートには、本質を見極める能力に加え、素晴らしい人脈もありました」


確かに、彼が言うことのすべては真実だろうが、JLR経営トップが、ジャガー(と、最近ではランドローバーもだ)の販売力の源泉だと考える、その独特なドライビング性能が確立したのは、クロスの在任期間中のことであり、だからこそ、クロスは、自身が大のクルマ好きでもあるラタン・タタやラルフ・スピースといったJLR幹部とともに、最新のJLR製モデルとそのライバルたちとの試乗会へと、定期的に参加しているのだ。

常にジャガーは洗練された速いモデルとして、その低い重心位置と優秀なサスペンション設計によって、優れた乗り心地を確保することに成功していたが、どんな言い訳をしようとも、そのステアリングは軽く、フィールは曖昧なものでしかなかった。

だが、いまでは決してそんなことはない。クロスは、駆動方式の違いといったものに左右されない、路面状況をしっかりと伝え、適度な重みを備えた、理想的なレシオのステアリングというものを、もっとも重視している。

速く走るよりも大切なこと

「優れたステアリングは、わずかでもそのクルマのハンドルを握ればすぐに分かります」と彼は言う。「例えそれほど集中していなくとも、ステアリングの出来を見誤ることはありません。優れたステアリング無しに、優れたクルマなど実現することはできないのです」

もちろん、クロスは才能に溢れた、驚くほど速いドライバーでもあり、定期的に彼はもっとも速く、優れた数多くのマシンのハンドルを握っており、かつてはフェラーリ製3.0ℓV10エンジンを積んだ、過激なF1マシンすら運転したことがあるという。

クロスのお楽しみは、所有するドゥカティの1台でサーキットへと向かうことであり、「最新のスーパーバイクに乗れば、本物のパフォーマンスとは何かということを理解することが出来ます」と、彼は言う。

多くの偉大なドライバーたちと同じく、クロスも自身のドライビングスキルがどのようにして身に着いたのかを説明することができない。「当たり前の運転をしているだけなんです」と彼は言う。つねに、単に速いドライバーであるというよりも、はるかに多くのことが車両開発では求められると彼は話す。そして、ドライバーのスキルとしては、究極の速さよりも、常に一定の運転ができるということがもっとも重要だと言う。

「クルマを速く走らせるということは、魅力的かも知れませんが、われわれの仕事の大半はそうしたこととは無縁です」と彼は説明する。

「重要なのは、低速での挙動であり、コントロール性、さらにはブレーキやアクセルのフィールといったものです。ふたつのチームがあり、一方は目標に向けたセッティングを、もう一方はその評価を行います。全員が運転と分析を行うことができます。われわれの仕事は、何が起きているのかを、エンジニアたちに理解出来るように伝えることであり、つねにその能力を向上させています」

番外編1:類まれなる英国のリーダー グレイム・グリーブ/BMW UK


誰もが、BMW UKで取締役を務めるグレイム・グリーブは、BMW社内で起こっていることなら何でも知っていると言う。29年間をBMWで過ごしてきたグリーブだが、彼は、BMWとロールス・ロイス、さらにはミニの各ブランドで、英国のみならず、本社でもさまざまな役割を経験してきた。

2014年、ミュンヘンから、BMW UKの舵取りを担うべく英国へと戻ってきたとき、グリーブは、「市場が大きく変化しており、それは特にプレミアムブランドにおける競争のレベルに見て取ることができます」と話している。

最初の数年間は、「順調」だったと言う。「市場は依然として成長を続けており、35%もの伸びを見せたことで、プレミアム市場における主導的立場を取り戻すとともに、ディーラーの皆さんも見事な業績を上げていましたから、素晴らしい状況でした」

「非常に順調だ」と考えていました。

経済が減速するにつれて、グリーブの見立てが変わり始めたのも当然であり、彼の初期の成功とともに、この危機に対する対応こそが、傑出した英国のリーダー賞を受賞した理由となっている。昨年、英国販売は若干減少したものの、アウディやメルセデスの減少幅はBMWの比ではなかった。

グリーブはBMW UKの最大の強みのひとつは、その柔軟性にあると言う。「毎月市場の動きを追い、機会を探しています」と彼は言う。さらに、ディーラーとの契約もよりシンプルなものへと変更するとともに(「販売マージンの取り決めも非常に複雑なものであり、その内容は18ページにも及んでいましたが、いまではたった2ページです」)、彼がこんにちの成功のキーになったと考えている、より協力的で、透明性の高い文化を創り出すことにも成功している。

2019年は、強力なニューモデルが登場するものの、市場の難しさもあり、業績は前年並みだと予想しているが、彼は楽観的な見方を崩していない。「業界にとって、主要な課題はデジタル化への対応スピードです」と彼は言う。「もっとデジタル化への対応を進める必要があります。どのように顧客や変わりゆく市場へアプローチしていくかといったようなことです」

グリーブは真っ当なクルマとバイク好きでもあり、いまはM5を所有しているが、近々850クーペに乗り換える予定だという。だが、507とE30 M3が長年のお気に入りだとして、出物のチェックは怠らない。

番外編2:類まれなる英国のリーダー デビッド・リチャーズ/プロドライブ


2019年の傑出した英国のリーダーに選ばれたデビッド・リチャーズは、すでに大英帝国勲章を受章しているが、長年にわたり、チームを率いるリーダーとしての役割を果たしてきた彼が、なぜそうした能力を身に着けることができたのかは、謎に包まれている。

それでも、リチャーズの「為せば成る」という姿勢が、重要な役割を果たしたことは間違いない。17歳でパイロットを志願したものの、英国空軍の奨学金を得ることに失敗した彼は、会計の道へと足を踏み入れており、奇妙だが、結果的には、それがモータースポーツの世界へと彼を誘うこととなった。

22歳で会計の勉強を終えると、プロのラリー・コ・ドライバーとしてのキャリアをスタートさせているが、同時に、金融知識と組織運営、さらには、どんな状況にあっても失わない落ち着きという、優れたリーダーに必須の能力をも身に着けていったのだ。

その後も順調にキャリアを重ね、23歳の時には中東でラリーを開催し、24歳では、フィアットとフォードのレーシングチームのマネージャーを務めている。

29歳の時に、アリ・バタネンのコ・ドライバーとして、エスコートRS1800でWRCチャンピオンのタイトルを獲得すると、その後、現役中に、ポルシェ、BMW、そしてスバルとの素晴らしいパートナーシップのもと、数々の勝利を上げることになるプロドライブ社を設立している。

スバルとのパートナーシップでは、コリン・マクレーとリチャード・バーンズのふたりを、チャンピオンの座へと押し上げているが、リチャーズの挑戦は留まることを知らず、ベネトンとBARのふたつのF1チームでも代表を務め、その後は、アストン マーティンのレーシングチームを率いている。

プロドライブではいまもアストンのレーシング活動をサポートしているが、現在では、電動化と軽量化技術の開発にも力を注いでおり、さらに、1年前には、英国のモータースポーツを統括しているモータースポーツUKの会長へと就任し、徹底的な組織改革まで進めている。

「やるべき仕事を成し遂げ、最大限の評価を得ることのできるチームを作ろうしてきました」と彼は話す。

「その結果、早い段階から責任を自覚できるようになりました。モータースポーツUKの改革を通じて学んだように、指示だけで組織をリードしようとするよりも、優れたひとびとと議論を重ねたほうが、より多くを成し遂げることができるということにすぐに気付くはずです」

番外編3:類まれなる英国のリーダー ポール・ヴァン・デル・バーグ/英国トヨタ


「スープラは驚くべきモデルとなります」と、英国トヨタでトップを務めるポール・ヴァン・デル・バーグは言う。われわれが選ぶ3人目の傑出した英国のリーダーは、大学時代に彼が愛した、カムリやカローラ、そしてスープラといったトヨタ製モデルが、どうやって英国の地に帰って来たかを情熱的に語っている。

スープラはトヨタブランドの価値を引き上げることになるだろうが、近年のトヨタの成功を支えてきたのは、より一般的なモデルなのだと彼は言う。

「ここ2~3年、ひとびとが電動モデルへと興味を示したことで、市場はわれわれに有利な状況にありました」とヴァン・デル・バーグは続ける。「ハイブリッドを市場に根づかせようとしてきましたが、いまでは、ハイブリッドと通常のエンジンモデルがあれば、ひとびとはハイブリッドの方を選ぶようになっています」

2015年以来、ヴァン・デル・バーグは英国トヨタを率いているが、以前はトヨタモーターヨーロッパで、新たなブランド体験を主導するカスタマー・ワンという部門で責任者を務めており、彼はそこでの経験を、新たな職場に持ち込むことに成功している。クルマそのものと、購入プロセスの双方に関する顧客からのフィードバックを得る方法に活用しているのだ。

「もっとも重視しているのは、われわれのすべての活動の中心にお客様を据えるということです」と彼は言う。「お客様の要求は常に変化しますから、いかにその変化に対応するかが重要です」

その成果は明らかだ。昨年、市場全体は6.8%縮小したにもかかわらず、トヨタの売上は前年並みを保っており、ヴァン・デル・バーグは、数々の新車投入効果によって、今年は著しい成長を達成することができると考えている。

現在、RAV4ハイブリッドとプリウス・プラグイン・ハイブリッドを所有するヴァン・デル・バーグだが、「目立たない黄色の週末用モデル」と自らが呼ぶ、3代目MR2に話が及ぶと目を輝かせる。

真のクルマ好きらしく、自らメンテナンスなども行っているようだ。「ヘッドライトを交換して、ダッシュボードのフィッティングも修正しました」と彼は言う。「新車のコンディションを保っています。もし雨にでも降られれば、洗車は欠かしません」

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