「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前の国産車は環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は「インプレッサ WRX STI スペックC」だ。
スバル インプレッサ WRX STI スペックC(2009年)
インプレッサSTIシリーズに、ファン待望の「スペックC」が復活した。今回試乗したのはツインリンクもてぎの南コース。スペックCだけでなく、ベース車のSTIも持ち出して比較してみることにした。
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スペックCにもエンジン制御を3つのモードで変えられる「Si ドライブ」が備わるが、もちろん「S#」で試す。コースに進入しアクセルを全開にすると、エンジンは軽やかに反応してトップエンドの8000rpmまで吹け上っていく。そのあっけなさは、逆に凄さを感じないほどだ。
この後STIに乗り換えたら、あれほどスムーズに感じたエンジンが、スペックCに比べるとちょっと鈍く感じられたほど。ちなみに最高出力308ps/最大トルク43kgmのスペックは同じだが、アクセルのツキが良いぶんスペックCの方がパワフルに感じられる。また、STIにはないインタークーラー ウオータースプレーが装備され、常に冷却された空気が吸気されるので、スペックCはエンジンのタレが圧倒的に少ない。
さらに、薄板ガラス、遮音材の排除、バッテリーの小型化、フロントフードのアルミ化などで50kgほど軽量化されている。これにより、とくにコーナーの切り返しなどでノーズがスッと向きを変えてくれて収束が早い。そして軽量化はブレーキの持久力に大きな効果をもたらし、連続したハードな走行でもSTIに比べると安定した効きを示す時間がはるかに長かった。
サスペンションとタイヤの違いは、コーナリングで際立った違いを見せる。STIもけっこう軽い身のこなしで、インプレッサの伝統を受け継いだ回頭性の良さを誇っているが、スペックCはさらに余計な動きを封じ込めた感じで、締め上げられたダンパーとSタイヤ並みのポテンザRE070で強固なグリップを見せる。STIは同じ245/40R18サイズのポテンザRE050Aを装着するが、RE070のグリップ力にはかなわない。このままでちょっとしたモータースポーツイベントなら十分に戦えそうだ。
走行フィールでは、とくにフロントまわりの剛性が上がっているのに加えて、ダンパーの伸び側がグンと上げられている感じでロールも小さい。そしてバネ/ダンパーの組み合わせの妙でステアリング転舵時のフロントの入りがいい。また前後のロールバランスは、サーキット走行によりマッチしている。とくにコーナーでリアの安定性が高く、旋回性能が高いのが印象的だ。
乗り心地は、これだけ締め上げられたサスペンションとSタイヤ並みのタイヤで快適なわけはないが、それでも予想以上に許容範囲に収まっていた。もともとSTIもタイヤの硬さを感じるほどなので、むしろ潔い硬さがスペックCらしくて良い。とはいえノイズはかなり大きく、ロードノイズ、パターンノイズ、風切り音、メカノイズ、あらゆる音が平均してSTIよりは大きくなって室内に入ってくるのはやむを得ないところ。
今回のテストでは、1周約1分弱のコースで1秒の差があった。これはけっこう大きな差だ。実際にステアリングを握れば、数字以上にそれを体感させられるだろう。
■インプレッサ WRX STI スペックC 主要諸元
●全長×全幅×全高:4415×1795×1475mm
●ホイールベース:2625mm
●車両重量:1450kg
●エンジン種類:水平対向4 DOHCターボ
●排気量:1994cc
●最高出力:227kW<308ps>/6400rpm
●最大トルク:422Nm<43.0kgm>/4400rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:フロント横置き4WD
●10・15モード燃費:10.4km/L
●タイヤ:245/40R18
●当時の車両価格<税込み>:368万5500円
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