アメリカの販売台数トップ20のうち半数以上が日本車
米トランプ大統領と安倍首相はとても仲が良い。世界の人々からそう思われている。先進国首脳会議やアジア圏での経済フォーラムなどに参加するたび、ほぼ毎月にように両首脳は直接顔を合わせているからだ。
そんなトップ会談のなかでこれまでたびたび登場した話題は、自動車だ。トランプ政権側は「日本でアメ車が売れないのは、日本がアメ車に不利になるような法規制や自動車産業界の慣習などがあるからだ」と主張してきた。
まあ、この手の話を真正面から捉える人は、日本にはいないだろう。日本人がアメ車を好まないのは、アメ車がアメリカでの生活でもっとも活きる商品であり、日本の風土に似合わないからだ。かといって、日本の風土に合うようなアメ車を作れば、それはそれで売れない。なぜならば、アメ車は”いかにもアメ車っぽい”ことが魅力的なのだから。アメ車と日本車は商品性として相いれないことが、それぞれの存在意義なのだと思う。
では、話をアメリカ本土に移そう。そもそも、アメリカで日本車はどの程度売れているのか? 直近の販売データ(2019年2月)として、車種別トップ20のうち、半数以上の11台が日本車というトップ20を見てみよう。
すると、第1位から順に、
1位:フォードFシリーズ 2位:GMシボレーシルバラード 3位:日産ローグ 4位:ダッジ・ラム 5位:トヨタ・カムリ 6位:トヨタRAV4 7位:ホンダ・シビック 8位:GMシボレー・エクイノックス 9位:ホンダCR-V 10位:トヨタ・カローラ 11位:ジープ・ラングラー 12位:フォード・エスケープ 13位:日産セントラ 14位:ホンダ・アコード 15位:フォード・エクスプローラー 16位:ジープ・チェロキー 17位:日産アルティマ 18位:トヨタ・ハイランダー 19位:トヨタ・タコマ 20位:ジープ・グランドチェロキー
と続く。トップ20のうち、半数以上の11台が日本車なのだ。
日本メーカーはアメリカ国内生産を重視する
こうして、いまでは米デトロイト3(GM、フォード、FCA)と互角の戦いをするようになった日本車だが、ここまでくるには紆余曲折があった。アメリカで日本車に注目が集まり始めたのは1970年代の前半だ。たとえば、スポーツカーでは高性能でスタイリッシュ、しかも価格がリーズナブルな日産フェアレディZが大人気。
また、排気ガス規制の影響で6リッター級や7リッター級の大排気量エンジンのアメ車が死滅するなか、副燃焼室を用いた低燃費技術CVCCを引っ提げた初代ホンダ・シビックが爆発的に売れた。
その後、80年代から90年代にかけては、ホンダ・シビック、トヨタ・カローラ、ホンダ・アコード、トヨタ・カムリ、日産アルティマなどC/Dセグメントセダンと呼ばれる中型車がアメリカ人にとっての定番となった。さらに、90年代後半から2000年代はSUVとクロスオーバー車でも日本車が人気を博すようになる。
こうしたアメリカにおける日本車の歴史のなかで、日本メーカーとアメリカ政府および各州政府にって重要なことは、現地生産という考え方だ。地元住民を雇用し、地元部品メーカーから仕入れる地産地消を、日本メーカーは80年代から始め、いまではアメリカの日本メーカーはアメリカの会社として市民権を得ている。
そんななか、トランプ政権はいう。「だったら、もっとアメリカの日本車工場を大きくして、もっと多くのアメリカ人を雇え」、と。こうした要望に対して、日本メーカーは政府と連携しながら”政治的判断”を下す。日米における自動車産業図式は、いまも昔もアメリカ主導で描かれているように思う。
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