実質的な後半戦幕開けの一戦、2024年スーパーGT第6戦として9月22日に決勝を迎えたスポーツランドSUGOでの300kmレースは、週末に降り続いたまとまった雨量の影響も受けスケジュールのディレイが相次ぐなか、セーフティカー(SC)先導のもと14番手スタートから大波乱の展開を制した37号車Deloitte TOM’S GR Supraの笹原右京/ジュリアーノ・アレジ組が、4位入賞を果たした僚友36号車au TOM’S GR Supraとともに、タイトル戦線の中央に躍り出る今季2勝目を飾っている。
■予選日はランキング上位陣で明暗分かれる
台風10号の影響で開催延期となった8月末の第5戦鈴鹿サーキットに続き、全8戦中の5レース目として迎えたみちのくのレースウイークも、引き続き天候に翻弄される事態となった。
前日21日(土)の予選日も、午前から雨量がめまぐるしく変化するウエット宣言下で走行が始まると、事前に「公式練習のタイムを決勝グリッド順の決定に使用する可能性がある」と通達されていた各チームは、午後の予選キャンセルもにらんでセッション開始から“アタックモード”での周回を重ねることに。
ここでトラック上の水量が減ったタイミングを狙い澄ました38号車KeePer CERUMO GR Supraが最速タイムを計時し、結果的に最上位グリッド発進の権利を手にする。さらに14号車ENEOS X PRIME GR Supra、19号車WedsSport ADVAN GR Supraを挟んで、4番手には選手権首位を行く36号車au TOM’S GR Supraがつけるなど、現チャンピオンが悪条件のもと燃料流量2ランクダウンのハンデを跳ね返す快走を披露した。
その一方で、ランキング2位につける100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GTを筆頭としたホンダ陣営が集団後方に沈み、同3位のNiterra MOTUL Zはまさかの最後尾となるなど、チャンピオンシップを争う当事者たちは対照的な展開を見せる。
ただし、単一ラウンドで持ち込みが許可される登録パターン1種類のウエットタイヤ「5セット」のうち、ソフト、ミディアム、ハードのコンパウンド内訳は各チームによって判断が異なるため、後方に沈んだ車両でも「決勝を見据えソフトのニュータイヤを温存した……etc」などの可能性も考えられる。
同じく今季第5戦より土曜の走行機会を対象に「タイヤ開発の促進を目的とし(中略)ドライタイヤの持ち込みセット数に2セットの追加を許可する」とされていたヨコハマタイヤとダンロップ陣営も、条文最後で「ウエットタイヤはこの限りではない」とされていることから、前日は全メーカーが同一条件(つまり5セットの運用)で勝負していたことになる。
■レース序盤から目まぐるしく順位が変動
決勝前のウォームアップ走行から都合2度の延期で1時間ディレイし、13時から20分間の走行枠では開始6分でGT300クラスの車両がスピンを喫し赤旗に。場内のタイミングモニター上では路面温度も17~18度台と、ウエットタイヤのウォームアップも思うように進まない。
ただリスタート後の10分間では上空に明るい兆しが差し始め、全体がさらに約7分ほど遅れた2周のフォーメーションラップ開始14時22分を前に週末初の陽射しが戻る瞬間も。気温20度、路面温度24度まで上昇してスタートのときを迎える。
ところどころ大きな水たまりや川の名残が残るも、ダンプ路面と判断したレースコントロールが4周突入時点でリスタートを決断すると、首位を行く38号車KeePer CERUMOの石浦宏明が好ダッシュを見せるなか、グリップの発動が遅れた2番手の14号車ENEOS X PRIME大嶋和也が、みるみる後続に飲み込まれていく。
ここから36号車auと5番手発進だった12号車MARELLI IMPUL Zもオープニングラップで躍進し、続くターン1ではベルトラン・バゲットとの勝負を繰り広げた坪井翔がハイポイントまでにZを捉え、なんと2番手に浮上していく。
その背後では、一時19号車WedsSport ADVANも捉えトップ5圏内に進出していたダンロップ装着の64号車Modulo CIVIC TYPE R-GTが、周回数10周を目前に馬の背で17号車Astemo CIVIC TYPE R-GTに先行を許すと、続くラップでは14号車ENEOS、そして最後尾から早くも大幅ポジションアップを果たした3号車Niterra MOTULにも立て続けにオーバーテイクを許し、高星明誠が接触で軽微なダメージを負いながら、早くも6番手まで這い上がる。
一方で後方からの逆襲を期したホンダ陣営の2台、16号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTは集団バトルを展開した13周目のターン2でGT300車両と交錯、さらに8号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTも16周目に勝負を仕掛けた馬の背のブレーキングで、止まり切れずグラベルへ直進。ともに大きくポジションを失ってしまう。
18周目には12号車MARELLIを先頭に17号車Astemo、14号車ENEOSと3番手争いが激化し、最終コーナーのイン側を突いた塚越広大がポジションを奪取してホームストレートへ。続くターン2では14号車大嶋もバゲットを捉えていく。
この2台は20周目にも2番手38号車KeePerの石浦もオーバーテイクし、ともに表彰台圏内に進出。一方でこのタイミングで16号車ARTAに対し「危険な走路復帰」の判断が下りドライブスルーが宣告される。
レース開始から20周時点で6番手としていた37号車Deloitteも、ここから38号車、12号車をパスして4番手にまで進出していくと、直後の26周目にはGT300でのクラッシュによりSCが導入される。
■“雨上がりのアレジ”が後続を寄せ付けない走りを披露
このタイミングでレース距離3分の1を経過してピットウインドウが開くと、32周目突入での再開後に39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supra、23号車MOTUL AUTECH Zがルーティンの作業へ向かうも、ここでスリックを履くことは叶わず。一方、トラック上では37号車Deloitteの笹原が、17号車Astemo塚越をバックストレートで捉え表彰台圏内の3番手に上がっていく。
ここから首位36号車auの坪井がジリジリとペースダウンを喫し、14号車ENEOS、37号車Deloitte、そして4番手の17号車Astemoまでが1パックの勝負へと発展。37周目のセクター1では明らかに背後のGR Supraが加速に優れるなか、大嶋のインサイドを突いた笹原がターン4でポジションを入れ替える。
ここから一気に僚友の坪井に襲い掛かった37号車は、馬の背のブレーキングで首位浮上に成功。続く最終コーナーでは14号車、17号車ともに36号車を捉え、序盤から奮闘したチャンピオンはここで4番手まで後退してしまう。
すると43周目にはレインボーコーナーでGT300クラスの車両がコースオフを喫し、これにイチ早く反応した上位勢はトップ7台が一斉にピットレーンへ傾れ込む。このうち36号車、そして6番手にいた100号車らがダイブストップを強いられタイムロスを喫する。
ここで作業をパスしていた24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zと8号車ARTAが暫定的に先頭集団に出るも、車両回収のためFCY(フルコースイエロー)が宣言され、直後にはSCに切り替わったことで実質的に勝負権を失ってしまう。
ちょうど50周目突入でリスタートを迎えると、SC導入のタイミングでルーティンを終えウエットに換装していた2台が躍進。39号車DENSO KOBELCO中山雄一が23号車のロニー・クインタレッリをかわし、10周ほど新しいタイヤセットを履く37号車Deloitteアレジの背後に迫る。
一方、一斉ピット組のなかでスリックタイヤを履いた38号車KeePerの大湯都史樹が、グリップ発動から脅威的ペースで前を追い、23号車Z、39号車GRスープラを仕留め55周時点で3番手までカムバック。さらに58周目の最終コーナーではアウト側から12号車の平峰一貴を豪快にパスし、これで2番手としてみせる。
しかし首位を行く37号車のアレジも反応し、61周目には1分15秒170の自己ベストを更新して反応。その一方、この段階で5番手としていた14号車ENEOS X PRIMEには、福住仁嶺にスイッチ直後のFCYピリオド中にコースオフがあったとしてドライブスルーのペナルティが言い渡されることに。さらにドラマは続き、4番手にいた17号車Astemoにもピット作業時の手順違反が取られる(タイヤの跳ね飛ばし/ドライブスルー宣告は残り6周時点)。
当初予定より15分伸ばされたレース最大延長時間の16時45分が迫るなか、チェッカーの84周を迎え、後半スティントで力強いロングランのペースを示し続けた37号車Deloitteが第3戦鈴鹿以来の今季2勝目を獲得。2位に38号車KeePer、3位に12号車MARELLIの続く表彰台となっている。ホンダ勢の最上位は、5位に入った100号車STANLEYだ。
第5戦鈴鹿が12月に延期されたことで、引き続き“フルウエイト”でのレースとなる2024年シーズン第7戦『AUTOPOLIS GT 3Hours RACE』は、10月19~20日に大分県日田市に位置するオートポリスで開催される。
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