トヨタ・プリウスは世界初の量産型ハイブリッド車として1997年にデビューした。2003年の2代目でプリウスのアイコンとなったモノフォルムシルエットを採用。同時に、プリウス=ハイブリッド車のイメージを決定づけた。
3代目(2009年)、4代目(2015年)と進化を重ねるうち、プリウス以外のハイブリッド車も増えていった。プリウスのグローバル販売台数は505万台(2022年9月現在)だが、ハイブリッド車のグローバル販売台数は2020万台にも達する。もはやトヨタ自動車が販売するハイブリッド車はプリウスだけではないし、珍しい存在でもない。
トヨタ、新型プリウスを世界初公開。HEVは今冬、PHEVは2023年春頃に発売予定
ならば、5代目プリウスの存在価値は? 豊田章男社長は「プリウスは残すべき」との考えを社内で示したが、同時に「コモディティにすべき」との考えを示した。特別な存在ではなく、日用品的な位置づけへ割り切りだ。燃費性能に優れたプリウスをタクシー専用車にすれば、台数が増えて環境への貢献につながるだろうと。
新型プリウスの開発陣は、その考えに反発。環境性能に優れているからという合理的な理由ではなく、エモーショナルな理由で選んでプリウスを選んでほしいと考えた。それには、高い環境性能に加え、「ひと目惚れするデザイン」と「虜にさせる走り」が必要だと結論づけた。このふたつが、新型プリウスの開発コンセプトだ。
好みは人それぞれだが、きっと多くの人が新型プリウスを見て「カッコイイ」と感じることだろう。筆者もそのひとりだ。ひと目でプリウスとわかると同時に、洗練された美しさと色気を感じる。
富士スピードウェイのショートコースで見た新型は、誌面や画面で見るより量感たっぷりだ。とくにリヤフェンダーまわりのグラマラスな処理が目を引く。
「よりスタイリッシュなプロポーションへと進化」させるため、上級グレードには細幅大径タイヤを採用した。先代(4代目)の大きいほうのタイヤは215/45R17サイズだったが、新型は195/50R19サイズだ。外径は53mmも大きくなっている(679mm)。
ホイールアーチに樹脂製の黒いクラッディングを施していることと全長を25mm延長(4600mm)したのに対してホイールベースを50mm長くした(2750mm)こともあり、スタンスが良く、安定感のあるフォルムを実現している。
ルーフのピークをホイールベースの中心より前から後ろに移動させたことも、後ろ足(後輪)で踏ん張り感のあるフォルムの実現に役立っている。明らかにデザイン優先の変更だが、空力的には不利になる。空気の流れが剥がれる点が後ろになると、リフト(揚力)が増えてしまうという。直進時にしても旋回時にしても、リフトが増えると接地荷重が減って挙動が不安定な方向に作用する。
そこで床下の空力処理に着目し、「エアロスタビライジングアンダーボデーステップ」を適用した。エンジンカバー、フロアカバー、リヤバンパー下面のカバーに施した長方形の凹みのことだ。コアンダ効果を利用することにより、この凹みで負圧を発生させる仕組みである。コアンダ効果、覚えているだろうか。2012年のF1シーズンに排気のエネルギーを空力的に利用するエキゾーストブローイングの技術に用いられた現象だ。
コアンダ効果とは、流体が近くの物体に引き寄せられる現象のこと。蛇口から流れ落ちる水に手を近づけると、水が張り付いて流れが変わるが、これがコアンダ効果によるものだ。F1のエキゾーストブローイングの場合はエンジンカウルの傾斜に排気を沿わせてフロアに導くことにより、フロア下を流れる空気の引き抜き効果を高めてダウンフォース増大を図った。
新型プリウスのコアンダ効果の場合は、凹みの角に追従して空気が流れることにより、流れが速くなって負圧を発生する仕組み。角を乗り越えて凹みに入るときだけでなく、凹みから出るときの乗り越えでも負圧を発生させる。
負圧、すなわちダウンフォースが発生することにより、タイヤの接地荷重が大きくなって車両挙動は安定方向になる。直進走行時は空気の力で車体を地面に押さえつけるので、ダンパーでは減衰しきれない微細な振動を抑える効果があるという。新型プリウスは空力技術を「虜にさせる走り」に生かしている。
■2.0リッターのE-Fourの圧巻の出来栄え。加速性も静粛性も大幅に向上
その走りは「軽快な加速感」と「意のままの走り」がポイントだ。前者の実現は新しいハイブリッドシステムの設定が大きい。先代は1.8リッターのハイブリッドシステムのみの設定だったが、新型は1.8リッター(システムは一新している)に加え2.0リッターのハイブリッドシステムを設定した。2.0リッター版のシステム最高出力は144kW(196ps)で、先代の1.6倍である。発進加速も中間加速も先代とは段違いだ。
さらに魅力的なのはE-Fourと呼ぶ4WD仕様である。先代にもE-Fourの設定はあったが、リヤモーターの最高出力は5.3kW(7.2ps)で、明らかに、雪道など低ミュー路での発進性を確保するのが狙いだった。新型プリウスのリヤモーターは30kW(41ps)を発生。旋回駆動時はリヤモーターを駆動し、積極的に曲げる方向の制御を行う。
筆者は富士スピードウェイのショートコースで2.0リッターのE-FourとFF、1.8リッターのE-FourとFF、それに先代1.8リッターのFFに試乗した。
圧巻は2.0リッターのE-Fourだ。流して走っているようでは、真価は実感できない(先代に対して静粛性が高くなっているのは充分実感できるが)。踏めば踏むほどに気持ち良さが増す。システム最高出力が大きいのでFFでも力強い走りは楽しめるが、E-Fourは明らかに上だ。タイトターンの手前で急減速し、立ち上がりでグイッとアクセルペダルを踏み込むと、リヤから力強く押し出す感覚を味わえる。
ステアリングを切り込んだ際の反応もいい。先代プリウスでトヨタの新世代プラットフォームであるTNGAを導入。新型では第2世代TNGAに進化した。変化が顕著なのはフロントセクションで、ラジエーターコアサポートまわりの構造を見直すことで剛性を向上。2.0リッター版はラジコアサポートにブレースを追加することで、さらなる強化を図っている。こうした手入れの効果があり、操舵初期の応答性が高まっている。
コラムアシスト式電動パワーステアリング(EPS)の味つけは19インチを履く2.0リッター版と17インチの1.8リッター版では意図的に変えているようで、2.0リッター版はスポーティで操舵反力は強め。
1.8リッター版は車体の動きも含めて軽快だ。アクセルと操舵の応答性が高い点は2.0リッター版と共通しているが、車体の動きはゆったりしており、快適性や乗り心地に振った味つけになっている。
おそらく、新型プリウスを見て「カッコイイ」と感じる人が大半だろう。そう感じると、走りに対する期待値も高まるはず。その期待値を裏切らないどころか、期待を上回る走りでドライバーをよろこばせてくれるのが新型プリウスである。「虜にさせる走り」は本物だ。
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