現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > なぜTTなのか?ボクがアウディTTを買った5つの理由とは

ここから本文です

なぜTTなのか?ボクがアウディTTを買った5つの理由とは

掲載 更新
なぜTTなのか?ボクがアウディTTを買った5つの理由とは

アウディTT 2.0 TFSI quattroを買った。

「8S」いうコードネームを持つ、三代目にあたる現行モデルだ。
ボクは以前にも二代目TT(こちらは8Jというコードネームだ)を所有していたことがあるので、マイカーとしてはTTをこれまでに二台購入したことになる。

愛車は情熱の赤「アウディTTクーペ」オーナー、栗田朋一さんにインタビュー

その1:TTはアウディの異端児だ

アウディTTは、アウディにおける異端児である。
そもそも、TTはアウディのラインナップにおける命名規則から外れている。A1、A3、A4、そしてQ3やQ5といったアレだ。
この中では、Tというアルファベットがつくモデルはこの「TT」しかない。

現在、アウディには(アウディのサイトによると)6つのモデル名がある。
「A」「S」「RS」「Q」「TT」「R8」だ。
そして同時に、「TT」と「R8」のみが独立したモデルとして存在することもわかる。

TTの名称はイギリスにある小島で開催されるレース、「Tourist Trophy Race」にちなんでいる。この「ツーリスト トロフィー」を略したものが「TT」というわけだ。

なお、「A」は「Audi」の頭文字であり、「ものごとのはじまり」を表すそうだ。
「S」はもちろんスポーツ、そして「RS」はレーシングスポーツ。
「Q」はアウディの誇る4WDシステム「quattro」から、「R8」はルマン24時間レースにて輝かしい成績を残したレーシングカーに由来する。

これを見ても「TT」が他のアウディとは「ちょっと違う」ことがわかると思うが、TTの特殊性はそのネーミングだけにとどまらない。
そう、TT最大の特徴とも言える「デザイン」について触れておく必要がある。

TTのデザインとしてのルーツは1995年に発表された「TTデザイン・スタディ・モデル」にまでさかのぼることができる。
これを市販モデルとして発売したものが「初代TT」だ。
このクルマはなんというか、とにかく特殊な車だった。
未来っぽいような、レトロなような、クルマであってクルマでないような雰囲気があったのだ。
もちろん、どのアウディにも似ていない。

そして、ボクはこういった「異端」が大好きだ。

その2:TTは新世代のポルシェとなる可能性があった

TTの生い立ちについて、もう少し触れておこう。
TTは「もしかすると」次世代ポルシェとして発売される可能性もあった、ということをここで述べておきたい。

初代TTのデザインは、フリーマン・トーマス氏によるものだとされている。
このフリーマン・トーマス氏はアウディに移る前、ポルシェに在籍していた。
そして、ポルシェ時代の同僚がかの(エンツォ・フェラーリのデザインで知られる)ケン・オクヤマ氏であった。

ケン・オクヤマ氏の著書「ムーンショット デザイン幸福論」では、知られざるアウディTT誕生の瞬間について語られている。
それによるとこうだ。

その頃(文中に記載はないが、逆算すると1980年代前半だと思われる)、ポルシェは「新しいクルマ」を考えていた。
そこで、くだんのフリーマン・トーマス氏は自分の考えた理想のクルマを「新しいポルシェ」のデザインとして提案するが、あえなく却下されてしまう。
しかし彼はその「理想のクルマ」の実現をあきらめることができず、自宅でクレイモデルを作り続けた。

自宅キッチンのオーブンを使用しながらクレイモデルを作ったため、デザイナー仲間からそれは「キッチンカー」と呼ばれたそうだ。
彼はその後、アウディに移籍するが、そこで同社のピエヒ会長(当時)主導による、新しいデザインをもつ新型車開発のための緊急プロジェクトに招集されることになった。
そこでフリーマン・トーマス氏がピエヒ会長に提案し、一発で採用となったのが「TT」の原型、つまりキッチンカーだったという。

ポルシェではついに陽の目を見ることはなかったが、アウディTTとは、ずっと夢を追い求め、15年がかりでそれを「形」にしたひとりの男の物語でもある。

現在ポルシェはアウディ傘下となったが、これについても因縁のようなものが感じられ、そのためボクはTTとポルシェとを切り離して考えることができない。

「もしかすると」ポルシェから発売されていたかもしれないクルマ、それがアウディTTだ。

その3:TTの維持費は比較的安価だ

ボクがTTに感じる魅力は、単にドラマやデザインだけにとどまらない。
現実的な「維持費の安さ」、正確に言うなれば、「スポーツカーらしいルックスと性能に“比較した”維持費の安さ」だ。

TTより高い性能を誇るスポーツカーはたくさんある。
だが、TTより維持費の安いスポーツカーは滅多にない。

それは排気量(1984cc)に起因する自動車税、比較的事故率が低く、修理が容易なためか、スポーツカーとししては低い保険の料率設定、なにより高い燃費性能。

ここでひとつ例を見てみよう。
ボクは以前、ポルシェ981ボクスターに乗っていた。

981ボクスターの排気量は2.7Lで、出力は265馬力。0-100キロ加速は5.6秒、燃費はリッターあたり12キロ。
アウディTTの排気量は2L、出力は230馬力にとどまるが0-100キロ加速は5.3秒、燃費はリッターあたり14.7キロ、という数字だ(それぞれカタログ値)。
TTのほうが加速が良く、しかし燃費が良い、ということがわかる。
加えてTTの自動車税は年あたり39,500円、ボクスターのそれは51,000円となる。

任意保険については、「料率」によって保険料の大きな部分が決まってくるが、ボクスターの料率クラスは車両6 / 対人6 / 対物5 / 障害4、という設定だった。
対してTTは車両8 / 対人4 / 対物4 / 障害4、という範囲に収まる。
車両の料率こそは高いが、そのほかは低いことが見てとれる。

ただ、クルマは「維持費」だけで選ばれるべきではなく、ポルシェ981ボクスターは「TTよりも維持費が高かろうと」その魅力はみじんたりとも損なわれないクルマであった、ということは付け加えておかねばならない。

その4:TTはどこへ乗って行っても気後れすることはない

TTはデザインコンシャスなクルマだ。
いいかえれば「オシャレ」といってもいい。
そして冒頭で述べたように、アウディの命名法則に当てはまらず、つまりは「ヒエラルキーの外」にあるクルマでもある。

これは「クラスレス」と言いかえてもいいかもしれないが、外観についても、TTはその属するクラス、そして価格を判断しにくいクルマだ。

例えばアウディだとA3、A4、A6、A8、といった感じで序列がある。
それはBMWでも、メルセデス・ベンツでも同じだ。
だが、そもそもスポーツカー自体が「序列」のわかりにくいセグメントであり、その中でもとくにTTはそのポジションを(とくに一般人からは)判断しにくいのだろうと思われる。
つまり、「価格は知らないが、なんとなく高いのだろう」と思えるクルマがTTだというのがボクの認識だ。

そういった理由で、TTは単純にほかのクルマと比較できるものではなく、そしてTTは形式こそ「3ドアハッチバック」ではあるものの、サルーンと並んでも気後れする車ではない、と考えている。
そして、これと似たようなクルマとして「ミニ」があげられるかもしれない。
ミニは比較的小さなクルマだが、「小さいクルマだから安い」と捉えられる類のクルマではない。

要は「好きだから」という積極的選択肢によって選ばれるクルマであり、「(モロモロの理由で)上位モデルを買えなかったから」という消極的選択肢の結果として乗っているわけではない、という意思を示せるクルマではないか、ということだ。
どんな車が横に並ぼうとも、「ほかの人はほかの人、オレはオレ」だということを周囲に知らしめることができる、と言ってもいいかもしれない。

ただし、これはあくまでもボクの感じるところであり、これと異なる考えを持つ人も多いこと、もちろんボクはそれを尊重したいと考えていることも記しておきたい。

その5:TTの走行性能は高いレベルにある

アウディによると、TTは「高性能と高効率とを両立するリアルスポーツカー」とある。
TTがリアルスポーツカーであるかどうかは意見が分かれるところだが、これについてはここで論じるつもりはない。

ただ、実際のところTTの運動性能はかなり高い。
ポルシェを3台、ランボルギーニを2台乗り継いだボクが言うのだ。

ターボエンジン+4WDによる加速は胸のすくものだと言えるし、4WDによるグリップの高さ、とくに高速カーブにおけるスタビリティは特筆すべきものがある。

TTに近い価格帯を持つクルマの中だと、多くの場面において、TTよりも速く、TTよりも安全に、そしてTTよりも安心して走れるスポーツカーは少ないだろう。

以上が、ボクが今回アウディTTを選んだ理由だ。
TTはデザインに優れ、そのため高級車の中に交じってもその輝きを失わない。
さらには燃費性能に優れ、維持費が安く、安定性や安心感が高いうえに運動性能も良い。

もちろんTTより優れたデザインや運動性能、走行性能を持つクルマは多い。
だが、「この価格帯で」という制限を付与すれば、TTに軍配が上がる可能性が限りなく高くなる、とボクは考えている。

しかしながらTTとて完璧ではなく、当然懸念材料はある。
それは「値下がりの心配」と「人とモノが乗らない」ということだ。
これはある種の人々にとっては致命的とも言えるが、またの機会に触れてみたいと思う。

[ライター・撮影/JUN MASUDA]

関連タグ

こんな記事も読まれています

全幅1.97mはデカすぎた!? 中身はよかったけど新規市場開拓ならず? 生産終了した[グランエース]に販売現場が思うこと
全幅1.97mはデカすぎた!? 中身はよかったけど新規市場開拓ならず? 生産終了した[グランエース]に販売現場が思うこと
ベストカーWeb
冷静貫徹のサービスパーク/贅沢すぎるデモラン/多くの著名人も来場【ラリージャパン写真日記最終回】
冷静貫徹のサービスパーク/贅沢すぎるデモラン/多くの著名人も来場【ラリージャパン写真日記最終回】
AUTOSPORT web
[発炎筒と発煙筒の違い]知ってた!? 車載するのはどっち!? 意外と知られていない発炎筒の基礎知識
[発炎筒と発煙筒の違い]知ってた!? 車載するのはどっち!? 意外と知られていない発炎筒の基礎知識
ベストカーWeb
96年前のル・マンで優勝したベントレーが東京を走った!「コッパ・ディ東京」に降臨した「オールド・マザー・ガン」とは?
96年前のル・マンで優勝したベントレーが東京を走った!「コッパ・ディ東京」に降臨した「オールド・マザー・ガン」とは?
Auto Messe Web
一番後ろまで段差ゼロ! いすゞの新型路線バス ついに量産開始へ 「市場が待ち望んでいた」モデル
一番後ろまで段差ゼロ! いすゞの新型路線バス ついに量産開始へ 「市場が待ち望んでいた」モデル
乗りものニュース
こちらも“5気筒500PS”級の新型SUVがテスト。週末は連覇王者がポール獲得で僚友が連勝/TC2000第11戦
こちらも“5気筒500PS”級の新型SUVがテスト。週末は連覇王者がポール獲得で僚友が連勝/TC2000第11戦
AUTOSPORT web
新型「GRヤリス」がマフラー交換だけでパワーアップ! 「スーパーターボマフラー/スーパーターボマフラー アーバンマットエディション」がHKSから同時発売
新型「GRヤリス」がマフラー交換だけでパワーアップ! 「スーパーターボマフラー/スーパーターボマフラー アーバンマットエディション」がHKSから同時発売
くるまのニュース
メルセデスAMG、4シーターカブリオレ『CLE』にワイドな専用エクステリアの“53 4MATIC+”を導入
メルセデスAMG、4シーターカブリオレ『CLE』にワイドな専用エクステリアの“53 4MATIC+”を導入
AUTOSPORT web
ニュル「7分37秒」切り アウディRS Q8 パフォーマンスへ試乗 RSシリーズ最強の640ps!
ニュル「7分37秒」切り アウディRS Q8 パフォーマンスへ試乗 RSシリーズ最強の640ps!
AUTOCAR JAPAN
ランボルギーニ「ウラカンGT3 EVO2」を応援する「JLOC AMBASSADOR」を紹介…コスチュームはひと目で分かる大胆トリコローレカラー!
ランボルギーニ「ウラカンGT3 EVO2」を応援する「JLOC AMBASSADOR」を紹介…コスチュームはひと目で分かる大胆トリコローレカラー!
Auto Messe Web
「厳しいシーズンを団結して戦ったことは誇り」フェルスタッペンも予想外の苦戦。転機はモンツァ/チャンピオン会見 (2)
「厳しいシーズンを団結して戦ったことは誇り」フェルスタッペンも予想外の苦戦。転機はモンツァ/チャンピオン会見 (2)
AUTOSPORT web
フェルスタッペン「ラスベガスは今季を象徴するような週末」これまでとは異なる価値を実感/チャンピオン会見 (1)
フェルスタッペン「ラスベガスは今季を象徴するような週末」これまでとは異なる価値を実感/チャンピオン会見 (1)
AUTOSPORT web
「イライラが和らぐ」とドライバーも支持。IMSA、GTDプロ/GTDをめぐるルール変更を発表
「イライラが和らぐ」とドライバーも支持。IMSA、GTDプロ/GTDをめぐるルール変更を発表
AUTOSPORT web
トヨタ版「CX-80」は“4人乗り”仕様! 衝撃的な「カクカクボディ」採用した“個性派デザイン”が凄い! マツダ「3列シートSUV」とは異なる“めちゃ未来”なモデルとは!
トヨタ版「CX-80」は“4人乗り”仕様! 衝撃的な「カクカクボディ」採用した“個性派デザイン”が凄い! マツダ「3列シートSUV」とは異なる“めちゃ未来”なモデルとは!
くるまのニュース
【F1第22戦無線レビュー(2)】「目的を見失うなよ」「自分のレースをしている」戴冠を見据え冷静に走り続けたフェルスタッペン
【F1第22戦無線レビュー(2)】「目的を見失うなよ」「自分のレースをしている」戴冠を見据え冷静に走り続けたフェルスタッペン
AUTOSPORT web
ACコブラ、なぜ「大波乱」を呼んだ? 1960年代の伝説的スポーツカー 歴史アーカイブ
ACコブラ、なぜ「大波乱」を呼んだ? 1960年代の伝説的スポーツカー 歴史アーカイブ
AUTOCAR JAPAN
【今さら人には聞けないEV生活の基礎知識】充電スタンドの種類や探し方、電欠しない充電の仕方など、基本中の基本をお教えします
【今さら人には聞けないEV生活の基礎知識】充電スタンドの種類や探し方、電欠しない充電の仕方など、基本中の基本をお教えします
Auto Messe Web
ニッサンFEがシミュレーター大手のDynismaと提携。競争力向上を狙い特注の新型システムを導入へ
ニッサンFEがシミュレーター大手のDynismaと提携。競争力向上を狙い特注の新型システムを導入へ
AUTOSPORT web

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

332.0468.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

45.045.0万円

中古車を検索
A3の車買取相場を調べる

アウディ A3の中古車

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

332.0468.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

45.045.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村