ニューメキシコ州アルバカーキを抜け州境に近いギャラップへ
広大なアメリカを東西2347マイル(3755km)にわたって結ぶ旧国道「ルート66」をこれまで5回往復した経験をもつ筆者が、ルート66の魅力を紹介しながらバーチャル・トリップへご案内。イリノイ州シカゴから西に向かい、ミズーリ州、カンザス州、オクラホマ州、テキサス州を経て、今回はニューメキシコ州の中央部、最大の都市アルバカーキから州境ギャロップにかけての魅力的なレストランと宿を紹介します。
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アメリカン・グラフィティさながらのクラシック・ダイナー
芸術の街サンタフェを跡にし、旅は再びルート66へと復帰。次の目的地はニューメキシコ州で最大の都市、約56万もの人口を要するアルバカーキだ。サンタフェ同様にスペインの文化を感じるオールドタウンは大いに魅力的だが、いっぽう凶悪犯罪が多発するエリアもあり気軽に出歩ける場所は限定される。
ルート66ファンなら絶対に立ち寄りたいのは、中心部にあるクラシックな「66ダイナー」だ。ネオンが煌めく外観からインテリアにウェイトレスの制服まで、映画『アメリカン・グラフィティ』に登場するダイナーを彷彿させる。ハンバーガーやステーキといった料理は美味しいし、スタッフも非常にフレンドリーで居心地がいい。
宿がオールドタウンなら夕食は「ハイヌーン」でもいい。1785年に建てられ昔は非合法な賭博場だったらしく、現在のレストランがオープンしたのは1974年7月。後述のモーテルで「近くにオススメの店はない?」と聞いたところ、オーナーが「ここに行っておけば間違いない」と紹介してくれた。ハイヌーンがあるオールドタウンは治安も悪くないため、夜の雰囲気を楽しみつつ食後に散策してもいいだろう。
なお自分がいつも宿泊する「モントレー・モーテル」は、トゥクムカリの「ブルー・スワロー・モーテル」で紹介された。自分がタバコを吸わないと知ったら「アルバカーキにタバコ厳禁の宿があるから泊まってみな」と教えてくれ、実際そのとおりだったが最新のGoogleマップでは看板から「NON SMOKERS MOTEL」のネオンが消えている。オーナーが代わったのだろうか、仕方ないとはいえちょっと残念。
映画俳優たちの定宿エル・ランチョ・ホテル
アルバカーキの次に目指すのはアリゾナとの州境に近いギャラップだ。ここにも泊まることそれ自体が目的となる宿がある。1936年にオープンした「エル・ランチョ・ホテル」で、映画の父と呼ばれるD・W・グリフィスの兄、R・E・グリフィスが撮影の拠点とするべく建設した。当然ながら往年の大スターや監督たちが宿泊し、有名どころでは後に大統領となったロナルド・レーガンをはじめ、カーク・ダグラスやジョン・ウェインなど錚々たるメンツが並び、ホテルの各部屋には彼らの名前が付けられている。
2階まで吹き抜けのロビーはネイティブ・アメリカンの調度品を中心に、長い歴史と俳優たちの定宿であったことを偲ばせる豪奢な作り。フロントをはじめスタッフの応対はジェントルだし、館内にあるレストランやバーもいい雰囲気だ。ルート66が廃線になった後は荒廃した時期もあったようだが、見事に立て直し近隣でも人気の宿として知られている。週末は満室が当たり前という繁盛ぶりで、泊まりたいなら事前の予約は必須だろう。
ちなみに同じ敷地にはちょっとリーズナブルな「エル・ランチョ・モーテル」もあり、建物こそ新しめだが内装の雰囲気は負けず劣らずなので、そちらに泊まって食事を本館で済ますのもひとつの手だ。
地元の英雄「ヒロシ・ミヤムラ」の足跡を辿ってみよう
余談だがギャラップの街をドライブすると、やけに「Miyamura」なる名前が目に付く。気になって調べたところヒロシ・H・ミヤムラというギャラップ出身の日系人で、第2次世界大戦はアメリカ合衆国の軍で最多の勲章を受けた通称「442部隊」に所属し、朝鮮戦争では撤退する味方を援護し捕虜となり28カ月もの長期にわたって拘留。後に大統領のドワイト・アイゼンハワーから名誉勲章を授与された、いわば地元の英雄であり2022年11月に97歳で亡くなっている。ヒロシ・H・ミヤムラ・ハイスクールやミヤムラ・オーバーパスなど、いずれもエル・ランチョ・ホテルから近いので探し歩くのも一興だ。
* * *
ギャラップから30分も走ればアリゾナ州だが、その前にもうひとつ寄り道したい場所がある。感動というよりも畏怖すら覚える大絶景、秘境ミューリー・ポイントまでドライブしてみよう。
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