積算2037km 意外なほど柔らかい乗り心地
text:Richard Lane(リチャード・レーン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
トヨタGRスープラに乗って、1か月ほどが経つ。ロングノーズのシルエットを持つスープラだが、徹底したスポーツカーというより、グランドツアラー寄りの性格にあることが見えてきた。
かなりアグレッシブなボディデザインにも関わらず、乗り心地は驚くほど柔らかい。日常的に乗るクルマとしては、うれしい喜びに思える。
積算3669km アウトバーンをスープラで走る
スープラで長距離ドライブできる日を待っていた。そして先月、初めての機会がやってきた。
AUTOCARの英国編集部へ、BMWから連絡があった。新しい128tiプロトタイプへの試乗の打診。断るはずがない。
BMWのR&D本部は、ドイツ・ニュルブルクにある。フランクフルトまで飛行機で向かい、バスで移動するか、自ら直列6気筒ターボを回して向かうか、移動方法が選べる。
新型コロナウイルスの影響で、国を超えた移動には制限がある。ドイツへの往来は、英国政府の制限から外れていた。もちろん、制限されればクルマでの移動自体できなくなる。
心配したものの、無事にスープラでドイツへ向かえた。走行距離は、一気に1600kmほど増えた。その多くは、アウトバーンで刻んだもの。257km/hのスピードリミッターに当たっても、まだスープラには余裕があるようだった。
GRスープラは、長距離を驚くほど高速に走れる。絶対的なスピードという意味ではなく、スープラの場合、高速時のマナーがとても優れているのだ。
ロングなギア比に太い低速トルク
絞られたフロントノーズと有機的なカーブを描くボディは空力的にも良いようで、風切り音は小さい。サスペンションのラバーブッシュは優しく、ミシュラン・パイロット・スーパースポーツというタイヤも当たりがマイルド。
8速まで切られたギア比も、比較的ロング。レブリミットまで回せば、理論的に空気抵抗などがなければ426km/hまで出る計算。130km/hでのクルージングは、2000rpmを少し超える程度。
それでいて、優れたパフォーマンスがすぐそばにある。BMW製の直列6気筒ターボは、50.7kg-mという太いトルクを、わずか1600rpmから生み出す。
加えてスープラは、重いわけではない。先日計測する機会があったのだが、燃料タンクに25%ほどガソリンが入った状態で、1497kgしかなかった。
小さなクーペボディとしては、軽い方ではないだろう。しかし、これだけ太いトルクがあれば、問題になる重さではない。高速クルージングは、とても容易い。
動的性能に合わせるように、シートの彫りは深く、ステアリングホイールの肉付きは良い。少し操舵感は人工的だけれど。
2シーターの車内は、比較的タイト。フロントウインドウは横長に切り取られたようだが、視界は良い。サイドウインドウはスリムで、安心感がある。一部のドライバーは、長距離ドライブの相棒として気にいる雰囲気だと思う。
BMW M440iのような、開放的なコクピットを好むドライバーもいるだろう。グリルのデザインは別として。
M2やケイマンを超えるグランドツアラー
大きなリアハッチをひらけば、290Lと充分な容量の荷室が姿を表す。運転席側から荷物の出し入れもできる。これは想像以上に便利。ちなみに、ボディサイズの大きいフェラーリ812は、320Lの容量がある。
フェラーリ812との比較は、不釣り合いに思えるかもしれない。エンジンのシリンダー数は半分で、馬力は42%だけ。しかし、現実的な速さに不足はなく、歩道から集める視線の量は同じくらい多い。乗り心地はしなやかで、用意する金額は812の21%で済む。
スープラも運転を存分に楽しめるし、スタイリングのエレガントさでは、筆者は引けを取らないとさえ思う。見事なグランドツアラーの1台だ。
約5万ポンド(675万円)というスープラの英国価格は、中古のポルシェ911も買える値段。車内空間もより広いし、着座位置も低い。車内はスープラより少しうるさいが、困るほどではない。それも魅力的ではある。
免疫テストの結果次第だが、今度はイタリアへ向かう予定。フェラーリ812との比較ではなく、休日のドライブ旅行として。
こんな旅なら、BMW M2コンペティションが今までは良い選択肢だった。ポルシェ・ケイマンなら、よりベター。しかしトヨタGRスープラは、それ以上にイイ。でも、2.0LのジャガーFタイプの方が、もっと良いかもしれないが。
テストデータ
気に入っているトコロ
直列6気筒エンジン:S58型と呼ばれる、新しいM3へ搭載されるエンジンも体験した。だが、このシングルターボのB58型の方が、トップエンドでのサウンドはより気持ちいい。
気に入らないトコロ
タッチモニター:BMW Z4からそのまま移設されていればよかった。自動調整となる画面の照度の設定がおかしい。時々読めなくなる。
テスト車について
モデル名:トヨタGRスープラ・プロ(英国仕様)
新車価格:5万4340ポンド(739万円)
テスト車の価格:5万4960ポンド(747万円)
テストの記録
燃費:11.5km/L
故障:なし
出費:なし
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みんなのコメント
エンジンと足回りそれとタイヤの良さが分かる記事だね
このスープラでトヨタは新しい基準が見えてるとイイけどね
BMWバッチが着けばもっと売れていそうです。