シフトミスをしたことを教えてくれるアラート的な役割を果たす
MT車の運転中、シフトアップあるいはシフトダウンするときに、「ガリガリッ」と嫌な音をさせてしまったことはないだろうか。
もはやMTに存在価値ナシ!? イマドキのATの強烈な進化っぷりとは
これがいわゆる「ギヤ鳴り」で、クラッチの踏み込みが浅く十分クラッチが切れていないときにシフトレバーを動かそうとしたときや、シフト操作中にクラッチペダルを離してしまったときなどに生じる音。いわばシフトミスしたことを知らせてくれるアラートでもある。
いまのクルマのマニュアル・トランスミッションは、常時かみ合い式のシンクロ・メッシュ・タイプなので、「ギヤ鳴り」といっても、ギヤとギヤが噛み合うときに音が出るわけではなく、シンクロメッシュ機構から出る音のことをいう。シンクロメッシュ機構は、シフトレバーで選択したギヤをシャフトに固定するときに、シャフトとギヤの回転を同期させるための仕組みだ。
少々ややこしくなるが、このシンクロの仕組みをざっと説明しておこう。
繰り返しているとオーバーホールするしかなくなることも
普通のMTは常時噛み合い式なので、ギヤ自体はすべてフルタイムで噛み合っている。噛み合ってはいるが、ニュートラルのときは駆動輪に繋がっているカウンターシャフト側のギヤは空転していて、シフトレバーを動かし、スリーブが空転しているギヤと連結したとき、駆動力がタイヤに伝わる仕組みになっている。
このとき、スリーブはそれまでのギヤが回っていた回転数で回転していて、変速比に差がある次のギヤ=空転していたギヤとは、回転差が生じる。その回転差を無視してシフトレバーを動かし、スリーブをスライドさせようとするとギヤが鳴る。これがギヤ鳴りの正体。
シンクロ付きのミッションは、それを防ぐためにスリーブ内部に円錐のクラッチ、シンクロコーン(シンクロナイザリング)を設け、スリーブが入る前にそのシンクロコーンが、まず次のギヤに接触し、スリーブとギヤの回転数を同期させてから、スリーブが連結するようになっている。
このシンクロ機構が十分機能し同期が完了していれば、ギヤはスコッと気持ちよく入り、同期が不完全だと金属接触で「ガリッ」とギヤ鳴りが出てしまう。
このギヤ鳴りの原因は、多くの場合、クラッチの切れが不完全の場合。クラッチの踏み込みが浅かったか、クラッチミートが早過ぎたと思えばいい。
また普段からシフトチェンジが荒い人や、ギヤ鳴りを何度も繰り返すと、シンクロコーンやシンクロと噛み合うギヤコーンの突起部が摩耗して、同期させる能力が低下し、ますますギヤ鳴りしやすくなる……。
シンクロが摩耗した場合は、ミッションをオーバーホールするしかなくなるので、それなりの出費を覚悟しなければならない。
そうしたギヤ鳴りを防ぐには、 1.確実なクラッチワーク
2.正確で丁寧なシフト操作(力まずゲートに逆らわず、シフトミスは厳禁)
3.ミッションオイルの定期的な交換 が重要。
クラッチやシンクロを長く持たせるのも、MT車オーナーの腕の見せ所なので、シンクロを傷めないシフトチェンジをマスターするよう研究してみよう。
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クラッチを切っていてもガリガリ鳴って入りません。