スポーツカーを諦めないことの意義
GRスープラが登場してはや2年半。同じ日本の代表的スポーツカーの日産フェアレディZも休止期間を経て復活し、世界的に大歓迎で迎えられたこともあってスープラの復活はあらためて喜ばしく思う。マツダ・ロードスターやポルシェ911のように、たとえ一時期は販売不振の時代が訪れようと、やはり作り続けることが大切なのだ。日産はフェアレディZでその重要性を認識したであろうし、トヨタも2019年にスープラの復活を発表したのは、86に続いてスポーツカーをあきらめない姿勢を大いにアピールできたに違いない。
トヨタスープラが約2000万円! 日本車も健闘した「RMオークション落札価格トップ5」
話はそれてしまうが、例えばポルシェ911はリヤエンジンではこれ以上先は望めないという時期があり、FRの924や928などを生産したといわれていた。これらの車種を経て、ボクスターや911を作り続けたことで現在の稼ぎ頭のSUVモデルがある。もし911を販売終了していたら、現在のSUVの成功はあったのだろうか?
また欧州のオープンスポーツ勢が収益性から生産をあきらめるなか、マツダはユーノス・ロードスターを発売。初代が1989年ながら現在も発売を続けていることで、ギネスブックに載るほどの販売台数を記録更新中だ。これによってマツダのブランドイメージは向上した。別にいつかロードスターを買ってくれればよいと思って作っているのではなくて、ロードスターを作り続けているからマツダというメーカーは信用できる。その影響はほかのモデルにも波及影響していることは間違いない。
モータースポーツのF1、ルノーはアルピーヌに名称を変更したのだが、ルノー・スポールよりもアルピーヌの名が大事だから変更したのだろう。アルピーヌのブランドがこれからどうのように発展していくのかはわからないが、一時期は消えてしまっていたアルピーヌという名称を使って、今後もまた名も実も取りに行くのだろう。とにもかくにも歴史と名称はブランドにとって大事なものなのだ。
スープラ復活の余話
そこでGRスープラであるが、おそらくトヨタ単独ではスープラを復活できなかった。そのためBMWと共同開発に至ったのだと思うのだが、これはうまい方法だと思う。噂は噂なのだがBMWがトヨタに声をかけたとか、トヨタがBMWに提案したなどと飛び交っているが、とにもかくにもBMW Z4の新型が発売されて、トヨタ・ス―プラも復活できた。それだけで素晴らしいと思う。
トヨタ・スープラは2019年に「GR」ブランド初となるモデルとしてお披露目され、17年ぶりの復活だった。先代の4代目を運転訓練で親身に乗り続け、スープラを旧友と称する豊田章男社長の強い思いがあるのだろう。4代目は販売終了後も長くトヨタのFR車のハンドリングのベンチマークとして使われてきたというから、社内にも「新型が欲しいなあ」という声があってもおかしくない。それほど優れたモデルの後継車がないのは、トヨタにとっても損失だろう。スープラは復活を遂げて、トヨタの長い歴史のなかでも重要な存在となっている2000GTなどの雰囲気も感じさせる、ダブル・バブルのルーフやスポーツカーらしいロングノーズのFRスタイリングで、見事復活を遂げたわけである。
BMW Z4で見れば、マツダ・ロードスターで復刻したオープンカーブームでZ3が登場。その後Z4を名乗るが、クルマの良し悪しと販売台数がリンクしないのが自動車販売の難しいところ。Z3同様に雨後の筍だったライバル・メーカーのオープンモデルはほぼ姿を消しており、BMWとしてもZ4ではなくて3シリーズや4シリーズのカブリオレで対応する手段もあったと思う。
しかしトヨタとBMWが手を組んだことで、この両車は販売されたのだ。どちらも単独でも発売されたかもしれないが、少なからず相乗効果はあるだろう。そしてどちらのファンにも選択肢が増えたともいえる。
両者は似通っている。Z4の全長4335×全幅1865×全高1305mm、スープラは同4380×1865×1290mm(RZ)、ホイールベースは同じ2470mmなので、この2台は姉妹車だ。エンジンも直4と直6のターボで出力も同じ。
スープラとZ4 似て非なる点に選び甲斐あり
だが、BMWとトヨタはうまくやったのだと思う。スープラのインテリアはBMWらしさを感じさせる。左側通行の右ハンドルの日本と同じ国際基準の左側のウインカーレバーや、シフトノブのスポーツモードへのセレクトが左側に倒すこと。マニュアルモ―ドを手前に引くとシフトアップ、前に押すとシフトダウンなど、これは日本仕様のBMWのお約束だ。
しかし変更の余地が少なかったとしても、トヨタらしさも感じさせる。インテリアのシートやスイッチ、トリム等々に違いが見られるし、情報装備関連やメーターは視認性に優れている。現在のBMWのタコメーターは反時計周りで、これを受け入れられないという方は筆者を含めて少なからずいると思う。
さらにタイヤもトヨタがラジアルタイヤへのパンク修理キットを積むのに対して、BMWはお約束のランフラットタイヤを装着する。(注:スープラはSZグレードのみランフラットタイヤが標準)
それゆえに、Z4とスープラのオープンとクーペの違いも日本車と輸入車の垣根を壊してくれる可能性は十分だ。例えば、BMW好きがZ4にオープンを求めていない場合ではスープラが購入対象になる。そしてトヨタのファンが2シーターのオープンが欲しいとなればZ4を検討するだろう。トヨタ好きがBMWを意識し、BMWオーナーがスープラを気になる存在として購入対象として考える可能性が出てきた。
加えて、かつてはFRのみだったBMWだが、現在の1シリーズや2シリーズはFFとなる。ところがホットなM2は次期型もFRとなるようだ。その際はZ4のプラットフォームを改良して使うと噂されているので、走りの新型M2にも期待が高まる。
今後は電気関連に開発予算を取られてしまい、ICE(内燃機関)モデルの開発は縮小されてしまうだろう。しかしZ4とスープラ、そしてその後に販売されるモデルたち。これはウィンーウィン以上の効果をもたらす新しいシナジー効果のベンチマークなのだ。
■GRスープラ RZ
全長×全幅×全高=4380×1860×1290mm
ホイールベース=2470mm
トレッド 前/後=1595mm/1590mm
車両重量 1530kg
乗車定員 2名
最小回転半径 5.2m
最低地上高 112mm
エンジン B58型直列6気筒DOHC24バルブ・ターボ
総排気量 2997cc
最高出力 285kW(387ps)/5800rpm
最大トルク 500N‣m(51.0kg-m/1800~5000rpm
トランスミッション 8速AT
タイヤサイズ 前:後 255/35ZR19:275/35ZR19
ブレーキ 前:後 ベンチレーテッド・ディスク(前後とも)
サスペンション 前:後 ストラット式: マルチリンク式
■BMW Z4 M40i
全長×全幅×全高=4335×1865×1305mm
ホイールベース=2470mm
トレッド 前/後=1595mm/1590mm
車両重量 1580kg
乗車定員 2名
最小回転半径 5.2m
最低地上高 114mm
エンジン B5850B型直列6気筒DOHC24バルブ・ターボ
総排気量 2997cc
最高出力 285kW(387ps)/5800rpm
最大トルク 500N‣m(51.0kg-m/1800~5000rpm
トランスミッション 8速AT
タイヤサイズ 前:後 255/35ZR19:275/35ZR19
ブレーキ 前:後 ベンチレーテッド・ディスク(前後とも)
サスペンション 前:後 ストラット式: 5リンク式
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みんなのコメント
キビキビというより、どっしり
なんだかなぁって感じよね。