F1はオーナー企業がアメリカのリバティ・メディアへと変わったあと、変化を加速し、新型コロナウイルスの感染拡大によるダメージを受けつつも成長路線を歩んできた。
現在、その成長を更に加速させると見られているのがアウディとポルシェ、2メーカーの新規参入だ。彼らはパワーユニット(PU)が次世代規定となる2026年以降の参戦を目指しているのだ。
■アルピーヌCEO、アウディとポルシェのF1参入を歓迎しつつもチクリ「我々が貧乏くじを引いてはいけない」
PU供給という形の新規参戦は、2015年のホンダ以来。そのホンダは2021年限りで活動を終了させてしまっているため、2022年現在はフェラーリ、メルセデス、ルノーの3メーカー体制という形になっている。
「ポルシェ、そしてアウディのF1参入はこのスポーツにとって非常に喜ばしいことだと思う」
そう語るのはフェラーリのマッティア・ビノット代表だ。
「そうしたブランドと競うのは我々にとっても素晴らしいことだ。全体として、私はそれ(新規参戦)は良いニュースだと思うし、我々は大いに喜ぶべきだと思う」
そしてメルセデスのトト・ウルフ代表もこうした見解に賛同している。
「フォルクスワーゲン・グループがF1に参戦したなら、それは素晴らしいことだ」と、ウルフ代表は言う。
「素晴らしいブランドだし、そうなれば我々の行なっていることの信頼度を高めてくれる。そして彼らはレーサーなんだ。ただ私の知る限りでは、まだ確約はされていない」
「彼らはレギュレーションを巡る交渉の席についているが、実際に参戦が確定するまで、我々はどんなプランがあるのか本当に分からないんだ」
実際、フォルクスワーゲン・グループの新規参入には2026年以降のレギュレーションが大きく関わってくることは明らかになっている。その背景には、新規参入者が得られる優遇措置と、その管理方法についての議論が存在する。
優遇措置(コンセッション)は、フォルクスワーゲン・グループの計画の重要な部分だ。これまで同グループはF1に参戦し、先行する他メーカーとの間で、何かしらの助けなしに競争することについては及び腰だった。
そして彼らは2026年以降の新規定において、高コストな要素の変更、特にMGU-H(熱エネルギー回生システム)の撤廃を待っていた。技術的な持ち越しは依然としてあるが、新たなPU規定により、全員にとって”新鮮な”スタートとなる。
そしてさらにコストカットの一環として、PUの開発にかかる費用も予算上限に含まれてくる。また空力開発と同様にテストベンチもより多く使用できることになるだろう。
そしてこうした規制と新規参入については、ライバルチームから懸念の声が挙がっているのも確かだ。
正式な計画はまだ確定していないものの、フォルクスワーゲンとしてはアウディとポルシェ、それぞれが独立したプロジェクトを展開するつもりなのは明らかだ。ポルシェはレッドブルと協力し、アウディはWECのハイブリッドプログラムを成功させたドイツの拠点に集中すると見られている。
この体制から持ち上がる懸念が、彼らのリソース共有と、そもそもの”新規参入”の定義だ。
レッドブルはホンダの活動終了に伴い、新たにレッドブル・パワートレインズを拠点に設立。ホンダのPU知的財産権を活用し、自前でPUを用意する道を選んだ。そしてポルシェとの協力では、このホンダ製PUを”ルーツ”とする可能性があり、結果として新規参入メーカーとしての立場を超えるようなスタートを切るのではないか、という懸念が持ち上がっている。
もうひとつはポルシェ、そしてアウディのプロジェクトが本当に独立しているのかという点だ。彼らが両社の利益のために、研究開発のリソースを共有し、前述のような制限を形骸化する協力がない、といった確証をライバルは求めている。
ウルフ代表は、こうした懸念に関して次のように語っている。
「実際に、誰がパワーユニットのサプライヤーとして参入するかは定かになっていないと思う」
「そして誰が”新規参入”だと発表するのかもだ。同じグループから3社が参入するというのも起こりうるんだ。我々はなんと言えばいい? 未来図は未だに不透明なんだ」
何が許されて何が許されないか……理論的には今後数ヵ月間で決定される必要がある。
「レギュレーションそのものだが、我々は6月までには完成させ、投票を行なうことが目標になる」と、ビノット代表は言う。
「ポルシェとアウディが参入する可能性を考慮して話し合いを行なっていた。その点でなにか新しいことがあるわけではない」
「その点ではニュースは無いが、全体としてはまだ議論すべき点がある。財務レギュレーションには、まだ未決定なモノがあるのだ。そのため、最終的なモノへ正式化しなくてはならない」
「新規参入とは何か? どう定義するのか? 新規参入者の利益とは何か?……そうしたことを明確化し、定義する必要がある」
「とりわけ知的財産の移転についてだ。知財というものを移転できないようにすべきだ」
「これは合意されている。それをどう文言に落とし込むかが難しい。技術的な面ではまだ議論をしている部分もある。つまり検討を進めて決めるべきことはたくさんあるんだ。今から6月なんていうのは大した時間はない。つまりこの仕事は優先度を高く持ってやらなければならないコトになる」
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