バーニー・エクレストンの生涯にスポットライトを当てたドキュメンタリー番組『Lucky』が、世界中で配信中。日本ではスポーツチャンネルDAZNで、全8話となるエピソードが、順次公開されている。
このLuckyは、2012年の英国アカデミー賞のドキュメンタリー賞と編集賞を受賞した『アイルトン・セナ 音速の貴公子』の脚本を手がけたマニッシュ・パンディが監督を務めている。
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40年以上にわたってF1を支配してきたエクレストンは、リバティ・メディアがF1を買収したことにより、2017年にF1の表舞台から退いた。そして現在92歳になったエクレストンは、1950年から2017年まで、F1の世界で経験してきたその隅々までを語っている。
エピソード1では、エクレストンがファンとして観戦した1950年のイギリスGP(つまりF1世界選手権として最初のレース)からスタートする。当時の貴重な映像が使われている上、エクレストン本人がナレーションを務めている。
F1のフロントマンとしては口数の少なかったエクレストンだが、このドキュメンタリーでは、饒舌に当時のことを語る。時には陽気に、そして時には物悲しい雰囲気で……彼自身は、自分の物語を語ることに、抵抗がないように見えた。
50年代から70年代は特に、多くの死亡事故が起きた時代でもある。当時のF1は、マシンとレースコースの安全性は悲惨なほど不十分だった。そのためエクレストンは1980年代にF1の主導権を握ると、シド・ワトキンス教授をF1の医療スーパーバイザーとして任命し、安全性を推進する役目を果たした。
エクレストンはこのドキュメンタリーで、彼の得意分野である密室での取引についても詳しく説明している。ただ当然当時のアーカイブ映像は存在しないため、アメリカンコミックのようなアニメーションで表現されている。アニメーションを使うと、安っぽく見えてしまうこともあるが、今回の場合は実に生々しく当時を説明しているように感じられた。
前述のように、エクレストンをメインのナレーターとして起用することは、かなりの挑戦だったと言えよう。しかしこの物語は、完全に彼の目線で見ることができるようになっている。F1の歴史は、他の人々も話をするが、それは現代になってから行なわれたインタビューによるもの。それも、事実のほんの一部にすぎない。
今回のエクレストンの語りは、実に効果的に機能している。エクレストンは真っ白な壁の前で語っており、スポットライトを当てられ、カメラを真っ直ぐに見つめるエクレストン。その表情や感情が、手に取るように分かる。
エクレストンには多くの子供がいるが、一番小さいのは彼が89歳の時に生まれたエース。まだ3歳である。その彼にとっても、父親が自身のことについて語るこの映像は、大いなる財産となるだろう。そしてそれは、我々ファンにとっても同じように貴重な財産となる。
多くの伝記作家や映画の製作者が、バーニーの物語を作品にしようとしてきた。しかし今回パンディは、適切なタイミングで適切なアイデアを持ち、そして適切な場所にいたと言える。そして作品中でバーニーは、F1で彼と共に働いた誰もが想像できないような形で、オープンに語っている。
もちろん、他のドキュメンタリーと同じように、この作品では主人公であるエクレストンの視点からしか語られていない。しかしF1に興味を持っている人にとっては、このスポーツがどのようにして年間20億ポンド(約3,300億円)を稼ぎ出すシリーズとなり、世界最大のスポーツシリーズのひとつとなったか、その理解を深める一助となるはずだ。
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両方ともカネの匂いしかしない