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究極のスーパー・ホットハッチ【メガーヌ R.S. トロフィー試乗記】

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究極のスーパー・ホットハッチ【メガーヌ R.S. トロフィー試乗記】

「かのニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ(北コース)量産FWD(前輪駆動)車最速の遺伝子」をうたうメガーヌ ルノー・スポール(R.S.)トロフィーの試乗会が筑波サーキット・コース2000で開かれた。

ルノーは本年4月5日に、このメガーヌR.S.トロフィーから後席その他を取っ払い、130kgもの軽量化を図ったスペシャルで北コースに挑み、7分40秒100という新記録を樹立。「量産FWD車最速」の看板を再び掲げるためにも、ルノー・スポールはトロフィーRを500台限定販売することを発表している。

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【主要諸元(EDC仕様)】全長×全幅×全高:4410mm×1875mm×1435mm、ホイールベース:2670mm、車両重量:1470kg、乗車定員:5名、エンジン:1798cc直列4気筒DOHCターボ(300ps/6000rpm、420Nm/3200rpm)、トランスミッション:6AT、駆動方式:FWD、タイヤサイズ:245/35R19、価格:499万6000円(OP含まず)。トロフィーという名称は2005年のメガーヌIIR.S.トロフィーという限定生産モデルで初めて使われ、メガーヌIIIでは3度、限定20台から、多くても450台までで登場している。どういうときにトロフィーとつけるのかは、たぶんラテン的な気まぐれだろうと筆者は思うけれど、それはともかく、新型トロフィーは初のカタログ・モデルになり、継続生産される。これはニュルブルクリンクFWD車最速の称号を賭けて、ホンダやフォルクスワーゲンの次なる挑戦を待っている、ということではあるまいか。

申しあげたかったのは、メガーヌR.S.トロフィーは天下一の難コース「グリーン・ヘル(緑の地獄)」に挑む“本格派”だという点である。スタンダードのR.S.とは、まずエンジンからして異なる。1.8リッター直列4気筒ガソリンターボ・エンジンの最高出力を279psから300psに、390Nmの最大トルクを、6MTは400Nm、デュアル・クラッチの6EDC(エフィシェント・デュアル・クラッチ)は420Nmに増強している。

ボディは全長×全幅×全高:4410mm×1875mm×1435mm。写真のボディカラーは「ジョン シリウスM」(16万円のオプション)。メガーヌR.S. 史上、もっともパワフルなこのエンジン、特徴はターボのタービンの軸受けに、ルノー・スポールのF1エンジンのテクノロジー「セラミック・ボール・ベアリング」を採用している点だ。スチール製より軽くて硬くて滑らかなので、応答時間が大幅に短縮できるという。

足まわりは、メガーヌR.S.同様、4コントロール(4輪操舵)と、HCC(ハイドロリック・コンプレッション・コントロール)なるルノー・スポール自慢のダンパーにくわえ、シャシー・カップと呼ぶ硬派セッティングが施されている。いわく、スプリング・レートを前23%、後ろ35%、ダンパーのレートを各25%、フロントのアンチ・ロールバーとリア・アクスルの剛性を、それぞれ7%、11%あげている。狙いはもちろん、ロールを抑えて正確なハンドリングを得ることにある。

トルセン式メカニカルL.S.D.(リミテッド・スリップ・ディファレンシャル)も特筆すべき装備のひとつだし、ブレーキでは冷却性能を向上させるべくスリット入りのディスクを採用している。

エクステリアで目立つのは、F1のフロント・ウィング由来と思しきスポイラー(「F1タイプ・エアインテーク・ブレード」と呼ぶ)、真っ黒けの弓形のそれに“TOROPHY”と大書したデカールが貼られていること。もうひとつは、2014年発表のワンメイク用レーシング・マシンとして開発されたR.S. 01コンセプトとおなじ、サクラの花びらにも似たデザインのホイールが採用されていることだ(もっとも、試乗会にはO.Z.のホイールを履く個体もあって、保守的な筆者はこちらのほうがよいと思った)。

「TROPHY」と呼ぶ19インチ・アルミホイール。アクティブ・バルブ付きのスポーツ・エグゾーストは標準。インテリアは、アルカンターラが表面に使われたレカロのフロント・バケット・シートと、これまた上部と下部にアルカンターラが貼られたナッパ・レザーのステアリングホイールが奢られている。

そうそう、アクティブ・バルブ付きのスポーツ・エグゾーストも目玉装備のひとつ。うしろから見ると、排気口がふたつあって、片方は閉じている。これを電子制御の走行切り替えシステムでコンフォート、ニュートラルからスポーツ、もしくはレースへと切り替えると、閉じていたバルブが開いて、エンジンのポテンシャルをフルに引き出すと同時にサウンドが変わる。

インテリア・デザインは、標準モデルとおなじ。痛快にサーキットを駆けまわる試乗車はEDCで、245/35R19というブリヂストンの高性能タイヤを履いている。試乗は10分×2本。サーキット走行ともなれば、ただ全開を心がけるのみである。そこでわかったのは、いつなんどきでも、恐ろしく安定しているということだ。

ハンドリングは正確で、思い通りに曲がる。筆者程度の速度では何事も起きない。第1ヘアピン、続くS字、第2ヘアピンを立ち上がるところから全開、裏のストレートも全開で170km/h程度に達し、そこから減速して入る最終コーナーまで、FWDなのにニュートラルステアを維持し続ける。トルクステアがほとんど感じられないのは、ホンダ「シビック タイプR」も使っている、DASS(ダブル・アクシス・ストラット・サスペンション)、往年のトヨタのスーパーストラットにも似た構造のフロント・サスペンションのおかげだろう。

駆動方式はFWD(前輪駆動)のみ。搭載するエンジンは1798cc直列4気筒DOHCターボ(300ps/6000rpm、420Nm/3200rpm)。トランスミッションはデュアルクラッチタイプの6ATまたは6MTが選べる。ステアリング・ホイールはナパレザー×人工皮革(アルカンターラ)のコンビタイプ。それにしても、ブレーキはタフの極みで、10分の連続走行を少なくとも1時間は繰り返したはずだ。なのにペダルの感触も含めて、1周目となんら変わらない。フロントはブレンボの4ピストン・モノブロック・キャリパー、リアはTRW(現在はZF系のサプライヤー)のモノピストン・キャリパーなのはスタンダードのメガーヌR.S.とおなじだけれど、トロフィーでは前輪の素材が鋳鉄製ベンチレーテッド・ディスクとアルミ製のハブを採用したバイマテリアル構造になっていて、冷却性の向上と、3.6kgの軽量化を実現している。

あえて申しあげれば、1本目の1周目は、4コントロール(4WS)が効きすぎのような感があった。急激に、ヒョイっと曲がるのだ。よく曲がることはよいことだけれど、こちらの心構えができてないから、おっかない。でも、慣れてくると、まったく気にならなくなった。

4コントロールは通常、60km/h未満の走行では後輪を逆向きにして俊敏性を高め、それ以上の速度になると4輪を同じ向きにして安定性を向上させる。レース・モードにすると、その切り替えを100km/hにあげる。ヘアピンではどちらのモードでも100km/h未満に減速している。つまり、逆相になっている。てことは、ドライバーはいつの間にか、ヒョイッと曲がることを想定してステアリングを操作するようになったわけだ。これは車両が予測可能な動きをしている、ということの証左ではあるまいか。

WLTCモード燃費は12.4km/L。フロントのバケットシートはレカロ社製。シート表皮はアルカンターラ。リアシートはセンターアームレスト&専用エアコン吹き出し口付き。リアシートのバックレストは40:60の分割可倒式。ラゲッジルーム下は、4輪操舵システムの機構などが搭載されているため、小物入れなどはない。レース・モードにすると、ESC(横滑り防止制御)がカットされる。それでもリアのグリップがしっかりしていて、不安はない。

安定していて退屈、ということではまったくない。安定しているから、ハラハラドキドキすることなくアクセルを開けることができる。痛快にサーキットを駆けまわり、爽快な汗をかくことができる。スピードに慣れるための練習用車両として最適の1台であると筆者は思う。いま、500万円以下で、これほどサーキット走行を連続して楽しめるクルマはあるまい(あるとすれば、ホンダ シビック・タイプRだけれど、英国工場の閉鎖もあったりして、まもなく販売が終了する……)。

車両重量は1470kg(EDCモデル)。メーターパネルは7インチフルカラーTFT液晶付き。メガーヌR.S.トロフィーは、サーキットにおけるタフネスの最大級の賛辞がポルシェだとすれば、ホットハッチのポルシェである。

いや、モータースポーツの最高峰であるF1に参戦しているルノーに対して、不適当な表現でした。

ポルシェなにするものぞ。ルノー・スポールが主張しているように、こいつはFWD車最速キングの遺伝子を持つ、究極のスーパー・ホットハッチなのだ。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)

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