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マツダ新型RX-9 待ち焦がれるロータリースポーツ まだ可能性はあるか!? 絶滅か!??

掲載 更新 80
マツダ新型RX-9 待ち焦がれるロータリースポーツ まだ可能性はあるか!? 絶滅か!??

 5年前の第44回東京モーターショーで、マツダは、RX-VISIONという、次世代ロータリーエンジンを搭載する後輪駆動のスポーツカーコンセプトを出展した。

 自動車媒体を中心に、「2003年に途絶えたロータリースポーツカー、RX-7復活か!?」と、沸き立った。

必要? 不要!? トヨタと日産が投入確実!! 軽自動車の電動化は進むのか?

 だが、私はあり得ないだろうと思ったし、次世代エンジン技術で本質を極めるSKYACTIVを推進するマツダの姿勢をいぶかった。その理由を、これから話してゆこう。

文:御堀直嗣、写真:マツダ、日産、ポルシェ

【画像ギャラリー】東京モーターショー2015で世界初公開したRX-VISIONをみる

ロータリーエンジンとはなにか?

 まず、ロータリーエンジンとはどのような長所と短所を持つのかを知る必要がある。

 マツダが量産してきたロータリーエンジンは、ヴァンケル型と呼ばれる方式だ。これを最初に開発したのは、ドイツ人のフェリックス・ヴァンケルである。そしてドイツのNSU(現アウディの前身)が実用化した。1953年に、ヴァンケルスパイダーとして生産された。

 エンジンの機構は、繭型の外筒(ハウジング)の内側を、三角形をした回転体(ローター)が回り、ハウジングとローターの隙間にできる燃焼室でガソリンを燃やし、回転力を生み出す。

 利点は、ローターの回転で燃焼室部分が連続的にガソリンを燃焼できるので、現在我々が知るレシプロエンジン(シリンダーの中をピストンが上下する)でいえば、2ストロークのように燃焼を続けられるため、より大きな力を出せる。

コスモスポーツL10A型エンジン

 そのため、小型化できる。4ストロークエンジンは、ピストンの往復で1回休みが入る(燃焼の次は排気するため、燃焼を行えない)。

 ロータリーエンジンは、2つのハウジング/ローターで、4ストロークエンジンの4気筒並みの燃焼を得られるため、小さく収まるのだ。

 また、ピストンのような往復運動がなく、回転体だけで構成されるので、機構の違いからも小型化できる。

 マツダが、1967年にロータリーエンジンを搭載する最初の車種としてコスモスポーツという2人乗りスポーツカーを選んだのも、小さなエンジンで大きな馬力を出せることを最大に活かしたからだ。それがのちの、RX-7やRX-8へつながる。

コスモスポーツ(1967年)

 いっぽうで、マツダはその弱点に苦しんだ。ハウジングの中をローターが回転し続ける機構に耐久信頼性を与えるまでの苦闘は有名だが、その後の燃費問題でも苦労をしている。

 ロータリーエンジンは、機構を解説したように、ハウジングの中をローターが回転する。それによってつくられる燃焼室は、長方形をしている。一般的なレシプロエンジンの燃焼室は、丸形だ。

最後の市販ロータリースポーツカーであるRX-8(2003年~2013年)

 燃費を向上させるためには、使ったガソリンを残さず燃やし尽くすことが肝心で、現在のエンジン技術はその一点に集約されているとさえいえる。また排出ガス浄化においても、燃え残りのガソリンが排気されることはよくない。

 燃焼室へ送り込まれたガソリンを燃やし尽くすには、燃焼室の頂点にある点火栓(プラグ)の火花で、燃焼室の隅々まで素早く均等に火炎が伝播していく必要があり、丸い燃焼室なら均等に燃え広がる。

新型ロータリーエンジン「RENESIS」(2001)

 ところが、長方形の燃焼室では、火炎が早く行き着く側と、なかなか行き着かない側とができ、燃え切らないガソリンが排気される可能性が出る。だから、燃費が悪い。

 またレシプロエンジンでは、圧縮比を高めることで効率を高めているが、ロータリーエンジンはハウジングの内側をローターが回転する機構なので、圧縮比には制約がある。

 いっぽう、排出ガス浄化では、ローターの回転によって燃焼室が移動するので、燃焼温度が高くなりすぎず、窒素酸化物(NOx)の排出が少ないのが特徴であり、1970年代の初期の排出ガス規制において、他の一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)を酸化する酸化触媒を取り付ければ解決でき、72年にはルーチェで排出ガス規制を達成している。

 排出ガス規制ではホンダのCVCC(複合渦流調整燃焼方式)が有名だが、ほぼ同時期に、マツダもロータリーエンジンの特徴を活かして乗り越えた時期があったのだ。そして、トヨタも日産も、またホンダもロータリーエンジンを研究していた。

 しかしながら、燃焼室形状がよくなく、圧縮比を上げにくい弱点は、マツダがエンジン技術として推し進めるSKYACTIVの原理原則には適合しえない。

RX-VISIONは東京モーターショー2015に出展されたスポーツカーのコンセプトモデルである。次世代のロータリーエンジンが搭載されるという夢のモデル。

 したがって私は、RX-VISIONの登場をいぶかったのである。そして実現はないと考えた。それでもマツダは、「ロータリーエンジンの開発は続けている」と、その際に語っている。

 それはなぜなのか。ロータリーエンジン搭載車がやはり生まれるのか?

ロータリーエンジンの活用の道

 ロータリーエンジンは、ハウジングの内側をローターが回転する、つまり燃焼室が移動しながら燃料を燃やすので、燃焼温度が高くなりすぎない。そこで、たとえば水素を燃やすのに適している。さらに、燃焼の質にあまりこだわらず、動力を得ることができる。

 したがって、災害時などに燃料の質にこだわらず動力を得ることが可能になる。そこから考えられるのが、発電機用だ。

 マツダは、3代目のデミオを使い、2012年にデミオEVを法人向けにリース販売した。さらにこれを基に、13年にロータリーエンジンを使った発電機を搭載するレンジエクステンダーを試作した。

デミオEV(2012年)

 発電用に使われたロータリーエンジンは、そのためだけに特別に新しくつくられたもので、かつて車両に搭載されたものに比べ排気量が小さく、かつ1つのハウジング/ローターのみを、水平に搭載した。

 これによって、デミオのようなコンパクトハッチバック車の荷室床下に燃料タンクと共に収めることができたのである。荷室床下に搭載されながら、後席に座っても振動や騒音は極めて少なかった。回転体で構成されるロータリーエンジンの特性が活きている。

 デミオEVの一充電走行可能距離が200kmであったのを、発電機を利用することでさらに180km遠くまで走行できるようにした。すなわち、計380km走れる計算になる。ロータリーエンジン活用の道が、一つ開けたのであった。

次期RE搭載スポーツカーは誕生するのか?

 そして、「RX-9(次期ロータリーエンジン搭載スポーツカー)」の行方である。ここから先は、私の想像であり期待の話でもあり、メーカーからの根拠ある情報を裏付ける内容ではない。

 ドイツのポルシェが、今年タイカンを発売する。また、英国のロータスもEVスポーツカーを昨年発表し、富士スピードウェイで公開した。

 スポーツカーもEVの時代が訪れている。しかしスポーツカーに限らず、EVになればテスラのモデルSでも、ポルシェのエンジン車と遜色ない加速性能を備え、スポーツカーの存在意義が改めて問われる時代にもなりつつある。

ポルシェタイカンターボ EV(2019年11月20日に初公開し、2020年導入予定)

 それでもポルシェは、タイカンにテスラ・モデルSとは違った価値を与えるため、同等の加速性能だといっても、それを何度も繰り返せる能力を実現したという。

 しかしそのために、高度なバッテリー制御を行う必要があり、液体冷却方式を使う。それは、速度無制限区間のあるアウトバーンを持つドイツの自動車メーカーのやり方であり、メルセデス・ベンツのEQCも液体冷却だ。

 ところが、EVで使い終えたリチウムイオンバッテリーは、まだ60~70%の容量を残しており、これを再利用しなければ資源を無駄にすることになる。クルマの象徴ともなるスポーツカーが、環境の世紀といわれる21世紀に、いっぽうで資源の無駄に加担してよいのだろうか。

日産リーフの中古バッテリーを再利用し製作したTHE REBORN LIGHT(2019年浪江町国道114号設置)

 日産リーフの意義は、空冷でバッテリー制御を行うことで、使用済みバッテリーの再利用を実現していることだ。

 マツダも、MX-30を皮切りにEV開発を進め、その先にRX-9を見据えるとするならば、空冷バッテリーでスポーツカーとしての魅力を表現する必要がある。

 MX-30があえて一充電走行距離を200kmとしたのも、実用の範囲で資源を無駄にしないためだ。

東京モーターショー2019で世界初公開したマツダMX-30

 この手法をRX-9へ展開すれば、バッテリー搭載量を少なくしたライトウェイトEVスポーツを切り拓ける。そもそも、コスモスポーツもRX-7も、ロードスターとは違ってもライトウェイトスポーツの領域だろう。

 そこにRX-9を当てはめれば、少ないバッテリーでライトウェイトEVスポーツとし、それによって軽さを活かした軽快な操縦性を実現し、なおかつロータリーエンジンのレンジエクステンダーを搭載することで、400km前後の走行距離を実現すれば、実用に足るスポーツカーになるのではないか。

 少ないバッテリーを空冷すれば、EV後のバッテリー再利用が叶う。これこそ、ウェル・トゥ・ホイールで高効率エンジンの環境負荷がEVと変わらないと主張してきたマツダの姿勢とも合致するEV戦略ではないか。

 欧州のメーカーのように、20世紀に邁進したクルマベストのままのEV開発しかできないようでは、21世紀には最適といえないのである。

 健全な社会と快適な未来を展望できるRX-9を考えるなら、EV+ロータリーエンジンによるレンジエクステンダーの組み合わせが、最適ではないだろうか。

 そこを最大に表現する魂動デザインの新たな造形も、ぜひ見てみたいものだ。

【画像ギャラリー】東京モーターショー2015で世界初公開したRX-VISIONをみる

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