新型車に生まれ変わったけれど、これだったら前の方がよかったとか、大して変わり映えしないので、あえて新型を買う必要はなかったかも、と感じる場合もあります。
また新型が出てすぐにデザインを見て「あちゃー!」と思うこともありますし、しばらくしてからジワジワとそう感じるようになることもあります。
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はたして新型がいいのか、それとも旧型がいいのか? 本企画では「旧型の方がよかったと思えるクルマ」を5台集めてみました。
文/清水草一
写真/ベストカー編集部
■先代BMWF30型3シリーズ
2002年1月30日に日本で発表されたF30型旧型3シリーズ。ボディサイズは全長4625×全幅1800×全高1440mm。通常3シリーズはモデル途中で大幅にフェイスリフトが行われるが、F30型はビッグマイナーチェンジはあったものの、フロントマスクを大きく変更されることはなかった
2019年3月に発表された現行G20型3シリーズ。 BMWを象徴するキドニーグリルは従来の2分割型から、ひとつのフレームで縁取られるデザインに変更。車両重量は55kg軽量化されている
個人的に先代F30型3シリーズのオーナーでして、「自分のクルマ(先代)のほうがイイんじゃないか」と感じておるのです。
まぁ、身びいきもあるでしょうし、新型はまだ330iMスポーツしか試乗できてない段階ではありますが……。
まず、新型はサイズが大きくなった。旧型は日本仕様のみドアノブ形状を変え、全幅1800mmに抑えるという大変良心的なクルマだったが、新型はついに全幅1825mmに。これで入れる立体駐車場がかなり限定された。全長も75mm長くなっている。
同クラスのアウディA4やカムリはもっとデカいので、3シリーズを責めるのはお門違いではあるけれど、先代でも広さにまったく不満はないし、大きくされてもメリットはないというのが本音。
あるのはデメリットのみではないか? 旧型がギリギリセーフな大きさだったので、その一線を超えたことにガックリしてしまうのですね。
走りに関しては、いまのところ「ちょっとスポーティになったかな」と感じる程度で、根本的にあまり変わってない。
先代が出たときは、安定感がぐんと増すと同時に足回りが非常にしなやかになったことに感動。その重厚かつ軽快な乗り味にマジでシビレたけど、新型にはそういう感動がなかった。
デザインも変わり映えしないし、逆に細部を見ると先代のほうがカッコよかった部分も多い。
加えて、BMWは中古車が非常に安く買えるという事情もある。新型の3分の1くらいのお値段で、熟成された先代の末期モデルが買えてしまう。それでもあえて新型を買うみなさんは本当にエライ!
■先代4代目フォレスター
2012年11月にデビューした先代4代目フォレスター。MT車やターボモデルは(2.0XTは280ps/35.7kgm)現行モデルにラインアップされていない。ボディサイズは全長4595×全幅1795×全高1715mm
2018年6月に発表された5代目の現行フォレスター。エンジンは2.5LNAと2.0e-BOXER。ボディサイズは全長4625×全幅1815×全高1715mm。先代よりも全長が30mm、全幅は+20mm、ホイールベースは30mm拡大
確かに新型は走りがしなやかになって、いいクルマになったなぁとは思うものの、じゃあ新型が断然いいかと言えば、まったくそれほどでもない。
BMW3シリーズ同様、サイズは微妙に拡大され、微妙に大きすぎる感がなきにしもあらず。デザインもあまり変わり映えしないし、テールランプの無意味に複雑な形状を見ると、「旧型のほうがよかったかも」とも。
なにより残念なのは、ターボとMTの設定がなくなったことだ。旧型だって、実際に売れていたのはノンターボのCVTが大部分ではあったけれど、280psを誇る2Lフラット4ターボエンジンと6速MTの存在は、フォレスターオーナーの精神的な支柱になっていたはず(たぶん)。それがなくなったのはやっぱり非常にサミシイです。旧型のほうがよかったー!
■先代5代目ワゴンR
2012年8月に登場した先代5代目ワゴンR
2017年2月に登場した現行6代目ワゴンRは顔が3種類ラインアップされている。左からスティングレー、ハイブリッドFX、ハイブリッドFZ
かつて初代ワゴンRは、軽自動車に革命をもたらした! 2代目ワゴンRも機能美に満ちていた! その後の3、4、5代目は惰性で流れてきた感じもありますが、それでもワゴンRは軽自動車界の名門。
シンプル&クリーンなトールワゴンスタイルは、軽自動車の定番と言えた(スティングレーを除く)。
が、現行ワゴンRからは、そういうイメージがなくなった。最大の失敗は3つの顔を与えたことで、イメージが拡散して希薄になったことではないだろうか。
しかも、ベースとなるフツーのワゴンRのデザインが実にイマイチ。シンプルさを捨て、Bピラーにエルグランド的なイメージを取り入れつつ、顔は超絶凡庸でまったく印象に残らない。
シンプルと凡庸は違うので念のため。ちょい上級のFZ系も同様で、何をしたかったのか見えない。
で、スティングレー系を見ると、「そーか、キャデラックっぽくしたかったのか!」と理解できるのだが、これは従来のワゴンRの立ち位置とはまったく異なる。
もちろん変わることは否定しませんが、コテコテ系に変わったことで、ワゴンRとはなんぞやという商品性そのものがあいまいになってしまった。
中身は確実に少し良くなっているのだが、これじゃワゴンRを選ぶ意味があまりない。私ならムーヴキャンバスが欲しい~。
■先代2代目キューブ
2002年10月に登場した2代目キューブ。左右非対称ボディにワイドフェンダーというこれまでにないデザインで注目を浴びた
2008年11月にデビューした現行3代目キューブ。デザインは2代目からのキープコンセプトで、ブルドックがサングラスをかけた姿をイメージしているという。ボディサイズは全長が160mm、全幅が25mm、全高が10mm、ホイールベースが100mm拡大
現行キューブが出てもう11年。いまさらだけど、キューブは旧型(2代目)のほうがよかったなぁ……。
現行キューブが出たときは、それほど思わなかったのですよ。2代目キューブは、シンプルな立方体デザインで大成功。
変えるのが難しいデザインだったこともあって、3代目で多少お尻が出っ張ったり、全体がゴムっぽい輪郭になったりするのは、新しさを出すためには仕方ないかなと思いました。
今度は国内専用から脱却して輸出も開始する、世界に打って出るのだ! そのためには、コテコテに和風っぽく天井が波打っていたりするのもアリだろうと思ったものです。
でも、海外での販売不振の報に接し、その後あんまり改良してもらえない放置プレイ状態が続くにつれ、旧型への恋慕の念が強まっていきました。
やっぱり2代目キューブは傑作だった、あれこそが史上唯一成功した和風の自動車デザインだった! それに比べると3代目は駄作! と思うようになりました。申し訳ありません。
■先代4代目レクサスLS
2006年9月に発売した先代4代目レクサスLS(写真はLS600h)。ボディサイズは全長5030(ロングボディは5190mm)×全幅1875×全高1465mm。これまでの伝統を継承するオーソドックスなセダンのスタイルだった
6ライトの4ドアクーペスタイルのデザインを採用した現行レクサスLS。オーソドックスなセダンがまずあって、その後に4ドアクーペをラインアップするのはわかるが、レクサスLSは最初から4ドアクーペのみ。ボディサイズは全長5235×全幅1900×全高1450mm
セダンをスポーティ化するのが世界の流れではある。でも、新型LSは、それで失ったものが多すぎる。
まずスタイル。クーペ風にしたかったのはわかるが、デザインの完成度が低い。特にサイドウィンドウ後端の処理やリアピラーの形状がこなれていない。結果、高級セダンが持つべき気品が不足している。
最大のポイントは乗り心地だ。タイヤが全車ランフラットになったこともあって、最高級セダンとしては明らかに硬すぎる。
最もスポーティなモデル(Fスポーツ)なんか、後席には長時間乗っていられないくらい、路面からの突き上げがダイレクトに来る。レクサスLSを買って、後席の乗り心地が悪すぎて閉口するなんて、あっちゃいけないっぺ!
旧型も、ハイブリッドのLS600h系は乗り心地がダメだったけど、ガソリンエンジンのLS460系は、セルシオからLSへと続く伝統を正しく継承し、トヨタの最高級セダンらしい癒し系のラクチン感に満ちておりました。
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