ルノーのクーペタイプのSUV「アルカナ」に追加された「E-TECH エンジニアード」を、小川フミオがテストドライブ。意外なヒットモデルの新グレードの完成度はいかに?
ウォームチタニウム採用で印象が変わる
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日本におけるルノー車のラインナップで、もっとも“売れ線”というのがクロスオーバータイプのファストバック「アルカナ」だ。
2023年5月に新しく設定された「アルカナE-TECHエンジニアード」は、2022年5月に日本市場に導入された「R.S.ラインE-TECHハイブリッド」に代わるモデルだ。
どちらもルノーが“フルハイブリッド”と呼ぶタイプで、1.6リッターのガソリンエンジンに電気モーターを組み合わせたシステムを搭載する。
パワーは同一だけれど、かつてのR.S.ラインE-TECHハイブリッドとは、内外装のデザインがちょっと違う。
従来、ボディ各所のアクセントカラーはシルバーだったが、今回は「ウォームチタニウム」と名づけられたくすんだゴールド系に変更された。
グリルはブラックアウトされ、ルノーのいわゆるダイヤモンド型エンブレムも目立たなくなった。実車を見ると、それがけっこうシークというのか、日本語で表現すると、洒落ているという言葉がぴったりである。
全体のシルエットは、車高がやや高め(4570mmの全長に対して全高は1580mm)で、リヤエンドが切り詰められた感がある。
メルセデス・ベンツの「GLCクーペ」や「GLEクーペ」に(価格帯は大きくちがうけれど)近いプロファイルだ。
ホイール径は18インチに抑えられているけれど、見た目的にはタイヤの存在感が大きい。上手なデザインであると思う。
バランスの良い走り乗り味は、快適性とスポーツ性をバランスさせたものだ。
ハイブリッドシステムは、基本的にモーターを使う設定。まめに充電がおこなわれ、モーターによる走行が優先される。エンジン走行は、駆動用バッテリーを使い切ってしまったときに限られる。
「高速道路を長距離走るひとならいざしらず、ふだん使いのレベルならハイブリッドシステムの恩恵がちゃんと受けられる」と、ルノージャポンの担当者は述べる。
ドライブトレインは、モーター側に2段、エンジン側に4段の変速機をそなえている。それによって、パワーを制御。広い速度域にわたってスムーズな加減速を実現するというもの。
燃費はリッターあたり22.8km。同時に展開されている「R.S. LINEマイルドハイブリッド」の17.0kmをだいぶしのいでいる。
日本におけるルノーのラインナップでは、「ルーテシア」と「キャプチャー」と、そしてアルカナそれぞれに、E-TECH搭載のモデルを設定する。
同時に発売されたルーテシアE-TECHエンジニアードと乗り較べると、アルカナのほうがステアリングホイールの操舵力がやや重めだ。
車型からすると逆のような気もするが、重さは適度で、ステアリングホイールにしっかり感が出て、なかなかよいと私は思った。
ちなみに、試乗車はオプションの「COXボディダンパー」を装着していた。車体前後の橫方向に取り付ける専用ダンパーで、車体の変型を防ぐ効果を発揮する。
それにより、ステアリングホイールを切ったときの車体の動きがよりダイレクトになったように感じるとともに、段差を乗り越えときに不快なショックを感じにくくなった。
価値ある469万円タイヤの銘柄が、ルーテシアと異なっているせいだろうか、乗ったときの雰囲気がすこしちがう。ルーテシアはコンチネンタルの「エコ・コンタクト6」で、アルカナはクムホの「エクスタ」。
アルカナのほうが走行中のノイズはやや大きく聞こえた。けれど、ステアリングホイールへのフィードバックは、ルーテシアよりしっとりと感じられる。先述のパフォーマンスダンパーがひと役買っているのかもしれない。
後席スペースは175cmのおとなだと、すっぽりはまるかんじだ。家族のメンバーのなかに“リムジンなみの広さが欲しい”と、ぜいたくを言うひとがいなければ、充分こと足りるパッケージだと思う。
アルカナE-TECHエンジニアードの価格は、469万円。この価格帯だと、ドイツや日本の競合が多いマーケットに入らざるをえない。
いや、“入らざるをえない”とは失礼か。すみません。実際、「アルカナにはメルセデス・ベンツやBMWからの乗り換えもけっこういらっしゃる」は、ルノージャポンの広報担当者の言だ。それはわかる気がする。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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