選ぶなら後期型の1.8 TSIエンジン
フォード・フィエスタ STのライバルとして、長年しのぎを削ってきたのがフォルクスワーゲン・ポロ GTI。純粋に走りの楽しさで比較すれば、フィエスタ STへ軍配は上がるだろう。しかし、より成熟した仕上がりといえるのは、代々ポロ GTIだった。
【画像】選ぶなら後期の1.8 TSI! フォルクスワーゲン・ポロ GTI(Mk5) ゴルフとUp!のGTIも 全114枚
5代目、6R型のポロは2009年に登場。例に漏れずGTIも追加されたが、エンジンとトランスミッションは、当初は望ましいユニットとはいいにくかった。
初期の1.4Lターボ+スーパーチャージャー・ユニットは、2014年のフェイスリフトで1.8Lターボへ置換。7速デュアルクラッチ・オートマティック(DSG)のみだったトランスミッションにも、6速マニュアルが登場。ホットハッチ・ファンの期待へ応えた。
もし5代目ポロ GTIをお探しなら、この後期型の1.8 TSIエンジンを選びたいところ。日本では、2015年から切り替わっている。英国仕様の最高出力は191ps、最大トルクは32.5kg-mで、ホットハッチとして不足ないパワーを誇った。
初期型の1.4 TSIエンジンも、179ps/6200rpmと最高出力は充分高いといえた。だが、最大トルクは25.3kg-m/2000-4500rpmで、少し物足りないことも否めなかった。欧州のファンにとっては、MTが選べないことも残念な采配といえた。
ゴルフの弟分らしい凛々しいスタイリング
エンジンオイルの消費量の多さも、1.4 TSIの悩みのタネだったが、2013年の改良でフォルクスワーゲンは対応している。とはいえ、5代目ポロ GTIの真打ちといえるのは、コードネームEA888型を名乗る、1.8 TSIエンジンと6速MTの組み合わせだろう。
ただし、1.8 TSIでも7速DSGの場合は、英国仕様では最大トルクが7.1kg-mほど低く設定されている。0-100km/h加速は6.7秒で、どちらも同等と主張されたものの、実際の走りではトルクの差を実感する。MTの方が、運転は断然楽しい。
またフェイスリフト後は、アンチロールバーを強化。車高も僅かに落とされ、よりシャープな旋回性を獲得している。フィーリングは、ゴルフ GTIへ近づいたといえた。
それでも、フォルクスワーゲン・ゴルフの弟分らしい凛々しいスタイリングと、低めに構えた車高は最初から魅力的。爽快なコーナリングを叶える、電子制御のリミテッドスリップ・デフも標準装備だった。
装備は充実しており、17インチのアルミホイールにリアスポイラー、2本出しマフラー、スポーツシートなどが標準。英国仕様では、ブルートゥースに対応したデジタルラジオも付いていた。
当時のAUTOCARは、英国では250ポンドのオプションだった、スポーツ・パッケージを推している。これには可変式ダンパーが備わり、更に楽しい走りを引き出せたためだ。この仕様こそ、5代目ポロ GTIのベストといえるだろう。
新車時代のAUTOCARの評価は
小改良で6速MTが登場し、ドライバーとクルマとの間に、これまで以上の一体感が生まれた。排気量が増え引き締まった反応のエンジンは、運転体験にもプラス。安定志向にあるシャシーバランスを崩すには、さらなるパワーが必要といえたからだ。
これまでは、限界領域を超えさせない傾向が強かった。不足ないパワートレインの獲得で、驚くほど高いグリップ力を活用した、没入感ある操縦性を引き出せるようになっている。(2015年3月20日)
オーナーの意見を聞いてみる
サンディ・マクレディ氏
「2016年式のポロ GTI 1.8を、3年ほど所有しています。1オーナーの中古車で、現在の走行距離は10万8000kmほど。ゴルフ GTIより安くて小さくても、日常的な環境での楽しさは、まったく劣らないと思いますよ」
「信頼性は高いです。フロント・サスペンションのロアアーム・ブッシュは、ヘタりやすいので交換しました。住んでいるスコットランドの路面が、荒れているのも理由ですね。道が空いている土地なので、スピードが乗りがちなのも理由ですが」
購入時に気をつけたいポイント
エンジン
初期の1.4Lツインチャージャー・エンジンは、エンジンオイルの消費が多い。冷間時はミスファイアも起きがち。タイミングチェーン・テンショナーは、10万km足らずで破損する場合がある。
3000rpm前後で、スーパーチャージャーからターボチャージャーへ過給器がバトンタッチするが、その時の様子を確かめる。不自然な振動や音が出る場合は、過給器を切り替えるクラッチの不調を疑う。
1.8Lエンジンは、基本的に信頼性が高い。それでも、エンジンオイルの管理状態とターボチャージャーの調子は確かめたい。
トランスミッション
1.4Lツインチャージャーに組まれたDSGは、信頼性が低いという報告がある。多くの不調は、メカトロニクス・ユニットか本体のソレノイドバルブが原因のようだ。1.8Lエンジンへ組まれるDSGは解決済み。
6速MTは堅牢だが、ホットハッチだから手荒に乗られてきた可能性はある。試乗で調子を確かめたい。
ステアリングとサスペンション
1.4 TSIのステアリングラックは油圧式。1.8 TSIでは電動機械式。どちらも信頼性は高いといえる。
サスペンションは、1.8 TSIの方がフロントが重く、ブッシュ類の摩耗が早め。スポーツパッケージ装備車では、ボタンでダンパーのレートが変化するか試乗で確かめたい。
タイヤとホイール
偏摩耗のないプレミアム銘柄タイヤを履いている例は、それだけ予算をケチらず所有されてきた証拠。扁平率の低いタイヤは、アルミホイールにダメージを与えがち。ひび割れや変形がないか確かめたい。
ボディ
ボディパネルの隙間が均一か、塗装色が違っていないかなど、修復の痕跡がないか確かめる。ホワイトの塗装は傷を目立たなくさせる。レッドの塗装は色褪せに注意。
インテリア
実用的な小型ハッチバックだから、リアシートの状態も含めて、内装の傷み具合を観察する。一部のモデルには、シートヒーターが備わる。
知っておくべきこと
5代目ポロは、当時のユーロNCAPで最高評価の5つ星を獲得している。現在と基準が大きく異なるとはいえ、安全性は低くないといっていい。エアバッグは4か所に実装され、すべてのシートベルトは3点式。ISOFIXのチャイルドシート・マウントも備わる。
ABSとトラクション&スタビリティ・コントロールも、もちろん装備する。オプションで、アダプティブ・クルーズコントロールも実装できた。
英国ではいくら払うべき?
4500ポンド(約92万円)~6499ポンド(約132万円)
初期型の、ポロ GTI 1.4 TSIが英国では売られている価格帯。正直なところ、オススメはしない。
6500ポンド(約133万円)~8999ポンド(約183万円)
1.8 TSIを選べるようになる。トランスミッションはDSGで、走行距離は11万km前後。
9000ポンド(約184万円)~1万1999ポンド(約244万円)
フェイスリフト後で走行距離の短い例が、英国では売られている価格帯。
1万2000ポンド(約245万円)以上
後期型で状態の良い5代目ポロ GTIは、この価格帯から。
英国で掘り出し物を発見
フォルクスワーゲン・ポロ GTI 1.8 TSI 登録:2016年 走行距離:11万7400km 価格:9995ポンド(約204万円)
フォルクスワーゲン正規ディーラーによる、整備記録が揃った1台。スポーティな3ドアより、実用性に優れる5ドアの方が、中古車での人気は高い。
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