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シボレー ボルトは謎めいた先進的電動化モデルだった【10年ひと昔の新車】

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シボレー ボルトは謎めいた先進的電動化モデルだった【10年ひと昔の新車】

2010年、燃費100km/Lを謳って話題となったシボレー ボルト(VOLT)が北米で販売が開始された。コンセプトカーとして登場した当初、EVなのかプラグインハイブリッドなのかと物議を醸したが、Motor Magazine誌はその真相を探るべく、正式発表直前に中国・杭州で行われたプロタイプカー試乗会に参加している。今回はその時の模様を振り返ってみよう。シボレー ボルトは残念ながら日本に正式導入されていない。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年1月号より)

エンジンの存在は、発動機としてではなく、発電機のため
あくまでEVだと言い張ったり、燃費100km/Lなどと刺激的なことを言うがゆえに物議を醸したシボレーボルト。だがGMもメディアサイドも、素直に“レンジエクステンダー式シリーズハイブリッド”と認識していれば、それほど大騒ぎすることはなかったと今さらに思う。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

もっとも、そこから端を発してヒートアップした“プラグインハイブリッドでは?”という論争、要するに遊星ギアと二個のモーターを積み、しかもフロントにエンジンが載っかるという構図ゆえ、プリウスのようにエンジンの駆動力が物理的に直接アクスルに伝わっているのではないか、という疑義に関して言えば、構造を聞く限り否定していい。

プリウスとは各ギアの経路構成が異なる。バッテリー残量が十分ある間は、どんなに力いっぱいアクセルペダルを踏み込んでもエンジンは掛からないし、バッテリー容量があるレベル以下になってレンジエクステンドモードに切り替わっても、エンジンが生み出した回転エネルギーがそのまま駆動装置に伝わるわけではない。

エネルギーモニターを見ていると、あたかもエンジンが車輪を動かしているような図が現れるし、フル加速をするとエンジンのうなり音も若干上がるので、そういう誤解が生まれたのかもしれない。ボルトにおけるエンジンの存在は、発動機としてではなく、発電機のためである。

杭州市の未完巨大リゾート敷地内では、新生GMの未来にも乗ることができた。2人乗りの電動マイクロコミューター「EN-V」には新しいモビリティとしての可能性を感じたし、GMがじっくり開発を続けている燃料電池車のSUV「シボレーエクイノックス」も、大型車両には燃料電池が適していると改めて思うに至る出来映えだった。

とはいえ、再上場を果たしたGMの先進技術的フラッグシップの大役を担うのは、やはりいよいよ市販化なるシボレーボルトだろう。

適度な重厚感を備えて快適な巡航性能を予感
リゾート敷地内で試乗したボルトは、ほぼ市販仕様と言っていいプロトタイプだった。簡単に車両概要に触れておくと、「シボレーボルト」は4人乗り5ドアのフロントドライブ式シリーズハイブリッドモデルである。

エンジン排気量は諸般の事情(それしかなかった)により1.4L。専用プラットフォームを開発し、16kWhのリチウムイオンバッテリー(重量およそ200kg)はT字型で車両床下のセンター部に置かれている。

フル充電から、うまく走れば最長80kmまでリチウムイオンバッテリー+駆動用モーター(111kW)のみで走るという。その先は再充電を行うか、エンジンで発電用モーター(54kW)を回して電力を駆動装置に送り込む。「ガソリンさえあれば最長560km(EV領域含む)走れる」という点が、ボルト最大の魅力であり、GMが量産車初の長距離走行可能なEVだと喧伝する所以である。

ボディは、空力重視のプリウススタイル。個人的にはディテールの処理(たとえばサイドウインドウ下)が凝っていて気に入ったが、シルエット的には没個性な感も否めない。インテリアはほどよく未来的、というかパーソナルデバイス的で使い勝手もよく、気に入った。

走りの方はどうだったか。まずはフル充電に近い状態で走り出す。わかり切ったことだが、ほぼ無音でヒュルヒュルと走り出す様はEVそのもの。いまだにこれを新鮮に感じてしまうのだから、相当に自分の頭はガソリンで“汚れている”。

最大トルクは368Nmもあり、それがドカンと立ち上がる(ように思えるくらい力強い)から加速力は強烈だ。車重データはまだ未公表ながら、およそ200kgというバッテリー重量の存在を感じさせない。

日産リーフなどに比べると、エンジンが積まれているぶんフロントヘビーに感じる。だが、重いバッテリーが低い場所に搭載されていることもあって、適度に重厚感のある走りをみせる。この落ち着いたクルージング能力は、ボルトの大きな魅力だと言えるかもしれない。

スポーツモードを選べば、モーター出力そのものは変わらないものの、トルクの立ち上がり方が明らかに鋭くなって、よりアグレッシブな走行フィールを得ることができた。

バッテリーの残量が一定レベルにまで落ちてくると、自動的にレンジエクステンドモードへ切り替わる。つまりエンジンが掛かる。発電用モーターが生み出す電気エネルギーがボルトを走らせるのだ。とはいえ、エンジンはずっと掛かっているわけではなく、バッテリー容量の下限を見極めながら、小まめに止まる。

このあたりの制御をさらに精密に計算し、モーターとバッテリーの能力を上げ、もっと高効率な小型ガソリンエンジンを積めば、ボルトの未来はさらに明るくなるはずだ。(文:西川 淳)

シボレー ボルト 主要諸元
●全長×全幅×全高:4498×1788×1430mm 
●ホイールベース:2685mm 
●モーター最高出力:111kW(149ps)
●モーター最大トルク:368Nm
●発電用エンジン:直4DOHC
●排気量:1398cc
●最高出力:63kW(84ps)/4800rpm 
●駆動方式:FWD
●最高速:160km/h
●EV走行可能距離:約40~80km
●EV+レンジエクステンダー走行可能距離:約560km 
※EPA準拠

[ アルバム : シボレー ボルト はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

1件
  • aisan
    ボルトは本当に情報が少なくて謎だったけど、だいたい理解できた
    過去の再掲とはいえ、有り難い記事でした
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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