新車試乗レポート [2023.07.27 UP]
【アルピーヌ A110S】1500万円オーバーの限定モデルを箱根で試す!
文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
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アルピーヌA110Rを初めて見たのは今年一月のオートサロンだった。カーボンパーツをまとったスタイリングはかなり尖って見えたのは確かである。それに昨年乗ったA110GTの印象があまりにも良かったので、気になっていた。A110GTの足を固めたのがA110Sだが、そこからどうチューニングしているのかがポイントとなる。そしてそれから半年以上が過ぎてついにそのステアリングを握る機会を得た。
シリーズ最高価格の「R」は何が違うのか
A110R
目の前のA110Rはやはりカーボンパーツで武装されていた。ボンネットやサイドスカート、スワンネックで取り付けられた大型ウイング、リアウィンドウ、そして2ピースのホイールなどだ。そうそうカーボンブレーキもそう。A110Sではアルミやスチール、FRP素材を採用していた部分をカーボンに置き換えている。結果、資料によると取り替えた部分だけで-24.1kgの軽量化に成功している。さらに言うと、細かいパーツをデザインし直すことで、全体で34kg減になっているそうだ。
A110R
インテリアもそう。6点式のハーネスを付けたバケットシートはA110Sとはまったくの別物。最小限のシート構造だけでボディをホールドするよう設計されている。ここだけ見ればまんまレーシングカーだ。普段から耐久レースにでも参戦しているような雰囲気である。シャシーのセッティング話を聞くとさらにそう思う。ZF社のアジャスタブルレーシングダンパーには車高調整がついていて、コーナリングでのスタビリティを上げるため最大20mm車高を下げられる仕組みになっている。まぁ、その分乗り心地は犠牲になるであろうが、そのままの車高であれば乗り心地はワルくないはずだ。
チューニングで走りはどう変わったのか
A110R
では実際に走らせた印象だが、その仕上がりはとんでもない次元にある。6点式ハーネスを身体にくくりつけてアクセルを踏み込むと、「これが市販車?」てなレベルのカッチリした挙動を見せた。プレゼンテーションを聞く限り、全体的にはオーセンティックなチューニングで、前述したカーボンによる軽量化と各部の剛性を上げる措置なのだが、ステアリング操作に対する一体感は想像の域を超えている。コーナーの続くワインディングで運転が楽しくなる要素満載だ。
そしてカーボンブレーキがこれまた予想以上のストッピングパワーを発揮する。軽量ボディが功を奏し、そもそものブレーキパフォーマンス以上出ている感じだ。ここで思い出したのがポルシェ911GT3。止まり際のガツンと身体に伝わるGフォースがそれに近い。ドライバーは「絶対に止まる」安心感を手に入れられる。
こうなると少し物足りなくなるのがエンジン。300psのユニットはA110GTではそう思わなかったが、ここまでシャシーが高いレベルで仕上げられるとモアパワーが欲しくなる。これだけ制動力を高めたのであれば、いっそのこと911GT3の510psとまでとは言わなくともあと100psくらいあってもいい気がする。
A110Rのエンジンについてはブリッピングがおとなしいのも気になった。パドルでシフトダウンした時の反応が薄い。確認のためにその後A110GTに乗ったがこちらはしっかりブリッピング機能が働いていたから不思議だ。その辺はコンピューターのセッティングだと思われるので、どうにかメーカーに対処してもらえるといいのだが、もしかしたら個体差かもしれない。
A110R
試乗は箱根のワインディングをいろいろな速度で試した。あいにくの雨で安全領域を担保しての試乗であったが、どんなスピード域でも楽しく走られるのがこのクルマの美点だろう。ステアリング操作に対する一体感はいつでも十分感じられる。その視点からこいつはとても安全なクルマだと思う。なんの澱みもなく、操作に対する明確な動きを提供してくれるからだ。必要な時に必要な動きだけしてくれる感覚だ。
それにドライバーズシートに座って感じたのだが、意外に視界が広く設計されている。フロントピラーが細いからだろうか、ここは長所だ。それにサイドウィンドウ後部の三角窓のようなエリアが実は効果的だったりもする。合流の時、フッと首を後へ回すとそこに視界が開けているのだ。こんなちょっとしたことが嬉しくなる。
A110GT
まとめ
といったA110Rは今回カタログモデルとして登場した。価格はカーボンを多用するので少しお高めの1550万円~。A110GTが965万円~だから手の入れ具合をご理解していただけるだろう。ある意味別物。
よって、生産台数が決まっているので販売は抽選になるとか。日本での今回の受注台数は14台。購入を希望する方はアルピーヌを愛する強い気持ちで運も味方に付けちゃってください。
自動車ジャーナリストの九島辰也氏
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みんなのコメント
だが稼いでる人間でも、遊び用のセカンドカーに1500万を出せる人はかなり少ないだろう。
投資ならフェラーリなどにするだろうし。