キューブ、ジューク、ティアナなど日産車が年内までに相次いで生産終了!
最近は多くのユーザーに愛用された伝統ある車種が、次々と生産や販売を終了している。トヨタの場合、上級ミニバンのエスティマや、マークII時代と合わせて50年以上の歴史を持つマークXも年内に終了する。三菱はSUV市場の基礎を築いたパジェロの国内販売を終えた。
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そして、日産ではキューブ、ジューク、ティアナの国内販売を終了する。時代に合わなくなった車や不振が続く車を廃止するのは、どのメーカーでもやっていることだが、とりわけ日産に関しては上記3台が同時期に廃止され、この他にも長年モデルチェンジされていない車種があるなど異例の事態となっている。
なぜ、日産は国内向けモデルを相次いで生産中止させているのか? 同じく車種整理を明言しているトヨタとの違いも含めて見ていきたい。
文:渡辺陽一郎
写真:編集部、NISSAN
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キューブとジューク、ティアナの計3車種が相次いで生産終了
キューブの現行モデルは2008年発売。通算3代、初代モデルから数えて20年以上の歴史に、間もなく終止符を打つ
キューブは背の高い居住性の優れたコンパクトカーで、1998年に発売された初代モデルは、このタイプの先駆けになった。
2002年に登場した2代目は、角に丸みを付けた水平基調のボディが注目され、2003~2004年には1か月平均で1万1000台以上を登録している。今のノートを上まわる売れ行きだった。
現行キューブは2008年に発売され、和風をモチーフにした優しい雰囲気の内装が特徴だ。日本のユーザーの趣味性に合った商品だから、緊急自動ブレーキの装着など、改良を加えれば今後も堅調に販売できるだろう。廃止はとても残念だ。
こちらも2019年内での生産終了、在庫限りで販売も終了予定のジューク。欧州で2019年に発売された新型の国内導入はなく、替わって「キックス」が導入される予定
ジュークは全長が4m少々のコンパクトSUVで、海外仕様はすでに新型にフルモデルチェンジした。国内仕様のジュークは廃止するが、その代わりにコンパクトSUVのキックスを2020年に発売する。
新型ジュークのエンジンは直列3気筒1Lターボだが、キックスは直列4気筒1.5Lや1.6Lだから、国内市場に馴染みやすい。1.6Lはターボになり、1.2Lエンジンベースのe-POWERも搭載する見込みだ。
ティアナは、以前のセフィーロの後継となるLサイズセダンで、広い室内とリラックスできる内装が特徴だ。Lサイズセダンには豪華さが求められるが、ティアナは全般的に地味で売れ行きを低迷させた。それでもほかのLサイズセダンとは違う独自の個性を備える。
以上のように前述の3車種は、日産にとって大切な商品だが、販売を終えることになった。
なぜ日本だけ!? 日産車の生産終了が相次ぐ2つの理由
2013年に発売されたティアナ。海外ではアルティマなどの車名で売られ、同車は新型シルフィと同モデルになった。日本でもティアナ/シルフィを統合し、1車種で担う可能性が高い
終了する背景には、2つの理由がある。まずは日産にとって、国内市場の優先順位が下がったことだ。
日産の世界販売台数に占める国内比率は、軽自動車を含めて12%にとどまる(2019年1~10月累計)。今はダイハツを除くと大半の日本メーカーが20%以下だが、日産は特に国内比率が低く、商品開発も軽視される傾向が強い。
この影響により、今では基本設計の古い日産車が増えた。フーガ、マーチ、エルグランド、生産を終えるキューブやジュークは、いずれも2010年までに発売されている。
これに販売台数の少ないスポーツカーのGT-RやフェアレディZも加わるから、大半の車種が発売から9年以上を経過する。
逆に堅調に売れる車種は限られ、デイズ+デイズルークス+ノート+セレナを合計すると、国内で売られる日産車の70%近くに達する。
そのためにノートやセレナは小型/普通車市場でトップ水準の売れ行きなのに、メーカー別の販売順位は、トヨタ、ホンダ、スズキ、ダイハツに次ぐ5位まで下がってしまう。
要は国内の優先順位が下がったことで、新型車の投入や安全装備の改良が滞り、売れ行きがさらに低迷する悪循環に陥った。この流れで、キューブ、ジューク、ティアナも廃止される。
相次ぐ廃止は新規車種投入など国内ラインナップ整理の影響も
東京モーターショーで公開されたアリアコンセプト。ピュアEVのSUVとして量産予定で、市販時にどのようなモデルとなるか? 既存車種との関係にも注目が集まる
3車種を廃止する2つ目の理由は、日産が今後国内で扱う車種を切り替えるためだ。
先ごろ開催された『東京モーターショー2019』には、2車種の電気自動車が出展された。SUVのアリアコンセプトと、軽自動車のIMkだ。いずれも国内の市販を前提に開発されている。このような車種ラインナップの新体制を控え、取り扱い車種の整理を進めているのが今の段階だ。
ただし、日本では総世帯数の40%が集合住宅に住み、基本的には電気自動車を所有しにくい。
今は大半の日産ディーラーに急速充電器が設置され、マンションでも電気自動車を所有できると宣伝しているが、常に急速充電に頼るのは駆動用電池の負荷を考えると心配だ(駆動用電池の耐久性は以前に比べて大幅に向上したが)。
また、近隣の販売店が移転することもあるから、自宅の充電設備も必要で、実際には一戸建てでないと所有しにくい。そうなると将来に向けて電気自動車を充実させることは大切ながら、ガソリンエンジン車やe-POWERを搭載した小型車も求められる。
消滅噂のシーマは存続も新車減で日産の国内シェアは低下
一部報道で生産終了が伝えられたシーマだが、当面は継続することが明らかになっている
さらに今後はSUVのキックスと併せて、キューブのような空間効率の優れたコンパクトカー、廃止されたティーダのような上質な小型車などの品ぞろえも必要だ。
フラッグシップとなるLサイズセダンも大切で、今後も存続するシーマの高級感を一層高めることも求められるだろう。
過去を振り返ると、日産は業績を悪化させて1999年にルノーと業務提携を結んだが、国内販売台数は2007年頃までトヨタに次ぐ2位だった。先に述べた5位まで下がったのは最近の話だ。
そして、国内販売台数の下降と、メーカー別販売ランキング順位の低下は、新型車の減少と合致している。
2010年以降、新型車が減ると、国内販売台数とメーカー別ランキング順位も下がった。自動車産業に限らず、モノ作りは商品力が勝負だから、新型車が減って業績が悪化するのは当然だ。以前のように国内市場に適した商品を充実させれば、活路を見い出すこともできる。
日産との違い鮮明に! 車種統合進めるトヨタは国内で存在感発揮
ヴェルファイアとアルファード。トヨタは多くの姉妹車を「統合」する意向だが、両モデルとも「廃止」するケースは少なく、国内シェアも依然として高いなど日産との違いは鮮明だ
ちなみにトヨタは、2020年5月になると、東京地区に続いてほかの地域も全店が全社を扱う体制へ移行する。
東京以外の地域にはメーカー資本に頼らない独立した販売会社が多く、東京のように1つの会社に統合するのは難しいが、全店が全社を扱うとトヨペット店やネッツトヨタ店といった系列化の意味は薄れる。
そうすることで、ヴォクシー/ノア/エスクァイアのような姉妹車を減らし、トヨタ車のラインナップを抑えることも、全店/全社扱いの目的に含まれる。
トヨタの世界販売台数に占める国内比率は、軽自動車などのOEM車を含めて17%だ(2019年1~10月累計)。日産の12%に比べると高く、トヨタは国内市場を比較的大切にするメーカーだが、今後は合理化を進める。
どこの市場にも当てはまる話だが、日本で生き残れるのは、日本のユーザーに適した商品を提供するメーカーだ。そのために今では、軽自動車が新車販売の40%近くを占める。小型/普通車市場では、トヨタのシェアが半数近い。
キューブやティアナを廃止した後の日産が、日本でどのような新型車を発売して新たな市場を築くのか。
今の日産は業績の悪化、元会長の逮捕、社長の交代など苦境に立たされているが、その行方は日本のカーライフを大きく左右する。
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