究極のロードリーガル・セブン
グレードを問わず、どんなケータハム・セブンでも素晴らしいレーシングカーになるであろう素質を備えることは、想像に難くない。それでも同社は、サーキット専用のレーシング・セブンをちゃんとラインナップしている。
【画像】リアル・モータースポーツ ケータハム・セブン 420カップ 欧州の競合モデルと比較 全148枚
タイトなコクピットにロールケージが張り巡らされ、フロントガラスは備わらない。鮮やかなアルミホイールを、溝のないスリックタイヤが覆う。徹底的に突き詰めた、チャンピオンシップUKレーサーだ。
2021年末に、AUTOCARではその1台ヘ試乗した。エッジの効いた生々しい感触や、ミリ単位で導ける正確な操縦性に、ひどく感心させられた。楽しく、懐の深い能力を備えるケータハムだった。
今回試乗した420カップは、そこまで特化された内容ではない。シングルシーターのチャンピオンシップUKレーサーにインパイアされた、究極のロードリーガル・セブンだと同社は説明している。一般道での快適性が、僅かに追加されているという。
確かにコクピットを覗くと、トランスミッション・トンネルにはアルカンターラが巻かれている。オプションのティレット社製バケットシートには、寒い日に備えてヒーターも内蔵できるらしい。
ドライバーを守ってくれるロールケージはオプションで、スポーツとレースという2種類から選択できる。このクルマには必要だ、と感じる人も多いとは思うが。
パワーウエイトレシオは380ps/t
今回の試乗車には、レース仕様のロールケージが組まれていた。ボディを補強する役目も果たし、リアの荷室部分を覆う、金属製のトノカバーも付いてくる。小さなドアミラーの支柱にもなる。
ただし、このロールケージを組むとフロントガラスも省かれてしまう。スポーツ仕様なら残るというから、じっくり考えた方がいいだろう。420カップに標準装備されるのが、トラックデイ(走行会)仕様のロールバー。コクピット後方で、頭上を守ってくれる。
ほかにもレーシーな要素は満載。2017年の過激な620Rや420Rドニントン・エディションでも採用された、シュロス社製の6点ハーネスが身体を固定してくれる。ガソリンフィラーはテールの中央に移され、フロントノーズも専用品だ。
積極的な内容でありながら、注文があれば台数制限なしに、この420カップをケータハムは生産してくれる。ただし、最近ショールームを工場に改め生産能力を高めたというが、1年近い受注リストがある。納車は2023年以降になるそうだ。
420カップの特長は、見た目だけではない。本当の魅力は駆動系や足まわりにある。サデブ社製の6速シーケンシャルMTのほかに、ド・ディオンアクスル式のリア・サスペンションには、LSDも装備される。
エンジンはチャンピオンシップUKレーサーと同じ、フォード由来のデュラテック・ユニット。2.0L自然吸気4気筒から、最高出力213psを7600rpmで発生する。チューニングとしては、セブン420と基本的には同じだという。
車重は560kg。パワーウエイトレシオは、380ps/tになる。
リクライニングできるシートは快適
サスペンションは、アイバッハ社製のコイルスプリングと、ビルシュタイン社製のダンパーという、定番の組み合わせ。ダンパーは伸縮共通で10段階に調整できるシンプルなユニットながら、この420カップにピッタリの減衰力を与えている。
試乗車が履いていた、エイボン社製のセミスリックタイヤ、ZZRエクストリームはオプション。もしサーキットを一層本気で攻めたいなら、溝のないスリックタイヤも選択可能とのこと。
スリックを履いてダンパーを目一杯引き締めれば、チャンピオンシップUKレーサーに迫るタイトな走りに浸れるはず。湿り気味の公道を飛ばすなら、通常のエイボンZZRを履き、ダンパーをしなやかに調整すれば良い。
コクピットへ座るには、ロールケージに身体を乗り上げて、つま先から降りるのが1番。ティレット社製バケットシートはリクライニングでき、クッションも効いていて適度に座り心地が良い。サーキットでは、背もたれは倒しすぎない方が良いだろう。
ステアリングにはクイックリリース機能が付き、乗降時は取り外せる。多少は乗りやすくなる。
タイトなドライバーズシートに身体を収めると、お尻は路面から10cmくらいしかない。フロントガラスが付かないかわりに、カーボン製の小さなリップが付いている。こちらは450ポンド(約7万円)のオプションとのこと。
この続きは後編にて。
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