アルピーヌは、2024年のWEC世界耐久選手権デビューに先駆け、『アルピーヌA424』のホモロゲーション取得に向けた長く複雑なプロセスの準備を進めているが、アメリカの外でLMDhカーを独占的に使用してレースを行う最初のメーカーとして独特の課題に直面している。
ルノー傘下のフランスのブランドは、来年3月のWEC開幕戦カタール1812kmでのハイパーカークラスデビューを目指している。しかし、そのためには他のLMDhマシンとは異なる状況が待ち受けている。
アルピーヌA424、アキュラと決別したメイヤー・シャンク・レーシングと組んでのIMSA参戦を検討
これはアルピーヌがWECに独占的に参戦することを最初の目標としてLMDh規定のプロトタイプカーを製造した、最初で唯一のメーカーであることに起因する。
アキュラはいまのところIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に専念しているが、同時にデビューしたキャデラックとポルシェはWECとIMSAシリーズの両方に参戦中だ。また、BMWはチームRLLによる既存のアメリカベースのプログラムに、チームWRTによるWECへの取り組みを加える準備を進めている。
ランボルギーニもまた、2024年に新型LMDhマシンをデビューさせる予定で、来季はWECのフルシーズンと北米シリーズのミシュラン・エンデュランス・カップを組み合わせた活動を目標に掲げている。
■IMSAに出ないのにアメリカへ
アルピーヌのチーフLMDhエンジニアであるヤン・パラントンが説明するように、アルピーヌはホモロゲーションプロセスの一環として、WECの基準を満たすためスイスのザウバーの施設にマシンを送り込み、さらにノースカロライナにあるウインドシア社の風洞にもマシンを送る必要がある。
IMSAのジョン・ドゥーナン代表が以前示したように、北米のスポーツカーシリーズに参戦する意思の有無にかかわらず、新たに造られるLMDhマシンはホモロゲーション取得のためにウインドシア社を通過する必要があるためだ。
「IMSAとACOフランス西部自動車クラブのホモロゲーションなので、我々は(アメリカにも)行かなければならない」とパラントンはSportscar365に語った。
「新しいLMDhのために46週目にウインドシアでIMSAホモロゲーションを受け、50週目にヨーロッパに戻りザウバーでACO/FIA国際自動車連盟のホモロゲーションを受ける。それはとても長いプロセスだ」
同氏は、アルピーヌがホモロゲーションプロセスの両側で別々のシャシーを割り当てず、ノースカロライナからスイスまで1台のA424を輸送することを明かした。
「(風洞にかけられるのは)同じクルマだ。第46週の終わり(11月中旬)にウインドシアでの作業を終えて、同じクルマでヨーロッパに戻るんだ」とパラントン。
「ウインドシアとザウバーの風洞の相関関係を調べ、ザウバーでプレテストを行い、ウインドシアーとザウバーのすべての値と違いをチェックする」
「とても長い道のりだ。そして非常に困難でもある。なぜならパフォーマンスウインドウがかなり厄介だからだ。ル・マンで速くなり、バーレーンで速くなり、インテルラゴスで速くなるためには、正しいウインドウに入らなければならない」
「それをプロジェクトの初期に考えなければならない。そう簡単なことじゃない。確かにIMSAに行ってからWECに行き、ウインドシアとザウバーの間に同じ相関関係を持たせるのは難しい。繰り返すがそう簡単ではないんだ」
■プロセスが複雑でも「驚きはない」
アルピーヌは最近、2023年シーズン限りでアキュラと決別したメイヤー・シャンク・レーシング(MSR)と将来のIMSA GTPクラス参戦の可能性について話し合いを持ったことを認めたものの、現時点でウェザーテック・スポーツカー選手権でレースを行う計画はアナウンスされていない。
同社のモータースポーツ担当副社長のブルーノ・ファミンは、ホモロゲーション・プロセスに関わる課題はアルパインにとって驚きではないとコメントした。
「これはレギュレーションであり、最初からわかっていたことだ」とファミンは述べている。
「LMDhはIMSAのプロセスを通じてホモロゲーションされなければならない。我々には2台目のマシンがあるが、すでにウインドシアでテストセッションを行っている」
「我々はそれを計画して、うまくいくことを願っている。しかしサプライズはない。計画どおりだ」
アキュラ、キャデラック、ポルシェ、BMWは、アルピーヌの新型LMDhマシンがカタールでWECのグリッドにつく前に、すでに1回目のフルシーズンを戦い終えている。同時期にデビューするランボルギーニを除き、アルピーヌは“新参者”として新時代のスポーツカー・トップカテゴリーに加わることとなる。
これについてファミンは、アルピーヌ陣営の1年のおくれはメリットにもデメリットにもならないと見ている。
「シーズンのスタート地点で考えれば、(競合他社との比較で)我々の開発は非常に遅れているため、ハンディキャップがある。例えば共通ハイブリッドシステムに関しては、多くの問題を解決しているライバルもいるからね」
「確かに、私たちはそこから学ぶことができる。多かれ少なかれバランスは取れていると思う」
「そのタイムラインにいることが特別有利だとは思わないし、不利だとも思わないんだ」
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