いよいよ開幕を迎える2021年のスーパーGT。GT500連覇を目指すホンダの開発担当者が、走行開始を翌日に控え、今季に向けた意気込みを語った。
昨年はコロナ禍により、富士、鈴鹿、もてぎの3サーキットのみでの開催となったスーパーGT。そんな中ホンダNSX-GTは、全8戦中5回のポールポジション、4勝を挙げ、100号車RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)が、最終戦最終コーナーで直接のライバルだった37号車KeePer TOM'S GR Supraを抜いてチャンピオンをもぎ取った。そしてホンダにとって2021年シーズンは、連覇を目指す1年ということになる。
■スーパーGT開幕戦のエントリーリスト発表。1号車STANLEYは武藤、37号車TOM'Sは阪口が代役
「昨年は最終戦の最後に、NSX-GTが劇的な形でチャンピオンを獲ることができました。ディフェンディングチャンピオンとして、ゼッケン1をつけて開幕戦を迎えるのは、ある意味気持ち良いモノです」
そう語るのは、ホンダのスーパーGTプロジェクトを率いる佐伯昌浩ラージ・プロジェクトリーダー(LPL)である。ただ佐伯LPLは、成績の面では圧倒的だったものの、パフォーマンス面でライバルに差をつけていたわけではないと昨シーズンを振り返る。
「振り返ると、最も強く速いマシンは、GRスープラだったと思います」
そう佐伯LPLは語る。
「FR(フロントエンジン・リヤドライブ)シャシーに変えて1年目、我々はライバルの2メーカーに対して、チャレンジャーのような立ち位置でシーズンを始めました。5回のポールポジション、そして4勝と圧倒的な成績に見えますが、サクセスバラスト(昨年までのウエイトハンデ)を考慮した解析をすれば、ほぼ全ラウンドで我々は負けていたと思います」
「今年は、昨年レースができなかった岡山、オートポリス、SUGOでのレース開催も予定されています。それらのコースにも対応できるよう、シーズンオフには様々なセットアップを試し、引き出しを増やしてきました」
「スーパーGTは、フリー走行が土曜日の1回しかないので、大きなトライができず、実績のあるセットアップで挑まなければなりませんでした。そのためこの冬に、さらに可能性を広げられるようなセットアップを試し、このFRシャシーをどう使うのかという確認に費やしました」
ただ今シーズンも楽な戦いにはならないだろうと、ホンダ陣営は兜の緒を締めている。車体開発責任者の往西友宏は、次のように語る。
「NSX-GTとしては、できれば岡山を得意なサーキットにして、多くのポイントを獲りたいと思っています。ただ結果を見れば、ライバルのマシン……特にトヨタ勢との差がほとんどありません。かなりの接戦になりそうです」
往西氏はさらに続ける。
「富士では、昨年はウエイトのおかげもあって、勝つこともできました。しかし今年は、合同テストで走ったところを見れば、トヨタさんのマシンがさらに速くなっています。1周の速さでも最高速でも、そしてロングランでも、ちょっと上回られています。そこは、昨年よりも厳しい戦いになっているかもしれません」
では今季のNSX-GTは、昨年からどんな進歩を遂げているのか? 往西氏は次のように語る。
「車体の部分については、元々共通部品が多いということに加えて、開発凍結もありましたので、ハードウエアとして大きく進歩させることはできませんでした。そのため、昨年のマシンをしっかりと使いこなせるように、テスト中にセットアップの合わせ込みを、チームと共に進めてきました」
また佐伯LPLも次のように語る。
「エンジンについては、車両セットアップの幅を広げるために、フロント部分の軽量化を目指しました。開発凍結により、エンジンに大きな変更をすることはできませんけど、吸排気系だったり、配管の全ても見直しました。またオイルや冷却水の量も減らすなどして、改良を加えて来ています。さらに、昨年表面化はしなかったトラブルもあったので、信頼性の再構築、そして使い方の面でテストを進めてきました。比較的順調に進んできたかなと思います」
「このエンジンは、大きなステップアップではありません。しかし、パワーの面では少し上がっています。パワーが上がる=燃焼効率が上がるということになりますので、その燃焼効率も少し上がっています」
ただ軽量化のために行なわれた配管等の変更により、我慢を強いられる部分もあったという。
「配管や吸排気系の変更は、燃焼効率を上げるのとは逆の効果になっているかもしれません。ある程度我慢しつつも、マシンのフロントを軽くするために、頑張っているところもあります」
ただ、さらに燃焼効率を上げるための解決策が見つかっており、シーズン中に使用が許されている2基目のエンジンにはそれが投入されるかもしれないと、佐伯LPLは語る。
「いくつか、さらに(燃焼効率を)上げられるような手法が見つかっています。信頼性とのバランスを取りながら、随時適応していっています。ただ、このタイミングではまだ大きな”球”は入っていないと言えると思います」
「でも例えば2基目のエンジンでならば、信頼性の確認が取れれば、投入することも可能なパーツだと思います」
佐伯LPLは、今季の目標は”連覇”だと語り、会見を締め括った。
「目標は連覇ですね、やっぱり」
「私の知っている限り、ホンダが2年連続でチャンピオンを獲ったという記憶はありません。ですので、連覇を目指して頑張りたいと思います」
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