アクアが10年ぶりにフルモデルチェンジ
2021年7月19日、5ナンバーサイズのコンパクトハイブリッドカー「アクア」がフルモデルチェンジを実施した。価格は198万~259万8000円。
アクアは2009年に3代目プリウスが誕生後、継続販売していた2代目の「プリウスEX」の入れ替わりとして2011年12月に発売。2009年に先行してデビューしていた5ナンバーサイズで低価格のハイブリッド車「ホンダ インサイト」の強力な対抗馬として、発売するや大人気に。インサイトとともにハイブリッドカーを広く普及させた立役者でもある。初代は世界で約187万台を販売し、同クラスのガソリン車との比較で、削減したCO2排出量は約1240万トンだったという。
GR86/BRZ 新型試乗…「構造」を変えてまで生み出したかった「走りの違い」とは
今回約10年ぶりに一新して登場した2代目は、初代の役割を引き継ぎながらも、環境性能の高さから「カーボンニュートラル」に貢献するモデルと位置づけている。ただし、多種多様なモデルにハイブリッド車が設定されており、もはや「ハイブリッドカーは当たり前」になっているのも事実。そこで、走りの要素も加えたヤリスハイブリッドと、質感や使い勝手などを重視してダウンサイザー層にもアピールするアクアの“2枚看板”で、コンパクトハイブリッド車の需要に応えていくという構えをとった。
外観は正常進化型のスタイリングを採用。人に寄り添うエモーショナルさと、先進性を併せ持ったデザインで、シンプルかつクラスレスな価値観をさらに進化させたという。5ナンバーサイズの制約のなかで、前後に伸びやかなモノフォルムシルエットのキャビンと、左右に張り出したリヤフェンダーの組み合わせで、アクアらしいスマートで動感のあるエクステリアとした。
インテリアはシンプルでクリーン、かつ上質な空間を表現。操作性・視認性に優れた10.5インチ大型ディスプレイオーディオをトヨタコンパクトカーとして初採用とした(最上級の「Z」グレードに標準装備、「G」にオプション)。
スリーサイズは全長4050mm×全幅1695mm×全高1485mm(4WDは1505mm)。旧型と比較するとボディサイズは全長と全幅をキープ、全高が30mm上がったが、これはヤリスと同じTNGA「GA-B」プラットフォームの採用によるもので、室内高は1175mm→1190mmと全高に対する拡大幅は若干小さい。ホイールベースは2600mmで旧型に対して50mm延長し、その分を室内空間の拡大に充てている。リヤバンパーも前後長を若干短くして、こちらは荷室の拡大に充てているという。
ちなみに、取りまわしであるが、タイヤが15インチサイズだった旧型(G、S、Lグレード)は最小回転半径が4.8m、新型は15インチサイズながら5.2mに拡大。廉価グレードの「B」のFF車は14インチタイヤを履き4.9m、上級の「Z」と「G」にオプションの16インチタイヤ車は5.3mとなる。
新開発のバイポーラ型ニッケル水素電池を搭載
メカニズムの目玉は、駆動用バッテリーに「バイポーラ型ニッケル水素電池」を採用した点。バイポーラとは「Bipolar=双極」という意味で、集電体の片面に正極、もう一方の面に負極を塗った「バイポーラ電極」を複数枚積層させてパックにした電池のこと。従来型のニッケル水素電池と比べると、集電体やセルとセルをつなぐ端子などの部品点数が少なくなるので、コンパクトにすることができ、従来型電池と同等のスペースにより多くのセルを搭載することが可能になった(120セル→168セル)。
また、通電面積が広く、シンプルな構造になるので、電気抵抗が低減され、大きな電流を一気に流すことができるという。この結果、従来型と比べて約2倍の高出力を実現。モーターの使用領域を拡大することができ、街中の多くのシーンでEV走行(エンジンがかからずモーターのみでの走行)が可能となった。さらに、レスポンスがよく、パワフルでスムーズな加速も新型電池によるメリットであるという。この電池はトヨタと長年電動フォークリフト用の電池開発のノウハウを持つ豊田自動織機が共同開発し、電池の生産は豊田自動織機で行う。
なお、廉価グレード「B」にはリチウムイオン電池を採用。ビジネス向けのグレードということで、バイポーラ型ニッケル水素電池に比べて価格が安いリチウムイオン電池を組み合わせたのである。
パワートレーンは1.5L直4+モーターに代わり、ヤリスハイブリッドと共通の1.5L直列3気筒「M15A-FXE」エンジン(91馬力/12.2kgm)+モーター(80馬力/14.4kgm)を採用。ちなみに、アクア初の4WD車(リヤにモーターを追加したE-Four)を全グレードに設定した点もポイントである。燃費については、旧型比で約20%向上しており、「B」グレードでは35.8km/L。ヤリスハイブリッドXの36.0km/Lに匹敵する低燃費を実現。旧型に対する燃費改善の要因はパワートレーン側で約7割、車両側の走行抵抗低減で約3割となっている。
走りの面に関しては、日産ノートが採用するワンペダル感覚の走行が楽しめる、その名も「快感ペダル」をトヨタ初採用(「B」グレードを除く)。走行モードから「POWER+モード」を選択すると、アクセルオフで回生による減速度を増大させ、滑らかに減速することができる。完全に止まるところまでは制御せず、またノートよりも若干減速を緩やかにしているという。
先進安全装備では、最新のトヨタセーフティセンスを標準装備。ミリ波レーター+単眼カメラを採用したシステムはヤリス同様のものでコンチネンタル製。交差点での右左折時の事故に対応範囲を拡大したプリクラッシュセーフティ、全車速追従型レーダークルーズコントロール、同一車線内の中央を走行するように操舵を支援するレーントレーシングアシスト、ペダル踏み間違い時の急加速を抑制するプラスサポートを採用して、最新機能にアップデートされた点も見逃せない。
さらに、駐車時の全操作を支援する「トヨタチームメイト アドバンストパーク」を全車にオプションで設定。ハンドル、ブレーキ、アクセル操作に加えてシフト操作も行う、燃料電池自動車のMIRAIと同じタイプを採用。高級車のアイテムを量産効果を狙ってコンパクトカーにも設定したという。
災害時などの万が一の際に役立つ給電機能を全車に搭載した点も特徴。アクセサリーコンセント(AC100V・1500W)と非常時給電モードを採用し、非常時には車両駐車時に「非常時給電モード」にすると、アクセサリーコンセント(後席足元のコンソールボックス下部)が非常用電源として活用できる。
価格はグレード体系や装備内容に差があり、新旧で一概には比較できないが、スターティングプライスは約16万円アップし、198万円からとなっている。また、最上級は240万円(FF車)となり、4WD車は各グレード19万8000円高で設定している。
■グレード体系
Z 240万円
G 223万円
X 209万円
B 198万円
※FFの価格。4WDは全グレードに19万8000円高で設定
■主要諸元 〈 〉内は4WDの数値
全長×全幅×全高:4050mm×1695mm×1485〈1505〉mm
ホイールベース:2600mm
トレッド:Z、G、Xグレード…前1480mm/後1475〈1485〉mm Bグレード…前1490〈1480〉mm/後1485mm
車両重量:Z…1130〈1230〉kg G…1130〈1220〉kg X…1120〈1220〉kg B…1080〈1190〉kg
WLTCモード燃費:Z、G…33.6〈30.0〉km/L X…34.6〈30.0〉km/L B…35.8〈30.1〉km/L
最低地上高:140〈155〉mm
室内長×室内幅×室内高:1830mm×1425mm×1190mm
乗車定員:5人
エンジン型式・種類:M15A-FXE・直3DOHC
総排気量:1490cc
ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm
エンジン最高出力:67kW(91ps)/5500rpm
エンジン最大トルク:120Nm(12.2kgm)/3800~4800rpm
燃料タンク容量:36L
トランスミッション:電気式無段変速機
モーター型式・種類:1NM・交流同期電動機
モーター最高出力:59kW(80ps)
モーター最大トルク:141Nm(14.4kgm)
〈リヤモーター型式・種類:1NM・交流同期電動機〉
〈モーター最高出力:Z、G、X…4.7kW(6.4ps)B…3.9kW(5.3ps)〉
〈モーター最大トルク:52Nm(5.3kgm)〉
駆動用バッテリー種類・容量:Z、G、X…ニッケル水素電池・5.0Ah B…リチウムイオン電池・4.3Ah
〈文=ドライバーWeb編集部〉
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みんなのコメント
インサイト殆ど売れなかったのでは?
立役者はプリウスとアクア。